GAFA規制は第二の「技適」か

文●石川温

2019年11月18日 09時00分

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 11月12日、政府と自民党はグーグル、アップル、フェイスブック、アマゾンの法務担当者をアメリカ本社から招集。市場独占の規制策を検討するため、4社から意見を聴取した。

 政府では個人情報などのデータを大量に持ち、市場で強い影響力を持つITのプラットフォーマーに規制をかけようと検討している。新法「デジタルプラットフォーマー取引透明化法案」を年内までに策定するために作業を本格化しているようだ。

 この4社に対する規制は、すでに欧州や米国でも動き出している。日本としても、他国に乗り遅れないよう、この4社を呼びつけたのだろう。

 しかし、政府や自民党がどこまで、この4社のことを正しく理解し、どこに問題があるのか、本当に把握できているのか、甚だ疑問だ。

●GAFAを一律に規制するのは無理がある

 そもそも、この4社は全く異なるビジネスモデルであり、一律に新法を作り、規制をかけるというのは無理がありすぎる。

 たとえば、グーグルは検索エンジンやマップ、YouTubeやG Suiteを提供。アップルはiPhoneのデバイス販売やアプリの配信を手がける。フェイスブックはSNS大手だし、アマゾンはネット通販とクラウドに強い会社だ。

 確かに個人情報が集中しているという点は理解できる。グーグルにはメールをすべて預け、マップでは自分がこれから行くところ、これまで移動してきたところも把握されている。フェイスブックには友人や仕事の人間関係を握られ、アマゾンにこれまでの購入データをすべて抑えられている。

 アップルに関しても、iPhoneに個人情報が蓄積されている。しかし、この連載でも何度も触れてきたが、アップルとしては「個人情報には興味がない」として、徹底的にプライバシー保護の姿勢を貫いている。

 グーグルやフェイスブック、アマゾンは広告や物販が主力のビジネスモデルなので、オススメの広告や商品を表示させるため、どうしても個人情報が必要になる。

 一方、アップルは「メーカー」という立場だ。どちらかといえば、この3社よりも、日本企業で言えば、任天堂やソニーに近い立場と言える。メーカーとしてゲーム機というハードウェアを売りつつ、自分たちで作ったゲームを配信するだけでなく、第3社のゲームも配信するといった具合だ。

 まさにゲーム機とソフトはiPhoneとApple Storeの関係に似ているだろう。

●規制の副作用も懸念される

 会合でも実際に政府側から質問が集中したのはアップルを除いた3社のようだった。

 アマゾンに対しては「アマゾン自身とサードパーティが供給する商品で差をつけてはいないのか。サードパーティからの売上情報から、アマゾンの商品ラインナップを変えてはいないのか」という質問があったという。

 つまり、アマゾンが自社の有利な立場を使い、自分たちが取り扱う商品を優先的に販売し、さらに他社の販売状況を見て、アマゾンが売れ筋を用意しているのではないかという懸念であった。

 また、グーグルとフェイスブックに対しては個人情報データのポリシーとして、ユーザーデータをどのように使用し管理しているのか、という質問が飛んだようだ。

 政府としては、世界的に影響力のあるプラットフォーマーである4社を呼びつけて、テーブルに座らせ、メディアに写真を撮らせ「仕事している感」をアピールしているようだが、もはや大手4社のサービスは我々の生活に不可欠な存在となっている。

 確かに、日本政府として、日本でアメリカ企業のサービスが普及し、個人情報が握られてしまうことに抵抗があるのかもしれない。しかし、この4社よりも快適で便利なサービスを日本企業が提供できているかといえば、かなり微妙だ。

 この4社に対抗しようと、ソフトバンググループはヤフーとLINEの経営統合を検討しているようだが、ヤフーとLINEが束になっても、アメリカ企業が提供するサービスを超えるのは難しいかもしれない。

 今回の新法制定で、最大の懸念は政府がプラットフォーマーの現状を全く理解できずに厳しい法律だけが制定され、アメリカ企業のイノベーションが阻害されてしまうことだ。

●規制が第二の「技適」になりかねない

 ITの世界は、日進月歩で進化しており、日々、新しいサービスやアプリが生まれている。我々の生活を便利で豊かにし、楽しくしてくれるのは、こうしたIT企業の製品やサービスだったりする。

 例えば「技適」のような法律(電波法の定めに基づく技術基準認証)があるだけで、世界で注目されているハードウェアを日本で使おうとすると法律違反になってしまうというジレンマがあった。

 そうしたハードウェアをいち早く試してみれば、新しいアイデアが生まれてくる可能性がある。しかし、日本ではそうしたハードウェアを試して使うことすら許されなかった。

 まさに法律が日本のイノベーションを阻害する存在になってしまっていたのだ(技適に関しては、11月20日から技適のない機器の利用が可能になるなど、ようやく緩くなり始めた)。

 新法「デジタルプラットフォーマー取引透明化法案」は、プラットフォーマーが提供するサービスの「技適」になりかねない。

 新法がインターネットの進化を阻害しないよう、国民は法案の行方を注視しておく必要がありそうだ。


筆者紹介――石川 温(いしかわ つつむ)

 スマホ/ケータイジャーナリスト。「日経TRENDY」の編集記者を経て、2003年にジャーナリストとして独立。ケータイ業界の動向を報じる記事を雑誌、ウェブなどに発表。『仕事の能率を上げる最強最速のスマホ&パソコン活用術』(朝日新聞)など、著書多数。

mobileASCII.jp TOPページへ