出口が見えないファーウェイ問題と米中貿易戦争

文●末岡洋子 編集● ASCII編集部

2019年08月07日 12時00分

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 7月末、米中貿易協議が中国・上海で開かれた。ファーウェイは争点の一つだったが、制裁の姿勢に変化はなかったようだ。ファーウェイの運命はどうなるのか? まだ業績に大きな影響は出ていないが、長期化しそうにも見える。ファーウェイは国外の損失を補おうと中国市場を強化しているようだ。

2019Q2のシェアは微増して15%に

 Counterpointが7月31日に発表した第2四半期(4~6月期)の世界のスマートフォン市場は(https://www.counterpointresearch.com/combined-global-market-share-huawei-oppo-vivo-xiaomi-realme-reaches-highest-ever-level-q2-2019/)、7四半期連続で前年同期からの減少となった。

 上位5ベンダーの順位は変わらず(サムスン、ファーウェイ、アップル、シャオミ、OPPOの順)。だが、アップルとOPPOが前年同期比減(それぞれマイナス11.9%とマイナス2%)となった以外は、各社出荷台数を伸ばしている。

 ファーウェイは5月に米国のエンティティリスト(米商務省が定めるリストの1つで、国家安全保障などを理由に輸出を禁止する)入りしたにも関わらず、シェアは4.6%増加して15.8%に。第2四半期には大きな影響は出なかったようだ。ファーウェイ端末はもともと米国ではほとんど存在感がなかった(米中摩擦の影響を受けていない)ことも関係あるだろう。現在ファーウェイのスマートフォンの49%が中国市場での販売という。

 だが、将来はわからない。ファーウェイはHiSiliconとしてSoC部門を持つが、ARMとの関係はファーウェイには打撃だ。OSのAndroidについては、ファーウェイは独自OSを開発している(7年前から開発を開始していたとも言われている)とされるため、その場合の傷はむしろGoogleに向くかもしれない。ファーウェイのお膝元、中国市場は大きい。ここをファーウェイが独自OSで塗り替えていき、さらには他のベンダーがファーウェイのOSを採用するようなことになれば、Googleには痛いはずだ。

では「HUAWEI Mate 30」は独自OSが採用されるのか?

 ファーウェイの会長であるLiang Hua氏は7月末、ファーウェイ本社で取材に応じて過去の取り組みにより強い成長を遂げているとしながらも、エンティティリスト入りの後では減速していることを認めているという。

 South China Morning Postの記事によると(https://www.scmp.com/tech/gear/article/3020686/huawei-enters-period-reckoning-smartphone-business-android-resumption)、Liang氏はエンティティリストによりAndroidが利用できないことを認めながらも、次期フラッグシップの「HUAWEI Mate 30」のOSがどうなるのかの質問に対しては答えを避けたという。Androidの使用を望んでいるとしながら、米国がAndroidの利用を認めない場合は、自分たち独自のOSとエコシステムを開発する必要があるといった発言をしたようだ。

 HUAWEI Mate 30の発表は9月と予想されているが、これが延期になる可能性もありそうだ。

 ちなみに、Liang氏はこの日、2019年上半期(1~6月期)の財務報告を行った。売上高は23%増の4013億人民元(約6兆円)を記録。背景にスマートフォンの出荷と5G関連のネットワーク機器が好調であることをあげている。純利益率は8.7%と報告している。

ファーウェイにとって最重要な
ネットワーク機器事業では厳しい状況が続く

 スマートフォンはファーウェイにとって売上の35%を占める2番目の事業部だ。最大の事業は、半分以上を占めるネットワーク機器だ。ここでは相変わらず見通しが良くない。

 先に”Five Eyes”こと米、英、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの5ヵ国はロンドンで会合を開いた。大きなテーマは児童ポルノなどオンラインでの児童の性的悪用だったようだが、会合の後に出したレポートでは、「外部からの干渉に戦うためのアプローチを共有するメカニズムを構築する」という点について、5ヵ国は民主的なプロセスなどを外部の干渉やその他の敵対的な国の活動から保護する、共通の戦略があると記すにとどめている。

 この5ヵ国の中で明確にファーウェイを締め出している米国とオーストラリア、その両国に比較的近い立場のニュージーランド、カナダに対し、英国はファーウェイとの関係は親密だ。大きな要因として、人材がある。

 ファーウェイのセキュリティトップのJohn Suffolk氏は英政府でCIOとCISOを兼務していた人物だし、BTやVodafoneなど英国のテレコム企業出身者がファーウェイには少なからずいる。ファーウェイは現地にラボを作って貢献しているほか、セキュリティセンターを開設するなどの取り組みを見せており、先に仏政府が2018年に開始したサイバーセキュリティのイニシアティブ「Paris Call」にも参加した。

 一方で、保守的なボリス・ジョンソン氏が首相になったことでファーウェイに対する態度が一変するようなこともあるのかもしれない。ジョンソン首相はトランプ大統領と就任後電話で会談し、5Gをはじめとしたセキュリティについて話をしたとも伝えられている。

 現在の米中貿易戦争状態が続けば、ファーウェイはさらに国内市場にフォーカスを強めるだろう。一部市場ではすでに人員削減が始まっているとも聞くが、中国では人員削減はない様子だ。


筆者紹介──末岡洋子


フリーランスライター。アットマーク・アイティの記者を経てフリーに。欧州のICT事情に明るく、モバイルのほかオープンソースやデジタル規制動向などもウォッチしている

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