仕組み的に破綻していたロサンゼルス空港のUber

文●松村太郎(@taromatsumura) 編集● ASCII編集部

2019年11月06日 16時00分

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 毎年楽しみにしているイベントの一つに、クリエイティブの祭典「Adobe MAX」があります。今年はiPad向けのPhotoshopの正式リリースに続いて、IllustratorもiPad版が登場することが明らかになりました。またPhotoshop Cameraは、Adobeを知らない若い世代に訴求しそうです。

 しかしその前に、とんでもない状況に遭遇してしまいました。

 1時間遅れて着いたロサンゼルス空港で、ホテルまでの移動のためにUberを拾おうとしたときのこと。そもそもこの空港は巨大なU字型の導入路になっており、ひどい渋滞で車の身動きが取れないことで有名でした。

 それでも、そのU字型の中で空港までのお客を降ろして空になった車を捕まえることができたので、Uber自体の待ち時間は5分程度で済むというのが実情でした。

ロサンゼルス空港でUberを捕まえるためには、その場所に行くのにシャトルバスに乗ることが必要になりました

 ところが、10月29日から、新しいルールが始まっていたのです。

UberとLyftのクルマだけを隔離した「LAXit」は”許しがたい”

 Uberアプリを開くと、謎のコードと3A乗り場へ行くよう指示されます。ターミナルにも柱番号3Aというものがあるのですが、行ってみると、そこはピックアップ場所ではありませんでした。

「LAXit」と呼ばれるエリアに着いても、まだまだこの行列

 大抵のケースでは、Uberを呼んだら、ピックアップしてもらうポイントに時間までに行かなければならないので焦るものですが、割り当てられた車の車種やナンバープレートも送られてこず、配車に失敗しているのかと思っていました。ここでの状況を理解するまでかなりの時間を要してしまいました。

 ロサンゼルス空港におけるUber/Lyft/タクシーの新しい乗り場は、「LAXit」(「エルエー・エグジット」と発音します)は、ターミナルから5分ほどシャトルバスに乗った場所にあり、まずはそこまで移動しなければなりません。

 そして移動した先には、何レーンもの車のレーンがあり、そこにUberやLyftの膨大な車列があり、車を待つ途方もない人の列が広がっていました。

 1時間遅れた飛行機が午後6時に到着し、混んでいるイミグレーションをなんとか1時間弱で切り抜けた先で、勝手のわからないLAXitの新ルールを理解し、たどり着いた先には1時間の行列だったのです。

指定されたエリアでもまた行列

 意気消沈するも、目的地にたどり着かなければなりません。1時間の行列を経て、車に乗る番になり、Uberアプリに表示された6桁の数字をドライバーに伝え、無事設定してあったホテルまでたどり着くことができました。

 タクシーの運転手はこのLAXitの中に入るまでに30分ほどかかり、乗客はLAXitにたどり着いてから1時間かかる。どう考えてもU字型ターミナル間道路の渋滞の方がはるかにマシで、新しいルールは誰にとっても許しがたいものでした。

そもそも、UberとLyftがお呼びじゃない?

 Los Angels Timesによると、ロサンゼルス空港の当局者は水曜日の午前3時にLAXitを拡張し、より多くの乗客に対応できるようにすると発表し、混乱と遅れに対して謝罪しました(https://www.latimes.com/business/story/2019-11-05/lax-uber-lyft-taxi-laxit-pickup-lot-new-rules-opportunities)。

 しかし、そもそもこうした事態を招いたのは、UberやLyftといったライドシェアアプリが空港の道路を占領して大渋滞を引き起こすようになったことが問題で、これを排除・整理するために作り出されたのがLAXitだったという経緯を見ることができます。

 筆者がシリコンバレー・マウンテンビューの海岸沿いにある屋外シアターで開催されたグーグルの開発者イベント「Google I/O」に参加したときは、膨大な人数の人々が1ヵ所に集中したときのUber/Lyftの無力さを体験していました。

 同じ地点にリクエストが集中することで、周辺道路の容量がパンクし、そのエリア一帯が大渋滞に見舞われます。そのため、そこで人を降ろしたい車、そこで乗せたい車、そこから乗りたい人、すべての人が30分近い遅延に悩まされることになりました。

 同じことが毎日、全時間帯で起きているとすれば、ロサンゼルス空港もライドシェアを隔離したくなる気持ちもわかります。

そろそろ岐路を迎えるインフラ

 変化が起きて、問題が生じたらそれを修正する、というプロセスが回っていること自体は、アメリカという社会やインフラが進歩しようとしていることの現れだと思います。しかしながら、その耐用年数、あるいは維持できる年数が短すぎることによって、頻繁にルールを変えなければならず、それによって混乱が発生する回数が増えることはあまり歓迎できません。

 そもそも、LAXitによって、ライドシェアアプリに感じていたこれまでの利便性は完全に消えました。自分がいる場所に、行きたい場所を心得ているドライバーがあと何分で到着し、お互いの評価の点数が明示され、安心感を持って利用できる。これがUberやLyftでした。

 しかしLAXit方式では、どんな車やドライバーに当たるかわからず、車に乗れるまでの時間も行列次第。不確実性が増大してしまっています。だったら、待ち時間だけは少なくて済みそうなホテルのシャトルや、料金は多少の高いタクシーを使ったほうがマシ、という判断するしかなくなるわけです。

 LAXitでの許しがたい体験が、今後どのように改善されていくのか、非常に興味があり、できれば、次にロサンゼルスを訪れる際には、5分ですんなり乗れるUberに戻っていてほしいと思う次第です。


筆者紹介――松村太郎

 1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。またビジネス・ブレークスルー大学で教鞭を執る。モバイル・ソーシャルのテクノロジーとライフスタイルについて取材活動をする傍ら、キャスタリア株式会社で、「ソーシャルラーニング」のプラットフォーム開発を行なっている。

公式ブログ TAROSITE.NET
Twitterアカウント @taromatsumura

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