2015年6月9日にAppleの開発者向けイベント「WWDC 2015」が開催された。今回の発表に関して、テクノロジーと音楽に詳しいフリーライター、四本淑三さんからのコメントが届いたのでご紹介する。
Apple Musicは強力だが、ハードルも
Apple Musicはかなり強力なサービスですが、国内ではいくつかハードルがあります。まず同じような定額サービスはあること。エイベックスとサイバーエージェントの「AWA」は、聴取傾向によるリコメンドや、90日間無料の設定など、Appleのサービスに近いものです。また「LINE Music」のサービスインも控えています。
ここでのApple Musicの独自性はアーティストとファンをつなぐという「Connect」機能でしょう。各種SNSに散らばりがちなファン向けの画像、動画、音源を集約すれば、より濃いコミュニティが実現できそうです。またストリーミングのみのサービスと違い、オフライン時に備えて「iTunesでダウンロード購入しておく」こともできます。
ただ、音楽配信立ち上がりの時期からレーベル各社の足並みが揃わなかったことで、日本では着うた以外の音楽配信は根付いていません。その一方で、動画サイトで活動するクリエイターが人気を集め、独自の音楽文化を形成しています。そうした日本の特殊事情にいかに食い込むかがカギでしょう。
四本淑三(よつもと としみ)
1963年生れ。フリーライター。武蔵野美術大学デザイン情報学科特別講師。新しい音楽は新しい技術が連れてくるという信条のもと、テクノロジーと音楽の関係をフォロー。趣味は自転車とウクレレとエスプレッソ。