選択もまた、ユーザーの手に
ユーザーが機械学習のメリットを得るためには、自分の情報も差し出してその学習に協力しなければならない。ギブアンドテイクが成立しているようにも見えるこのやりとりですが、ユーザーがメリットをすぐに実感し始めるわけではなく、当分は、情報を吸い取られ続ける状態と言えるかもしれません。
しかし、たとえば5年後、まったく違った世界が作られている可能性は大いにあります。思考より早く情報や機械がおすすめしてくれる未来。大いにあり得るでしょう。
ただ、使い始める頃には、「思いもしないうれしいハプニング」の連続のように感じられるかもしれません。自分以外の誰かのパターンに取り込まれる感覚は、楽しい発見がある一方で、果たして自分らしさがそこにあるのか、という疑問を持ち始めます。
おそらく、Appleの製品を使っていると、驚くような発見には見舞われないかもしれません。ただその代わり、気持ち悪さも感じないでしょう。自分の行動から学習が進むことから、出過ぎたまねをしない。手伝いの範囲を超えない。
テクノロジーに関するアプローチがそもそも違うGoogleとAppleですが、学習という文脈に置いては、こんな形で違いが現れてくるのではないでしょうか。
そのどちらを選ぶかもまた、我々の手に委ねられていると言えるでしょう。
筆者紹介――松村太郎
1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。またビジネス・ブレークスルー大学で教鞭を執る。米国カリフォルニア州バークレーに拠点を移し、モバイル・ソーシャルのテクノロジーとライフスタイルについて取材活動をする傍ら、キャスタリア株式会社で、「ソーシャルラーニング」のプラットフォーム開発を行なっている。
公式ブログ TAROSITE.NET
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