LINEとヤフーの世紀の大統合で、日本にも生まれそうな「スーパーアプリ」

文●松村太郎(@taromatsumura) 編集● ASCII

2020年02月11日 09時00分

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中国や東南アジアで見られる「スーパーアプリ」
1つのアプリで生活に携わる機能が何でも入っている

 「スーパーアプリ」という言葉を聞いたことがあるでしょうか? 1つのアプリで、チャット、検索、決済、ニュース、配車、Eコマース、旅行の予約など、さまざまな機能が利用できるアプリを指します。

auも「au PAY」のスーパーアプリ化を目指すことを宣言しています。これは最近出てきた言葉ではなく、特にアジア圏では見られる動きです

 世界的なスーパーアプリの例としては、中国のWeChatやAlipay、シンガポールのGrabなどが代表的です。スーパーアプリとして成立する過程としては、チャットや配車などの世界で、まず業界トップになり、専門アプリとして膨大なユーザーを集めたうえで、生活に必要なアプリを飲み込んで巨大化していく系譜を辿ります。

 結果としてユーザーに何が起きるかというと、1つのスーパーアプリをスマホで起動すれば、生活に必要な物がほぼ揃うというシチュエーションが生まれるわけです。

 スーパーアプリのトレンドはアジアでした。スマートフォン市場がミドルレンジ以下に集中しており、複数のアプリを使いこなすには通信量も端末のストレージも足りないわけです。

 あるEコマースアプリでセールだと話題になれば、そのアプリをダウンロードしてお得に買い物しますが、使い終わると削除してストレージのスペースを確保する必要があるわけです。そのため、キャンペーンを常に打ち続けなければ、アプリをスマホに留めておくことが難しく、スタートアップにとってはユーザーの端末での定着が非常に厳しい環境と言えます。

 そのため、チャットや配車など、端末から消されにくい生活必需アプリに買収されたり、そのアプリが始めた同等の機能が生き残り、スーパーアプリへの集中が強化されていきます。これが非常にかいつまんだスーパーアプリの概要ということになります。

 スーパーアプリに対して「ミニアプリ」という概念も生まれています。これはスーパーアプリの1つの機能という位置付けのもので、この存在こそスーパーアプリをスーパーアプリたらしめています。

 先ほど紹介したような各種の機能やサービスがミニアプリとして提供されたり、他の企業がミニアプリとしてスーパーアプリに入り込むといったパターンが登場し、Google Play/App Storeといったアプリストアとは別の場所でアプリのエコシステムが生まれています。

 一歩引いた視点で見れば、アプリストアのエコシステムが米国企業に握られている中で、特に中国企業がいかにして手元に主導権を取り戻すか? という覇権争いの一端としても、見ることができるでしょう。

日本のスーパーアプリ候補はやはり「LINE」

 そこで日本のスーパーアプリは? となると、最も近い存在がLINEです。

 国内の月間アクティブユーザー数は8200万人を超え、10代で83%、20〜40代で4分の3がユーザーとなっており、60代も半数が利用しているアプリです。

 スマホのアプリの中で、よく使われるのはカメラ、写真、ブラウザ、メッセージ、地図、決済、電話あたりが中心ですが、LINEはメッセージングというカテゴリで、毎日起動するアプリに名を連ねる存在となりました。

 そのLINEのホームタブを開けると、「+」ボタンがあり、これを押すと膨大なメニューの中から追加するサービスを選ぶことができます。

 音楽ストリーミング・チケット・漫画や小説といった「エンターテインメント」、バイト・キャリア・占い・ヘルスケアといった「ライフスタイル」、ショッピング・ギフト・クーポンなどの「ショッピング」など、膨大なメニューでLINEアプリの機能を追加できます。

 そのほかにも、LINEニュース、LINEウォレットのタブが用意されており、ウォレットの中ではバーコード決済のLINE Payに、ポイント、クーポン、保険、投資などを選ぶことができます。ポイントカードのPONTAや、スターバックスなどのプリペイドカードも統合できます。

 さらに、ジョルダンの乗り換え案内やルイヴィトンなどのブランドも追加できるほか、駅での傘シェアリングサービス「アイカサ」のように、LINEのチャットの中で機能を提供する手段も用意されています。

 このように「取りあえずLINEアプリを開いておけば、何でもできる」という状況を作り出せることになります。

スーパーアプリ化のトレンド

 日本では、非常に面白いことがこれから起きようとしています。それは2つのスーパーアプリの統合です。昨年11月、ヤフージャパンを運営する親会社のZホールディングスとLINEの経営統合が明らかになりました。

 ヤフーはモバイル化以前から続くポータルサイトで、ヤフーのIDを作れば検索、メール、カレンダー、ショッピング、ヤフオク、ニュース、乗り換え、地図など、あらゆるサービスを利用できます。最近ではモバイル決済のPayPayが規模で圧倒しており、LINE Payとの統合で更にその勢力を強める可能性があります。

 ヤフーの月間ユーザー数はモバイルで6270万人、パソコンで2140万人。しかしヤフー自体は1つのスーパーアプリを提供しているわけでなく、各サービスごとにアプリを提供しています。LINEレベルのメジャーなアプリを持っているわけではなく、何を主導でスーパーアプリ化をすれば良いかと問われれば、なかなか難しかったのも事実です。

 同じサービスで重複しているものを統合していくことになりますが、LINEのスーパーアプリを生かして行くことが統合メリットを最大化すると考えられます。それだけ、LINEのコミュニケーションサービスが、「日々必ず開かれるアプリ」としての要素をかなえていると言えます。

ビジネスでもスーパーアプリ化が話題
使っていない機能山盛りの巨大ポータルサイト化の可能性も

 The Informationは、Googleがビジネス向けの統合コミュニケーションアプリを開発中であると報じました。Gmail、Googleハングアウト、ハングアウト Meet、Googleドライブなどを1つのアプリに統合して提供する計画だとしています(https://www.theinformation.com/articles/google-developing-new-unified-communications-app-for-businesses)。

 MicrosoftはOffice 365のコミュニケーション機能としてMicrosoft Teamsを導入しており、月間アクティブユーザー数2000万人へと急速に成長したとしており、数字の上ではチャットコミュニケーションで先行しているSlackを上回っています。ここに、Googleがコミュニケーションのスーパーアプリ化で競合しようというのです。

 Googleはこれまで、Gmail以降のコミュニケーションサービスを成功させた試しがありません。サービス名を変えたり、似たようなものを乱立させて、ユーザーの混乱を招いてきました。新しい統合コミュニケーションアプリは、それらをうまく整理する可能性もあります。

 その一方でビジネスの現場では効率性がより重視され、サービス提供側が自社サービスに囲い込もうという論理は、手間も含めたコストを前に無視されていきます。そもそも時間的な効率性を追求するSlackの強みであり、MicrosoftもGoogleも絶対的な正義を振りかざされて攻めあぐんでいる状況。

 翻って考えてみると、スーパーアプリの強化は消費者にとって、本当に手間を軽減しているのでしょうか。端末の制約から統合アプリが生まれましたが、巨大化していくと、以前のポータルのように、知らない機能やサービスを知らないまま過ごすこともあるかもしれません。

筆者紹介――松村太郎

 1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。またビジネス・ブレークスルー大学で教鞭を執る。モバイル・ソーシャルのテクノロジーとライフスタイルについて取材活動をする傍ら、キャスタリア株式会社で、「ソーシャルラーニング」のプラットフォーム開発を行なっている。

公式ブログ TAROSITE.NET
Twitterアカウント @taromatsumura

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