本連載「Apple Geeks」は、Apple製ハードウェア/ソフトウェア、またこれらの中核をなすOS X/iOSに関する解説を、余すことなくお贈りする連載です(連載目次はこちら)。
UNIX使い向けを始め、Apple関連テクノロジー情報を知りつくしたいユーザーに役立つ情報を提供します。
「Amazon Fire TV」の登場が意味するところ
米Amazonがストリーミングボックス「Amazon Fire TV」を発表した(関連記事)。SOCにはQualcomm Snapdragon 8064(Krait 300 クアッドコア1.7GHz+Adreno 320)と2GBメモリ、HDMI 1.4b、Bluetooth 4.0を搭載。Wi-Fiは11a/b/g/n対応で、MIMOデュアルバンドという高スペックマシンだ。フルHD(1080p)のストリーミングに対応、Dolby Digital Plusの7.1ch音声もサポートされる。付属のBluetoothリモコン「Fire TV Remote」にはホイールと7つのボタンを搭載、音声認識用のマイクも内蔵されている。
注目すべきは、その99ドルという価格だ。既視感あるこの価格、そう、現行の「Apple TV」にピタリ照準をあわせたものと考えられる。Amazon Fire TVのプレスリリースにも、「Apple TVの3倍高速なCPU」や「メモリ容量はApple TVの4倍」(いずれも英文を意訳)などとあからさまにApple TVを意識した文言が並ぶ。実際には「Google Chromecast」と「Roku 3」(米国最大手のストリーミングボックスベンダー)も引き合いに出されているが、必ずApple TV、Chromecast、Roku 3の順に言及していることからも、AmazonがApple TVをより強く意識している様子が伺える。単純にABC順の可能性はあるが、実際の製品販売ページでは、Amazon Fire TV、Roku 3、Apple TV、Chromecastという順番に並べた比較表を掲載するなど、意図的に使い分けているようだ。
Amazonのデバイスなだけに「Prime Instant Video」も利用できるが、SVOD(Subscription Video On Demand)サービスのNetflixとHuluもサポートされる。すでにゲーム端末をはじめ多くの機器でサポートされているため新味には欠けるものの、デバイスの性格を物語る要素といえる。
ストリーミングボックスは、デバイス単体での採算を度外視している節がある。2月末に開催されたAppleの年次株主総会でクックCEOは、Apple TV本体および関連コンテンツの売上が10億ドルを超えたことを表明したが、10億ドルといえばAppleの年間売上において1%にも満たない数字。ドル箱のiOSデバイスやMacに比べれば、まさに微々たる金額だ。しかし年次株主総会の席であえて言及したことには、なんらかの意図が含まれているはず。趣味どころか、長期的ビジョンに基づく戦略製品に違いない。
Amazon Fire TVも、Amazonの戦略製品であることは想像に難くない。リビングに鎮座するテレビ(受像機としてのテレビ)を押さえておくことは、PCとスマートフォン/タブレットに導線を巡らすことと同等、あるいはそれ以上に重要なのだろう。連続ドラマを見ながらAmazonで生活用品を注文、そんな活用スタイルをイメージしているのかもしれない。