iPhone 11、ASCII徹底大特集!

アップルは「iPhoneは高い」のイメージを変えられるか

文●篠原修司 編集●飯島恵里子/ASCII

2019年09月12日 17時45分

 日本時間9月11日午前2時より開催されたアップルのスペシャルイベントにて、iPhone 11、iPhone 11 Pro、iPhone 11 Pro Max、Apple Watch Series 5、iPad(第7世代)、Apple Arcade、Apple TV+が発表された。

 正方形のカメラモジュールにトリプルレンズのデザインが話題となった発表会だったが、注目すべきはアップルがiPhoneの機種ごとの位置づけを変えようとしたところだろう。

廉価版iPhone XRがiPhoneシリーズの正統路線に

発表されたiPhone 11

 今回発表された新型iPhoneの一番大きな変化は、iPhone XRの後継機種が「iPhone 11」、iPhone XSの後継機種が「iPhone 11 Pro」と名付けられたことだ。

 これまで廉価版、言ってしまえばiPhone XSの下位に位置づけられていた機種がスタンダードなモデルになったのだ。アップルは一番売れていた安い機種を、名前を変えることで「普通のiPhone」にしようとしている。

価格は699ドルからと当初のiPhone XRの価格より50ドル安い

 iPhone 11の価格はこれまで高い高いと言われてきたiPhone XSと比べると、699ドル(日本価格は7万4800円)からと求めやすい。最大ストレージの256GBモデルでも、税込みで10万円を切る価格設定になっている。

 iPhone 11は、発表された新機種のなかで一番売れるだろう。結果、一番売れているのは「一般的な普通のiPhoneです」と言えるようになる。うまい方法だと思う。

4色ラインナップのiPhone 11 Pro

姿の消えた大型ディスプレーのMaxモデル

 アップルによるイメージの転換を裏付けるものが、iPhone 11 Proの存在だ。

 iPhone 11 Proには、その名のとおりプロ仕様と言えるほどの性能が詰め込まれている。一番大きな特徴は冒頭でも取り上げたトリプルレンズだ。

 ただ、そうした性能の進化よりも気になる点が、これまでつねにセットで紹介されてきた大型ディスプレー搭載モデルが前面に出てこなくなったところだ。

iPhone XS/XS Maxは、2モデルが一緒に配置された公式素材の用意があったが、iPhone 11 Pro/iPhone 11 Pro Maxをセットした画像は、今回は用意されていない

 もちろん販売は行われる。新製品として発表もされた。しかし、いままでのようにiPhone XSとiPhone XS Maxの2台を重ねて露出する演出は控えられるようになってしまった。

 公式トップページも、トリプルレンズの魅力を伝えたあとに表示されるのはiPhone 11 Proのみだ。iPhone 11 Pro Maxはその姿を現さない。

 これが、iPhone XR後継機種のiPhone 11が正統派になったと考える理由だ。アップルがユーザーに提案している選択肢はiPhone 11かiPhone 11 Proのどちらかであり、iPhone 11 ProとiPhone 11 Pro Maxではないのだ。

 iPhoneは今回、トリプルレンズを搭載したことでカメラ性能が大幅にアップグレードした。ただ、その性能に10万円以上のお金を出す人間はやはり限られてくる。

 ユーザーにとってスマートフォンを選ぶうえで重要な要素は価格だ。そこで価格が安いから廉価版という選択肢ではなく、価格の安いスタンダードモデルという選択肢をアップルは用意してきた。

 ハイスペックで高価格なiPhone 11 Proを求める人はそれがプロ仕様だからであり、「安いiPhone 11を選ぶことは何も間違っていないですよ」と言っているのだ。

サービス事業を成長させられるかが鍵

 このiPhone 11推しは、アップルが端末の販売で儲けを出していたこれまでの状況から抜け出し、今後はサービス事業で売上を伸ばしていこうと考えているからだろう。

Apple Arcade

 まあこのあたりはアップルの業績発表や売上高の推移を見ればわかることだが、スペシャルイベントではわかりやすい展開としてApple ArcadeとApple TV+が発表された。

 両サービスはどちらも月額600円と比較的安い価格で利用できる。とは言え、全iPhoneユーザーから毎月1200円のお金がアップルに入るようになれば、それはかなりの売上になるだろう。

 もちろん全ユーザーが加入するなんてことは考えられないが、Apple Arcadeにはこれといった競合がおらず、アップルが抱えているゲーム市場の大きさを考えると十分に成功するように思う。

 心配なのはApple TV+の方だ。動画のサブスクリプションサービスはすでにNetflixやHulu、Amazon Prime Videoなど複数の先駆者がおり、Apple TV+はいまからここに食い込まなければならない。

Apple TV+

 もうほかのサービスで動画を楽しんでいるユーザーが、わざわざApple TV+に加入するとは考えにくい。複数のサービスに入ったところで、動画を観るための時間が足りないからだ。

 そのためアップルは加入を促すための手段として、9月10日以降に新品のアップル製デバイスを購入した場合、Apple TV+を1年間無料で視聴できるサービスを用意したのだろう。

 1年間無料であれば「とりあえず試しに」で加入するユーザーは多くなるだろうし、実際に利用してしまえば気に入った番組の続きが観たくて1年後も加入し続けてくれるかもしれない。

 この1年間の無料視聴サービスで集めたユーザーに、どうやって1年後もApple TV+を観続けてもらうのかが今後の鍵を握る。

 そのためには、アップルはいまもっているお金をオリジナルコンテンツの制作に注ぎ込むしかない。IT企業おなじみの体力勝負の始まりだ。このサービスへの転換が吉と出れば、アップルは今後もスマホ市場の王者になれるだろう。

 ただ、その場合はどうしてもアップル製デバイスを多くの人に購入してもらわなければならない。そう考えると、iPhone 11でもやはり高いのではないだろうか。とくに新興国でのiPhoneの苦戦は知られている。

 そんなわけで筆者としてはやはりiPhone SE2が登場するのではないかと考えている。頼んだぞアップル。



筆者紹介:篠原修司

1983年生まれ。福岡県在住のフリーライター。IT、スマホ、ゲーム、ネットの話題やデマの検証を専門に記事を書いています。
Twitter:@digimaga
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