オーディオマニアにITを使わせるという困難を切り抜けたLINN
ネットワークオーディオに関しては、LINNのKlimax DSが登場して5年ぐらいの間はLINNの独壇場でした。日本のオーディオファンにこういうIT系の製品を売るのは大変だったでしょう。LINNはハイエンドのオーディオマニアを相手にしています。彼らはパソコンが大嫌いという人が多いからです。NASとかEthernetとか言葉からして違いますし、通信の設定もしたことがない。そんな人たちに、ネットワークを引いてNASを入れ、機器を買ってもらい、パソコンの画面でそれをコントロールさせる。この異文化を日本のハイエンドオーディオの土壌に根付かせるのですから。
LINNの基本的な考えは、プレーヤーは自分たちできちっとオーディオとして作るけれどそれ以外は全て既存のITリソースを使う。大胆で合理的な考え方です。ただITリソースの側が全くオーディオのことを考慮していない点がハードルになりますね。
実は事件があって(笑)。3年前のIntenational Audio Showで、DSを使ったデモをした際の出来事です。小型NASに音源をたくさん入れて意気揚々と再生していたら、急に音が止まってしまった。係員が電源に足に引っ掛けて、コンセントを抜いてしまったからです。電源をつなぎ直したのですが、NASが全然立ち上がらない。結局その場でLINNの人に電話して「直してよ」とお願いした。そしたらすぐ会場までやってきて、ファームウェアの入れ替えを始めたのですよ。「過去にこういうトラブルは山ほどあって慣れています、パソコンの中にもファームウェアが保存してあります」と。