「iPad mini 3」—「Touch ID」で改めて気づく
ショッピングの楽しさ
まずは、ただTouch IDが付いただけと思い込んでいる方が多いiPad mini 3から見てみよう。使ったことがない人には、それほど重要な機能ではないと思うかもしれないが、Touch IDは、単にパスコードの入力が省けて楽ができるという程度のものではない。
例えば人前でiPadを使って何かを見せる時に、「パスコードを入力する間、一度、目線を外してくれ」と頼むのも面倒だし、電車の中で周りの目線を気にしながらパスコード入力するのも煩わしい。そんな時、ただ指を置くだけで本人確認をし、ロックを解除してくれるという機能が、1日で、1週間で、あるいは1ヵ月に何回感謝しそうかを考えると、(iPad mini 2との)1万円の価格差でも決して高いものではない。
しかもこのロック解除は、Touch IDの機能としては氷山の一角でしかないのだ。iTunes StoreやApp Store、iBook storeでコンテンツやアプリ、電子書籍を買うときも、再起動後、一度だけパスワードを入れた後は、指を置くだけで購入の承認ができてしまう。これも、欲しいアプリを落とすときに、周りの目線を気にしながらパスワード入力する手間をなくしくれる上、まるで印鑑を押すように、指を押し付けてモノが買えてしまうという体験そのものの楽しさも魅力だ。
そして、ここまでは日本でもすでに実現している話だが、実は米国では先日の「iOS 8.1」リリースから、さらに「Apple Pay」の機能が使えるようになっている。Apple Payをおサイフケータイのような、店頭でタッチして支払う仕組みだと勘違いしている人がいるが、それはApple Payのほんの一面でしかない。
Apple Payには、App Storeでアプリを買うのと同じ要領で、Eコマースサイトで物品を購入できるという機能がある。購入の承認方法はApp Storeでの買い方と一緒で、Touch IDに指を置くだけ。なんとも簡単で安全な方法だ。
iTunes StoreやApp Storeでは、売り上げの3割をアップルが徴収するが、実はApple Payではアップルはお店側からは一切お金を徴収しない。このため物凄い勢いで採用店舗が増えている。そして日本でも、2020年の東京オリンピックに向けて海外からの観光客に快適な支払い手段を提供しようと、どこかの大手がApple Pay採用の交渉を始めれば、一気に普及しそうな勢いだ(おサイフケータイを持っているのは日本在住者だけだが、iPhoneならば世界中の人が持っている)。
さらに先日のWWDCで、ついにTouch IDのAPIも公開された。すでにEvernoteなどが秘密のメモの表示を承認する仕組みとしてTouch IDを採用し始めている。今後、他の開発者にも採用が広まれば面白い潮流ができあがるかもしれない。
iPad Air 2そしてiPad mini 3の両方にTouch IDが搭載されたことで、しばらく更新のないiPod touchを除く、すべての形状のiOS機器にTouch IDが搭載されたことになる。
先日、IBMの法人営業部隊がアップルのiPadを企業に売り込むという発表が行われたが、より安全なTouch IDの搭載は、iPad法人導入の勢いもさらに加速させることだろう。