2020年の格安SIMはどうなる? 5Gに楽天モバイル、通話定額の行方

文●正田拓也 編集● ASCII

2020年01月12日 12時00分

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 2020年は5Gが本格スタートするとされる年だが、昨年は格安SIMの通信料の値下げがあるかもと予想していたが、ルール変更の影響もあってか大きな波は起こらなかった。そのかわりに縛りがほぼ消滅、乗り換えやすくなるという結果となった。

 では、今年2020年はどうなのか。格安SIMでも5Gが提供されることはあるのか、そのほかにも大きな変化はあるのだろうか?

主要3キャリアは3月早々にも発表会を開催し、5Gスタートをアピールすると思われる

5Gの波は押し寄せるが、それほど変化はない

 5Gは低遅延で高速通信が可能だが、報じられてるような新しいサービスや体験が一気に花開くということはないと予想する。なぜなら、高速通信にしても相手がきちんと高速にデータを送り出してくれなければ、手元の無線部分がどれだけ早くなっても速いデータ伝送ができるわけがないからだ。

 たとえばアプリのダウンロードにしても、数十MBのものをダウンロードする場合、現在のLTEでも本来はもっと早くダウンロードできるはず。ところが実際は時間がかかっている。

 通信速度にしても、LTEでも規格上限なら100Mbps超の速度がいつも出てもいいはずだが、測定アプリでもせいぜい数十Mbps。データを送り出すサーバーや途中の回線混雑などもあってこの速度が限界だ。つまり、5Gで手元部分の回線が早くなっても即高速化するわけではないことがわかる。

 そして速度が高速になった分、データの通信単価が下がらないと今まで以上に料金を気にしながら通信するだけだろう。これでは5Gの高速通信のメリットを受けるとは言えない。

 また、低遅延で役立つアプリケーションは現状では対戦ゲームなどといったエンタメ系のものか、業務用途で機器の遠隔操作といったことが考えられる。当面は低遅延が活かされる使い道がなければ、恩恵があるとは言えないだろう。

5G回線と対応端末は意外に早く普及する可能性

 とはいえ、LTEのときがそうであったように、格安SIMの回線だけは意外に早く5Gに対応しそうだ。エリアの問題から5G専用の通信契約は考えにくく、いずれは通常の契約で5Gも使えるというようになり、いつのまにか新たに契約したら5Gも使えた、ということになるかもしれない。

 そして、端末側の5G対応も意外に早く進みそうだ。当初は5G対応端末はサムスンやファーウェイから10万円クラスの高額スマートフォンのみかと思っていたが、2019年後半に中国メーカーから10万円を大きく割り込む機種が複数発表された。

 さらに、2019年末ぎりぎりに日本に正式参入したシャオミは、2020年になるとすぐ中国向けに3万円台の「RedMi K30 5G」を発表した。現実にこの価格帯でも5Gスマートフォンが作れるということであり、日本国内にも低価格機種の投入に期待が持てそうだ。

中国メーカーは比較的安価な5Gスマホでも攻勢をかけてきそうだ

 ただ、本体のプロセッサの処理性能やメインメモリーが十分ないとスマートフォンがサクサク動かないという時代になっており、回線だけが早くなってもあまり意味がないということは覚えておきたい。

低価格スマートフォンがさらにスペックアップし
充実することは間違いなし

 2019年は通信と端末価格の分離にともなって、低価格のスマートフォンが多数登場した。低価格といっても、スペックは十分にアップしており、世代が古いハイエンドスマートフォンを使い続けるよりも、最新の低価格スマートフォンのほうが快適という事態になっている。

 この流れはさらに加速すると思われる。2019年は「OPPO Reno A」という3万円台ながら処理性能もおサイフケータイも防水もDSDVも全部入りのスマートフォンが登場し、安かろう性能が低かろうという低価格SIMフリー機の流れを断ち切った。また、ドコモ・au・ソフトバンクでもミドルやエントリークラスへのシフトが進んでいる。

3万円台なのに防水やおサイフケータイを含めて、高い性能を持つ「OPPO Reno A」。ミドルクラスの概念を大きく変えたモデルだ

 その象徴的な製品がサムスンの「Galaxy A20」で、ドコモ・auから約2万円という価格で登場、処理性能はそれほど劣らず、おサイフケータイや防水に対応、2万円までという値引き制限があっても、本体が0円に近い金額で新規加入を受け付ける店が登場。中古市場にも1万円台で未使用品がたくさん出回るという事態になっている。

ドコモの発表会の目玉が“2万円スマホ”だったというのは時代の変化を感じさせる

 Galaxy A20の性能は上位機種には及ばないが、以前のエントリー機種よりは制約が少ないように感じられ、新機種のためOSも新しく、アプリの利用制限も出てくるような古い機種を使い続けるよりはずっと快適だ。また、アプリを頻繁に切り替えるというような使い方をせず、上位機種と比較しなければほとんど問題なく使える。

 もし、ユーザーの意識が変わってくれば、日本でも性能は低くても最新のスマートフォンに人気が集まるという状況になるかもしれない。

その一方で格安SIMの普及はそれほど進まない

 では、回線側となる格安SIMはどうかというとそれほど普及は進んでいない。格安SIMを使いこなせる層の需要が一巡する一方で、低価格アレルギーという層は一定数存在し、一度も使ったことがないにもかかわらず、人から聞いた話だけで最初から拒否する人がいるからだ。

 なかには実際に昼休みや夕方の混雑時間帯に辟易し、格安SIMで不幸な体験をした人もいる。しかし、格安SIMを否定する人に話を聞いてみると、ウワサレベルの話だけでシャットアウトしてしまう人がかなりいることも事実。こうした人に何を言っても、格安SIMのメリットを理解してもらえないかもしれない。

 また、サポートの問題もある。サブブランドの場合は店舗があるから問題ないが、MVNOの格安SIMの場合、設定は自分でということになり、端末の使い方にしても聞きに行けそうな場所がない。大手家電量販店には有料のサポートコーナーもあるが、有料ということで敷居が高い。

リアル店舗の存在という意味で、サブブランドは強味を持つ

 スマホの使い方を教えるという部分は、3大キャリアでも有料化の流れはある。しかし、いきなりなにもかもが有料にはならないだろう。リアルな店舗を持っている3大キャリアとサブブランドと比べると格安SIMに飛び込むにはハードルは高い。

楽天モバイルのMVNOは順調、MNOは期待薄

 2019年前半の段階では、楽天回線と言われる楽天モバイルの自社回線サービスの登場で、料金相場は大きく変動すると見られていたが、実際はそうなっていない。それでもMVNOの方の楽天モバイルは今後も少しづつ伸びて来ると予想する。なによりMVNOの格安SIMのなかでもリアルな店舗が多い楽天モバイル。店舗があって、しかも良い場所というのは何よりも強みだからだ。

 一方、MNOとしての楽天モバイルは2020年4月にはようやく正式スタート層だが、軌道に乗るのは1~2年はかかりそう。しかも、楽天モバイルのMNO移行案内のウェブページ(https://mobile.rakuten.co.jp/news/service_20190906/)の記載を読み解くと、現在の「スーパーホーダイ」よりも安くなることは考えにくく、「正式プラン」が驚くような料金にはなるとは思えない。

 そのため、しばらくの間は一般の人にとってはMVNOの楽天モバイルが中心となり、普段から使っている楽天のサービスの延長として楽天モバイルが選ばれる可能性はある。現在、MVNOの格安SIMではシェアトップであり、それは当面揺るぎなさそうだ。

格安SIMの端末値引きは渋くなる

 電気通信事業法の改正により、現在、端末代金の値引きは最大2万円までと上限が決まっている。MVNOの格安SIMの場合、これまでも2万円も値引きすることはほとんど無かったので、変化のあったのはOCN モバイル ONEのNTTコミュニケーションズの子会社が運営する「goo Simseller」での値引き幅が狭まったことや、家電量販店の店頭限定で端末費用込みの料金を設定していたIIJmioの値引きが落ち着いてしまった程度となる。

 これまでも2万円も値引きができるほどの余裕がないMVNOの格安SIMが多かったため、今後も大幅値引きは期待できないだろう。ソフトバンク傘下のLINEモバイル、KDDI傘下のBIGLOBEモバイルなどでも加入特典は渋く、それよりも規模の小さいところに期待ができるはずがない。

 ただ、それでもオトクに加入したい場合は、価格比較サイトなどからの加入で加入事務手数料を無料にしたり、キャッシュバック特典があったりするので、よく探したほうがいいだろう。

通話定額やゼロレーティングに変化も

 そのほか、2020年に変わりそうなことといえば通話定額がある。MVNOの格安SIMといえば以前から音声通話が弱点だった。定額通話オプションが登場しても、頭にプリフィックスをつけてダイヤルするか専用アプリを使う必要がある。その状況に変化が生じそうだ。

 2019年11月に日本通信が音声通話サービスの卸契約について総務大臣裁定を申請している。これが認められれば、プリフィックスを付けずに30秒20円を下回る通話や通話定額が実現できるとしている。裁定は日本通信との卸契約に関する問題だが、他社へも波及する可能性は十分ある。

 また、特定の動画や音楽配信サービス等のデータ通信量をカウントしない「ゼロレーティング」にも変化がありそうだ。OCN モバイル ONE、LINEモバイルやBIGLOBEモバイルなどでオプション提供しているが、使っている人には一見便利でも、さまざまな問題を抱えており、総務省側から規制される可能性がある。

スマートフォンの価格帯や購入方法が変わり、
回線も変わる2020年

 2020年は、格安SIMの回線には目立った変化のない1年となりそうだ。5Gの本格スタートがあり、対応スマートフォンが入手できたとしても、できることに大きな違いはなさそうだ。

 そのかわり、スマートフォンは3~5万円程度で機能も性能も備えた機種がさらに充実していくと予想する。iPhoneについても今ウワサの廉価版が登場すれば、そちらも人気が出て、単価が下がっていく。

 そして、回線契約と同時に購入するメリットが薄れたため、通信事業者が提供するアプリが山盛りのスマートフォンを買う理由がさらに少なくなる。全体からすれば少数だが、自分でスマートフォンを選べる人は、コストパフォーマンスの高いSIMフリー機種を自分で購入し、SIMを差し替えて使う時代が進むと思われる。

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