出るのが早すぎた!? ASUS「PadFone」は折りたたみスマホの先祖だった

文●山根康宏 編集●ASCII編集部

2019年07月29日 10時00分

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懐かしのPadFone miniを台北で購入

合体型スマホは未来を先取りすぎていた

 ROG Phone IIの発表会で台湾に行った際、台北電脳街「八徳路」にあるITショップの処分セールで、ASUSの「PadFone mini」の新品未開封品を発見して買ってしまいました。発表は2013年末で今から約5年半も前の製品です。スペックはCPUがSnapdragon 400、通信方式も3Gのみと時代を感じさせます。価格は約1万3000円でした。

スマートフォンと、それを装着するタブレットサイズのドッキングステーション

 今やZenFoneシリーズがASUSのスマートフォンの顔となっていますが、ZenFone登場前には合体式Android端末として「スマホ+タブレット」となるPadFone、また「タブレット+キーボード」のTransformerシリーズを展開していました。大手メーカーが市場で存在感を示す中、合体式で風穴を開けようとしたのです。

初代PadFoneはキーボードも装着するとノートPCスタイルにもなった。かなりの変態っぷり

 PadFoneはスマートフォン本体と、それを合体させるタブレットのベースステーションのセットで性能を発揮します。しかし、両者を合わせると価格はそれなりになってしまいますし、いつ使うかわからない大型のタブレット部分を常にかばんに入れて持ち運ぶのも面倒なもの。スマートフォンとタブレットを別々に買うよりは安かったのでしょうが、そこまでして2つのサイズの画面を持ち運ぶ必要性のある人は少なかったと思われます。

 PadFoneは当初、タブレット側が10型クラスで登場しましたが、今回入手したPadFone miniはミニとつけられたように、スマートフォンは4.3型、タブレットは7型となります。これくらいの大きさならば小さいバッグの中に入れておくことも無理ではないでしょう。買ったモデルはピンク色で女性をターゲットにしたものでした。

合体すると7型になるPadFone mini

 4.3型のスマートフォンは当時としては一般的な大きさで、普段使いするには十分。片手でもラクに持てる大きさです。とはいえ、解像度が800×480ドットではちょっと大きいウェブページを表示するのに実力不足。また、動画を見たいときなどは不満が出そうです。そこでタブレットスタイルへの変形の意味が出てくるわけです。

4.3型ディスプレーのPadFone mini本体

 タブレットステーションの背面にPadFoneを装着すると、7型(1280×720ドット)ディスプレーのタブレットとして使えるわけです。この大きさなら電子書籍を読むのも快適ですし、ちょっとしたオフィス作業をこなすこともできるでしょう。公私どちらでも便利に使えるタブレットに変身するわけです。

タブレットスタイルになったPadFone mini

 PadFoneが優れていたのは、両者を合体する際に切り替えスイッチなどは不要でそのまま画面が切り替わること。気軽に抜き差ししてディスプレーサイズを変更できます。また、スマートフォンのバッテリーサイズは1500mAhとやや少ないのですが、タブレット側には2200mAhの大容量バッテリーも搭載されているため、合計3700mAhとなります。これなら1日使い続けることもできるでしょう。

背面にスライドインで合体完了

 こんなに便利な製品ですが、当時のスマートフォンサービスを考えると、今ほど「なんでもスマホでできる」時代ではありませんでした。通信回線も3Gのみ対応では動画を見るにはやや遅く(当時は通信料金も高めでした)、せっかくのハードウェアを生かし切れる状況ではなかったのです。電子書籍を読むならこのころから1万円程度でアマゾンの「Kindle」がありましたから、「iPhone + Kindle」という組み合わせのほうが便利だったかもしれません。

 さらには2014年6月、COMPUTEX TAIPEI 2014で「ZenFone 5」(2014年モデル)が発表されると、ZenFoneブームが世界中に巻き起こります。ZenFoneのヒットを受けASUSのAndroid端末はタブレットも「Zen」の名前を付けたZenPadに変更されました。そのあおりでスマートフォンとタブレットの合いの子となるPadFoneは静かに消えていったのです。日本では4.7型スマートフォン+10.1型タブレットステーションの「PadFone 2」が発売されましたが、8万円近い価格で購入する層は少なかったでしょう。

日本でも大ヒットしたZenFone 5(2014年モデル)

2019年前半に話題をさらった
折りたたみスマホ

 さて、今年2019年前半のスマートフォン業界の大きな話題と言えば折りたたみ型スマートフォン。閉じればスマートフォン、開けばタブレットと1台で2役をこなせる折りたたみスマートフォンは、ウェブサービスやSNS全盛の今の時代に必要不可欠な製品となるかもしれません。筆者もRoyole「FlexPai」を入手、サムスン「Galaxy Fold」は1週間ほど試用、ファーウェイ「HUAWEI Mate X」はMWC19で30分ほどじっくり触る機会がありました。ディスプレーの耐久性などに心配はあるものの、1台2役は使ってみると便利です。

RoyoleのFlexPai。1台で2役をこなす折りたたみスマートフォン

 折りたたみスマートフォンを使ってみてから改めてASUSのPadFoneに触れてみると、そのコンセプトは同じところにあると感じられます。片手操作したいときやちょっとした情報表示の時は小さい画面で十分ですが、動画の視聴やウェブで細かい情報を見るときは大きい画面が有利です。また、電車やバスの中で座席に座れた時は、大きい画面の端末を使いたくなります。

PadFoneのコンセプトは折りたたみスマートフォンに通じる

 FlexPaiとPadFoneを並べてみると、折りたたんだ時とスマートフォン単体、開いた時とタブレットステーションに合体させたとき、それぞれ似たような大きさになります。

折りたたんだFlexPai(左)と、PadFone mini(右)
開いたFlexPai(左)と、タブレット型にしたPadFone mini(右)

 PadFoneのタブレットステーションは背面がスマートフォンを取り付けるために出っ張っていますし、別途かばんの中に入れておかねばならないという使いにくさはあります。しかし「大画面、小画面をシーンによって切り替える」というコンセプトは、初代PadFoneが登場した2012年にすでに実現されていたわけです。

背面の出っ張りが持ちやすさをスポイルしているが、コンセプトは優れている

 PC業界で長期間世界のトップグループを走るASUS。PadFoneのような斬新なアイディアはゲーミングスマートフォン「ROG Phone」でも再現されています。スマートフォン市場にとって実はASUSはなくてはならないメーカーと言っても過言ではないでしょう。

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