意外に盛り上がったアップルiPhoneイベント

文●松村太郎(@taromatsumura) 編集● ASCII編集部

2019年09月14日 10時00分

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 9月10日に行なわれたAppleのイベント「By innovation only」。

 iPhone 11、iPhone 11 Proシリーズ、Apple Watch Series 5、そしてキーボードに対応したiPad 第7世代が登場し、ゲームサブスクリプションのApple Arcade、映像ストリーミングサービスApple TV+が、それぞれ月額4.99ドルという価格で登場しました。

 本記事では少し引いた視点で、「Appleイベント」という現象を眺めてみたいと思います。

予想どおりのトリプルカメラで登場したiPhone 11 Proですが、その仕上がりなどはリーク情報では見られなかったものです

イベント終了後のネガティブなコメントを含め
もはや様式美となった

 正直なところ、デバイスのデザインや主要な仕様について、そして製品名に至るまで、事前にリークされていた情報の答え合わせのような側面もありました。

 そしてAppleも、事前の情報流出を厳しく制限しないあたりを見ると、「ある程度の許容」をしているのかなとすら思います。どんな小さな話でも、iPhoneの話題が出れば、メディアも人々も飛びつき、限られた掲載枠や人々がニュースを読む時間を占有します。つまり、他のブランドの話題をかき消すことができるのです。

 米粒一つのようなちょっとした話題でも、メディアに「Apple」のブランド名が溢れるのです。これを活用しないてはないというのは正直なところでしょう。

 そして今回のイベントはYouTubeでも中継され、若い世代もライブストリーミングを楽しみやすい環境を整備しました。これも、実は大きな変化だったと言えるのではないでしょうか。

 イベントの感想もいつもと同じでした。「デザインが変」「高い」「Appleのイノベーションがなくなった」「ジョブズがいないと」……。すでに7年近く繰り返されてきた感想が、今年も並びました。2018年はそこそこ不調でしたが、そう言われ続けながらもAppleは売上高の過去最高を更新し続け、時価総額1兆ドルを初めて実現した米国企業になったのです。

 もはや、そうした感想や批判的なコメントまでが、「Appleイベントの様式美」であり、しかしそれはAppleの現在の成否と異なるリアクションであるということも、また繰り返されるのではないでしょうか。

そんな人気のiPhoneとは言え、放っておいては売れない

 今回のAppleのiPhone発表会で注目していたのは価格でした。2017年に高価格戦略に転じ、結果としては成功しました。世界的な景気や貿易問題の高まりが表面化する前に、999ドルのiPhone Xを提案して売りさばいたのです。

 ところがiPhone XSシリーズ、iPhone XRシリーズを擁した2018年モデルは不振に陥り、決算の予測を大幅に下方修正する「利益警告」まで出しました。予測されていたとは言え、昨年から今年の中盤までのAppleは「危機管理モード」であったはずです。

 今回のiPhoneの値付けには、それがフィードバックされています。iPhone 11はiPhone XRから50ドル下げた699ドルとなり、2017年にiPhone 8につけた価格に“戻り”ました。またiPhone XRはiPhone 11からさらに100ドル安い599ドルへと、150ドル値下がりしました。

iPhone 11がiPhone XRから50ドル下げられたのは驚きの1つです

 こうして売れ筋の液晶モデルの価格を抑えながら、しかし2017年のiPhone10周年で提示した将来のiPhone像をきちんと具現化してきたあたりは、Appleの「もう放っておくだけでは売れない」という認識が反映されているものと思います。

ハードウェアはリーク情報どおりだったが
実際の仕上がりやソフトの実装などで驚きがあった

 Appleの今回の発表会が意外に盛り上がった、と感じた理由は、こうです。

・ハードウェアはリークどおりの姿だったが、それだけではなかった
 ケースメーカーが預かり知らない、背面のガラスの仕上げや細かい質感までは、リークで表現されておらず、結局驚かされることになった。

・ハードウェアの姿はわかっていたが、ソフトの実装する部分まではリークにはなかった
 特にカメラシステムの連携や、個人用のサラウンドを作り出す魔法のスピーカー、相手の距離と位置を正確に測るUWBを用いたAirDropなど、既存あるいは新規の技術の実装に驚きが多かった。

・価格が予想以上に安く設定された
 ティム・クックCEOは冒頭で、開発者会議WWDC 19と同じスライド「ハードウェア・ソフトウェア・サービス」の一体開発を示したが、それこそがAppleの強みであるということを再認識させられたのです。

 ご存知のとおりに、年内にはAppleの1990年代の復活と躍進を支えてきた伝説的な工業デザイナー、ジョニー・アイブ氏がAppleを去ることが伝えられています。

ソフトウェアの実装による機能はリーク情報ではみられなかったものです

 「ID(Industrial Design、工業デザイン)がとにかく強い」という感想を色々なApple社員から聞きますが、その変化はAppleが前述の3つの調和をより強みに変えていこうという変化の現れではないか、と思いました。

 つまり、ハードウェアデザインではない魅力によって、これからのAppleはより強く牽引されていくことになる、という予測を立てることができるのではないでしょうか。

 Appleも変化しており、我々のAppleに対する期待やイメージもまた変化させた方が、正確にその取り組みを見ることができるのではないかと感じています。


筆者紹介――松村太郎

 1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。またビジネス・ブレークスルー大学で教鞭を執る。モバイル・ソーシャルのテクノロジーとライフスタイルについて取材活動をする傍ら、キャスタリア株式会社で、「ソーシャルラーニング」のプラットフォーム開発を行なっている。

公式ブログ TAROSITE.NET
Twitterアカウント @taromatsumura

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