より「体に近いデバイス」を活用するために
BLEセントラル/ペリフェラルの働きを実感できるApple Wacthの機能は、やはり「Handoff」だろう。Handoffは、iOS 8とOS X Yosemite(あるいはそれぞれのOS間)で利用できるアプリ連携機能として知られているが、Apple Watch OSでもサポートされている。
試しに、「カレンダー」や「メール」、「マップ」などのiOSとOS Xにも存在するアプリを起動してみよう。OS Xの場合、Dock領域左横に同じアプリのアイコンが現れ、Handoffが可能な状態になる。iOSも同様に、ロック画面左下とAppスイッチャー左端にHandoff用のアイコンが出現する。OS XとApple Watchはペアリングできないのだから、それぞれBLEセントラル/ペリフェラルとして機能していることがわかるはずだ。
このHandoffという機能は、アプリ間でごく小さなデータを融通できる。Apple Watchでメールを表示しているときOS XやiOS側でHandoffを実行すると、同じメールをすぐに表示できるが、それはメールに割り当てられている一意のIDをApple WatchからOS Xに引き渡しているからだ。Apple Watchで表示している「マップ」も、OS Xの「マップ」にHandoffすれば、まったく同じ位置をただちに表示できる。これは、緯度/経度などの情報がApple Watch OSからOS Xに渡されているからだ。
現在のところ、Apple Watch単独で動作するネイティブアプリをサードパーティーは開発できない -- 2015年5月現在認められているのはiOSアプリの機能拡張(App Extensions)として実装するアプリだけ -- 事情があるため難しいようだが、ネイティブアプリの開発が可能になれば、このHandoffを生かしたアプリが登場することは確実だろう。
ここからは想像だが、Apple WatchとOS Xの間でHandoff可能なサードパーティー製アプリが登場すれば、Macの使い方もその影響を受けるはず。たとえば、音声入力可能なApple Watch用メモアプリでメモを作成しておくと、Macに戻ったとき直ちにそのメモを転送できる。リマインダーアプリも、Apple Watch側で既決・未決のチェックをしておき、Macに戻り次第Mac側のアプリにその情報を反映できる。
Apple Watchは、iPhoneより体に近いところにあるデバイスなだけに、ちょっとしたメモやステータス情報を記録する用途に適している。そして、BLEを利用すれば、メモのように小さなデータはほぼ一瞬で、BLEセントラルデバイスに転送できる。Apple PayやiBeaconが話題だが、小規模デベロッパーでも容易にBLEのメリットを享受できるHandoffは、"新しいアプリの使い方"という提案性を秘めた機能であることを指摘しておきたい。