ついに日本上陸のシャオミ 彼らは自らをスマホメーカーと考えていない

文●末岡洋子 編集● ASCII

2019年12月14日 12時00分

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 あのXiaomi(シャオミ)がついに日本に参入する。1億800万画素カメラを搭載した「Mi Note 10」に注目が集まっているが、同時に炊飯器、スーツケースも発表している点は重要だ。シャオミによれば同社が戦う相手は、ファーウェイやソニーなどのスマートフォンベンダーではないのだという。

日本の発表会でもスマートフォンのほかに、ウェアラブル端末や炊飯器、スーツケースなどが発表された

創業は2010年 ”中国のApple”からの脱却を狙う同社

 シャオミの創業は2010年のこと、CEOを務めるLei Jun(雷 軍)氏を始め、実は決して若くはない8人が集まって起業した。創業時のエピソードは、2014年の以下の記事をぜひご覧いただきたい(「”中国のApple”、Xiaomiの秘密は「インターネット企業」志向」)。

8人の共同創業者。創業当時の平均年齢は40代と案外若くない。Lin氏は金山軟件というソフトウェアベンダー(日本ではキングソフト)の元CEO

 シャオミは比較的高いスペック、見栄えの良い製品を安価で提供したことで、中国の若者に人気となった。販売はオンラインのみという店舗では買えない新しさ、そして特定の時間に限定台数を売り切る「フラッシュセール」という手法が注目を集めた(当時、中国に住んでいる知人は「買おうとしてもすぐに売り切れる」と言っていた)。オンラインコミュニティの形成も同社の重要な戦略で、シャオミは自社ユーザーを“顧客”ではなく“ファン”と呼んでいる。

 Jun氏が黒のタートルネックとジーンズを好んで身に着けたこともあり、シャオミは“中国のApple”、Jun氏は“中国のSteve Jobs氏“と言われていた時期もあった。2013年には中国でのシェアはアップルを超え、トップに上り詰めた。こうして注目を集めた時期にシャオミは国際展開に向けて舵をとる。グーグルから引き抜いた国際担当のHugo Barra氏が担当したが、インドでは成功したものの、すべててうまくいったわけではなく当初の計画を縮小した。

 2014年、共同創業者のLin Bin氏にシャオミを例えるなら、グーグルか、アップルか、アマゾンか、と3択で聞いたところ、答えは「アマゾンが近い」だった。

欧州でもすでにシェア4位、成長率は70%

 その後のシャオミはオンライン中心の手法が飽きられたこともあり、成長に陰りが見え始める。2016年ごろに底を打つがその後復活。オフライン戦略(「Mi Home」で直営店を展開するなど)やウェアラブル端末「Mi Band」の成功なども後押しした。

 国際展開ではBarra氏が2017年早々に同社を去り、どうなるのかが危ぶまれた。だが2017年末からは欧州市場に参入、これが成果を上げているようだ。

 最初に参入したのはスペイン、その後フランス、イタリア、イギリスなどに広げており、Mi Storeも展開している。Canalysが発表した2019年第3四半期(7~9月期)の報告書によると、シェアは10.5%で4位(サムスン、ファーウェイ、アップルに続く)ながら、成長率は前年同期比73%。上位5社中では最高となっている。

ドイツ・ミュンヘンの地下鉄で見かけた「Mi Note 10」の広告。シャオミの認知度はドイツでも高い。

 欧州に力を入れる理由はいろいろあるのだろう。オペレーター経由と端末単体で購入する買い方(SIMフリー)の2つが定着しているし、欧州ベースの小規模なメーカーもある。だが、やはり時期的に地政学的な要素は否定できない。ここ1年で加熱した(主にネットワーク機器での)ファーウェイ排除の動きから、シャオミをはじめとした中国ベンダーの関心が、米国以外の市場に移っているとしても不思議ではない。

 なおCanalysによるとファーウェイは西欧圏では前年同期比17%のマイナスとなるなど苦戦。やはり連日のように見出しを飾ったことが、消費者の心理に何らかの影響を与えているのかもしれない。幸いに東欧・中央が好調で、合わせての成長率は0%、マイナス成長は免れた格好だ。

 実際、シャオミは当初、米国市場で展開する方法を探っていると言われていた。そして日本市場については、2014年時点でLin氏は「現時点で計画はない」と述べていた。その後、取材を申し込んだ時も日本メディアに対して、話ができる人はいないと答えが返ってきたことがあった。ところが2019年2月のMWCでは、日本市場について「興味深い市場」とトーンが変化していた(「シャオミが目指すはスマホメーカーではなく家電の無印良品 戦略や日本進出を聞く」)。そして今回の正式発表となる。

シャオミはスマホメーカーではない点に注意が必要
これまでも彼らが意識してきたのは「無印良品」だ

 さてアジア。インドのシェアは3割近くを占めているものの、激戦区の中国では芳しくないようだ。直近の第3四半期において、中国市場におけるスマートフォンの売上は前年同期比7.8%のマイナス。シェアも前年同期の13.1%から9%に下がった(Canalys調べ)。なお、ファーウェイは中国市場で好調(シェアは24.9%から42.4%へと大きく成長)というから、欧州とはまったく逆になっているようだ。

 これもあってか、中国市場のプレジデントを兼任していたLei氏が同職を退任し(会長兼CEOのポジションは継続)、Redmiブランドのゼネラルマネージャーを務めるLu Weibing氏が中国市場を見るようだ。

 では、日本市場でシャオミは成功するのか――その前に、シャオミはスマートフォンメーカーではないことを認識しておく必要がある。前述の今年のMWCでの取材で、同社の幹部(Xiaomi Globalプロダクトマーケティング担当ディレクターのDonovan Sung氏)はシャオミを「スマートフォンとIoT製品をもつインターネットカンパニー」と表現した。

 提携や出資を通じて、電動スクーターから文具まで2000以上の製品を揃えているという同社、目指すのはライフスタイルのブランドだ。「コンシューマーエレクトリクスの無印良品になりたい」とこの幹部は語っていた。

 日本参入にあたってMi Note 10だけでなく、スーツケース、炊飯器などを揃えたことから、日本でシャオミのライバルになるのは、彼ら自身が意識しているという無印良品かもしれない。


筆者紹介──末岡洋子


フリーランスライター。アットマーク・アイティの記者を経てフリーに。欧州のICT事情に明るく、モバイルのほかオープンソースやデジタル規制動向などもウォッチしている

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