AV評論家・麻倉怜士が語るXperia 1の画面の美しさ

文●スピーディー末岡 取材協力●麻倉怜士

2019年10月05日 12時00分

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ソニー一丸となって仕上げたディスプレー
AV評論家がその美しさを語る

 21:9の有機ELディスプレーや3眼カメラ、ハリウッドでも使われるCineAltaカメラ「VENICE」のノウハウを取り入れた「Cinema Pro」モードなど、エンタメ機能が大幅に進化した「Xperia 1」。今までもさまざまなモバイル系ライターにレビューをしてもらったので、使い勝手やベンチマークの結果、写真や動画の美しさはおわかりいただいているだろう。

 今回は今までにない視点からXperia 1を評価する。オーディオ・ビジュアル評論家の麻倉怜士氏が、Xperia 1の有機ELディスプレーに注目し、その美しさのワケを語った。

麻倉氏「Xperia 1を語る前にちょっとテレビの話をします。まず、テレビはブラウン管から始まりました。でも奥行きが長くて重いから縮めていきましょうという流れで出てきたのが薄型テレビです。液晶とプラズマテレビが出ましたが最終的に液晶が勝ち、さらに液晶の上をいくテレビとして有機ELが登場しました。一般的は有機ELは自発光だからコントラストがいいとか応答速度が速いとか視野角が広いとか、液晶に比べるといろんなメリットがあります」

AV評論家・麻倉怜士氏。Xperia 1で撮影

 最近は価格も落ち着いてきて、徐々に普及しつつある有機ELテレビ。4K HDR対応のコンテンツを楽しむなら、有機ELテレビにしたいところだ。ソニーが自社の有機ELテレビの技術を持ち込んだXperia 1のディスプレーだが、どこが麻倉氏の琴線に触れたのだろうか。

麻倉「液晶と有機ELの違いは誰でもわかると思うんですけど、Xperia 1は単に有機ELを採用しているからキレイという話じゃなくて、絵作りのレベルが非常に高度です。ソニーのモノ作りはこれまで事業部ごとに独立していて、お互い関係ないみたいな状態だったんです。携帯電話もそう。この5年くらいかな? 平井さん(平井一夫氏、元ソニー取締役社長)がその壁を打ち壊して、ソニーの各事業部の良いところを相互に取り込んできました。私は今年の5月、平井さんに最後のインタビューをしたんですけど、その中でよくソニーのDI(デジタルイメージング)技術をXperiaに入れる決断をしましたね、と聞いたんですよ」

 ソニーが変わるために社員が一丸となって本気で取り組む“One Sony”を掲げた平井元社長。もちろんモバイル事業もOne Sonyの中のひとつだ。

麻倉「平井さんは“入れなかったら他と差別化できなかった”と語りました。Xperia 1の先進的なムービー技術やカメラ機能などは、明らかに他社スマホと違います。それにお金がDIからXperiaに映ったとしても、ソニー全体で見れば同じみたいなことも言ってましたね」

 カメラやテレビやゲームなど、ソニーの技術力は多岐にわたる。各部署の売り上げではなく、平井社長は常にソニー全体を考えていた。そんなソニーの技術力の中でも突出していたのがカメラだ。

麻倉「ソニーの話をするとき、場所でするとわかりやすいんですよ。品川というと民生用AV機器、厚木というと放送局などの業務用と分かれています。厚木工場が作っている放送局用のモニターやカメラは世界一です。ソニー以上に優れた製品がないわけじゃないんですが、特に放送局用ビデオカメラはソニーが世界一です。モニターも有機ELの「BVM-X300」というのがありまして、これも世界一なんですよね。30型で400万円くらいするんですけど。今一番映画制作で使われているマスターモニターがこのX300で、HDR再生モニターとして最も評価が高いと」

BVM-X300

 ソニーは映画事業もあり、撮影機材も自社製を使っている。

ソニー厚木の至宝2つが搭載されたXperia 1

麻倉「ハリウッドの映画スタジオはX300が標準装備ですし、Netflixに代表されるような、いわゆるお金がかかった映像作品の制作にはすべてX300が使われている。そしてもうひとつ、厚木の代表作がありまして、それが「CineAlta」という映画撮影用デジタルビデオカメラのブランドです。これもやはり業界で高評価を受けていて、名画と言われるものはだいたいCineAltaで作られています」

 X300とCineAlta、この2つがソニー厚木の至宝なのだ。この至宝がXperia 1に詰め込まれている。

麻倉「この2つの要素がほとんどそのままXperia 1に入っているわけです。これまでのXperiaの技術を結集したというレベルをはるかに超えた、要するにプロ用最高クラスの映像処理技術が搭載されているのがXperia 1なのです」

 厚木の技術が採用されたXperia 1だが、具体的にどこが優れているのか?

麻倉「ソニーのブラビア(有機ELテレビ)はX300を目標にして、それにいかに近づくかという絵づくりがされています。現代のデジタルシネマ作品はほぼX300で撮られているから、X300で映すものが正しい映像なのです。たとえば、この暗い部分はここまで見えなきゃいけないとか、撮影監督が撮影調整した絵がグレーダーの手を介して、そのまま劇場で流れたり、Blu-rayになっているわけですから。そんなわけで、X300はまさに神様みたいなものなのですが、Xperia 1はまったく同じことをやれるんですね。つまり、X300の横にXperia 1を置いて、X300と同じ絵が出るような調整がされている。もちろん、中身は違いますし有機ELパネルも違うモノですが、方向が酷似しています」

 X300の技術のおかげで、プロが見ている絵とほぼ同一の絵を見られるXperia 1。

麻倉「ソニーには門外不出のリファレンス映像があって、それを見ながら階調感とか色再現性をチェックするんです。X300に限らずさまざまなモニターが絵作りのために使います。これをX300の横にXperia 1を置いてクリエイターモード(X300の絵をシミュレートしたもの)で再生したのですが“あ、ほとんど同じだ”と思わず声が出てしまいましたね。とっても落ちついた絵ですよ。テレビにもダイナミックモードがあって、ピカピカな絵でお客さんを営業的に引っ張ってきます。スマホの場合はさらにダイナミックというか、非常にギラギラ、ベタベタ、ガンガンという感じではあるのですが、Xperia 1のクリエイターモードで見るとちょっと引いた感じでバランスがよく、誇張感のない、ナチュラルな絵が楽しめます」

 プロの絵を持ち歩ける、それがXperia 1だ。

麻倉「そしてもうひとつの厚木の至宝がCinema Proです。これは映画のような動画が撮影できるモードですけど、厚木が誇るデジタルシネマカメラの撮り方をそのまま持ってきたというか、非常にプロっぽい操作系です。私がとても気に入ったのは、VENICE CSというフィルターです。映画撮影カメラ・VENICEのトーンカーブを再現してくれます。フィルムが持つトーンカーブ曲線をシミュレートしたもので、いわゆる放送用ビデオカメラのハイコントラストでハイシャープネスというものとは違った、ちょっとファンタジー系になるというか、映画的なフレーバーをかけるというものが、このCinema Proという撮影アプリで得られます」

 当然、業務用機と完全に同じというわけにはいかないが、スマホの中では圧倒的にプロっぽい絵が撮影できるのだ。ただし、撮影にはある程度の知識と、三脚やジンバルなどが必須になる。

麻倉「絵作りのほかにはアスペクト比が新しい。21:9は今一番多いシネスコサイズです。16:9で見るとどうしても上下に黒帯が出ますが、21:9だと正確な寸法の絵が出ます。この縦横比に対する考え方も、すごくシネマライクだなと。これだけ映像のプロフェッショナル的な味わい、機能性、映像の方向性を打ち出したという意味では、ほかのメーカーには絶対できないことです。ソニーの高い技術力をモバイルに入れて、差別化してソニー的なものを作っていく。非常にプロっぽい仕組みを入れることによって、どこもマネできないものができたというのが、大きく感動しているところなんでね」

MWC19で登壇したソニーモバイルコミュニケーションズ代表取締役社長 岸田光哉氏

カメラの絵作りはソフトウェア調整

 ディスプレーの美しさについて語った麻倉氏だが、カメラもかなり気に入っているとのこと。

麻倉「ディスプレーのほかにもう1つビックリしたのは、カメラの絵が大変素晴らしいことです。私もこれまでいろいろスマホを使ってきましたけども、ここまで本格的なというか、ある意味一眼レフにかなり近寄った絵が撮れるのも、注目すべきポイントです。3つのレンズの話はほかのライターさんが書いているので詳しくは述べませんが、それ以上に効いているのは絵作りの力ですよ。まず、肌色再現性が非常にいい。肌色が“これは肌色ですよ”みたいな桃色になるわけではなくて、色合いがとても自然です。それから、グラデーションが豊か。黒と白をはっきり分けるよりは、むしろその中でお互いの色の階調性を非常に細かく設定している。肌色の色合いと肌色の階調性はとても情報量が多いので、そこにイキイキとした自然な肌色感が出てくるのは感心しましたね」

 カメラそのものよりも、絵作りに感心したという麻倉氏。

桃。立体的で繊細な色のグラデーションが伺える
シャイン・マスカット、ピオーネなどの食べ頃の葡萄たち。ディテールまでの着色とナチュラルな描写が魅力

麻倉「私は夏に写真をよく撮るんですが、たとえば空の抜け方もいい。強烈な青空であっても青空としてちゃんと残っているとか、浮いている雲のシャドーの中の情報が非常に多いので、丸みを帯びた立体的な雲に撮れます。あとは夕焼けってホワイトバランスを効かせてしまうと赤を白と認識し、白っぽくなってしまうですけど、それが夕焼けはきちっと夕焼けになっている。こういう、普通のデジカメでもなかなか難しい場面で、非常に情報量が多くてダメージが少ない絵を撮れます。HDRの効き方も素晴らしい」

 この絵作りにはXperiaのソフトウェアのチカラがある。

麻倉「従来のデジカメはメカ的にいいレンズを使って、いいシャッターを使って、いい構図を使ってしっかり撮るぞというものです。スマホの場合はレンズが(デジカメと比べて)プアーで、構図もそんなに凝れないんですが、ソフトウェアで頑張れる余地がある。さっき言った肌の階調性もやっぱりソフトウェアで決まっているわけで、ソフトウェアのパワーがこの絵づくりに効いていますね。ソフトウェアをうまく使うことによって、見た目により臨場感、ビビッドさが感じられるような絵を作っているところに私は感心しました。シネマ機能も素晴らしいが、さらに日常のワンカットを撮るスナップ撮影でもとても良い」

ほどよく背景がボケる。時計の文字盤表面加工まで丁寧に描写している
HDRと夕景モードが効き、夕焼けの色情景が鮮やかだ
人形の頬の丸み、なだらかなグラテーション、優しげな肌色……とても魅力的だ
肌色がナチュラルで、頬のグラテーションの推移がとてもすべらか

 本格的な映像だけでなく、ふとした瞬間にすぐ撮れるお手軽さ、機能性もXperia 1の魅力のひとつ。

麻倉「私はYouTubeを見るときにXperia 1をよく使うんですが、かなりビビッドな感じというか、やはり有機ELが効いてますよね。有機ELの持つコントラストさがあって、それをベースにしてこの階調性と映像再現性を作っているわけですから。その構造がソニーが作る映像機器に非常に近いところがあります。それから、ライブなどのステージ映像もいいですよ。ステージ映像が16:9だとちょっと横が切れるんですけども、すごく臨場感がありますし、映像の中でも特に色の鮮やかさ、色の突き抜け感、色の彩度の高さで、そこにドットの濁りが少ないんですよ。それがクリアーな、鮮明な映像として出てくるんです」

今の時代、映像記録の主役はスマホになった
だからこそ絵作りが重要になる

 今、スマホはコンパクトカメラに代わって映像記録の主役になっている。コンパクトカメラの描写はもう超えたんじゃないかと麻倉氏は言う。

シグマのミラーレス一眼fpの取材時に撮影。黒の素材感、本物感が伝わってくる。黒光の表情が良い
三浦半島から撮影した富士山の夕景の光投射。薄色ながら色づけが確実である。広角
真夏のプール、紺碧の空、雲。ハイ・ダイナミックレンジが効き、雲のグラテーション再現が見事。プールの水の燦めきも良い。熱さと爽やかさが伝わってくる。広角レンズが効く
夏の海岸。暑さがこまやかに表現されている

麻倉「ソニーの場合、モバイルの中にもテレビの出身者とか、カメラの出身者とか、DIから来た人とか、厚木から来た人とかも結構いるんですね。なので、やはり設計する目が違うと思います。出てきたものに対してダメ出しをする人がいて、ここはそういうはずじゃないと。ここはもっと出てくるはずだと。ここは行き過ぎだみたいなことを言う人もちゃんといて、それがうまくフィードバックして技術をアップグレードしている、そんな設計手法じゃないかな。今回の設計もこれまでとまったく違うと言ってました。これまでは前モデルに対して改良的に画質設計を変えていたんですけど、今度はグッと押し上げたと。だから、何年かに一度ぐらいのブレイクスルーがあったという話をしていましたね」

 Xperia 1は最初にMWC19で発表されたときに、「Xperiaを1から」をスローガンに、クリエイターとコンテンツを楽しむ人ためのスマホと、現取締役の岸田光哉氏がプレゼンした。麻倉氏も言うように、ソニーのクリエイティブの結晶が惜しげなく投入された、自分で作品を作りたい人に向けたXperiaと言えるだろう。

香港島の朝焼け。透明感が高く、すっきりと見渡せる
軽井沢・矢ヶ崎池
こちらも軽井沢・矢ヶ崎池。鮮やかで、HDRの効果が美しい
曇天の矢ヶ崎池。優しい雰囲気。HDRが効いている
麻倉氏の仕事部屋をXperia 1の広角で

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