海外におけるNFCのトライアルや事例がぼつぼつと出てきているが、端末ベンダーや携帯事業者の努力もむなしくなかなか離陸していない。読み取り機などインフラ側の問題と思っていたが、ロンドンの地下鉄やバスで利用できる非接触ICカード「Oyster Card」を提供するTfL(Transport for London)によると、NFC搭載の携帯電話を利用した乗車券サービスを開始するには、ある重要な問題を解決する必要があるという。
同社で6年前からOyster Card事業を担当しているShashi Verma氏が、地元のモバイルイベントで明かした話を今回は紹介する。
ICカードによる乗車券自体は
ロンドンでも完全に定着している
ロンドンの地下鉄は19世紀からある世界最古のもので、1200万人のロンドン市民、そして観光客の足代わりとなっている交通インフラだ。だが多くの公共機関がそうであるように、ロンドンの地下鉄網も100年以上前と同じネットワークで利用者数だけが増加の一途をたどっている。
利用者数増加に対応するためには効率化しかない。そして効率化を期待して2003年に導入したのがOyster Cardだ。現在、チップにはNXP社の「MIFARE DESFire」(ISO/IEC 14443 type A/B互換)を採用している。
TfLは普及を進めるため、Oyster Card利用時の運賃を下げたり、地下鉄とバス以外にも旅客鉄道のネットワークである、National Railなどにも拡大するなどの促進策をとった。これらが奏功し、現在Oyster Cardの利用者は800万人に達しているという。現在は旅行者でも自動販売機で簡単にOyster Cardを購入できる(デポジットの5ポンドはカードを返却すると戻ってくる)。
拡大戦略の方策として、当然ながら携帯電話への機能統合も視野に入ってくる。すでに2007年から2年間、NFCを搭載する携帯電話を利用してのトライアルも2回行っている。利用したのはNFC対応のSymbian端末である「Nokia 6131」で、1回目のトライアルではOyster Cardとして、2回目のときはOyster Cardに加え、カフェでの決済などエコシステムを拡大して行ったという。「ユーザーの反応はとてもよかった。92%のユーザーがモバイルOyster Cardが商用化されれば使うと回答した」とVerma氏は述べた。