本連載「Apple Geeks」は、Apple製ハードウェア/ソフトウェア、またこれらの中核をなすOS X/iOSに関する解説を、余すことなくお贈りする連載です(連載目次はこちら)。
UNIX使い向けを始め、Apple関連テクノロジー情報を知りつくしたいユーザーに役立つ情報を提供します。
iOS 8で変わった「Touch ID」
iPhone 5sで登場した指紋認識機構「Touch ID」。指紋を検出するセンサーが必要な仕様上、ハードウェア的な対応は不可欠となるが、以降発売されたiPhone/iPadのほとんどに搭載されている。Apple Watchには搭載されないことは明らかになっているが、モバイル決済「Apple Pay」はiOSデバイスと連携して決済する仕組みからして、Touch IDとまったく無関係というわけではない。Touch IDは、「Appleが今後展開する各種サービスにとって必須の認証機構になりつつある」と考えてよさそうだ。
そのTouch IDだが、AppleはiOS 8で大きな路線変更を行っている。APIのサードパーティーへの開放だ。これまではアプリ独自に認証機構を設ける必要があったが、この施策により指紋をホームボタンに重ねるだけでアプリの使用許可を与えることが可能になった。
いってしまえば「アプリの利用を許可するトリガー」だが、実際のところTouch IDが果たす役割は大きい。メールやSNSなど他人の目に触れさせたくないアプリは、起動直後にパスコードの入力を求めることで対処できるが、前述したとおりアプリ単位での対応となり、しかもアプリごとにパスコードの設定が必要になる。Touch IDはシステムレベルで統一された認証機構であり、しかも指紋を使うため4桁の数値より安全性は高い。
順調に増加を続けるTouch ID対応アプリ
Touch IDに対応したアプリは、iOS 8のリリース以来順調に増加している。有名どころでは、クラウド指向のメモアプリ「Evenote」、ファイル共有の「Dropbox」が挙げられる。Googleの「Googleドキュメント」や「Googleスプレッドシート」も、1月公開の最新バージョンでついにTouch ID対応を果たした。
ポイントは、ただ再ログインを手助けするために導入されたわけではないことだ。インターネット通販アプリ「Amazon」では、アプリを終了してもログインを維持することはできたが(パスコードの入力は求められない)、1-Click設定の管理(通常は再サインインが必要)やほしい物リストの管理など、特定の機能でTouch IDをサポートするようになった。
iOSの「機能制限」(アプリの起動許可やWEBサイトへのアクセスを制限する機能)を有効にしていないかぎり、システムのロックを解除してしまえばiOSデバイス上のアプリや各種リソースは使いたい放題だが、金銭やプライバシーが関わるアプリに関しては“最終チェックポイント”を設けたいところ。その目的にTouch IDはうってつけ、APIが公開されたこともあり、今後急速に普及していくことだろう。