米国で大成功の「Netflix」は日本でも流行るか?

文●貝塚/ASCII.jp

2015年06月24日 09時00分

Netflixの副社長 大崎貴之氏と社長 グレッグ・ピーターズ氏

話題の動画配信サービスがいよいよ来日

 いよいよ今秋、米Netflixの動画配信サービス「Netflix」が来日する。

 現在50ヵ国で展開し、特に米国ではネットTVというよりも日本のCSやケーブルテレビに近い感覚で多数の支持を集め、大成功と呼べる状況になっているため、期待している方も多いのではないだろうか。

huluの参入時はどうだった?

 Netflixよりも先行して日本で支持を集めた動画配信サービスとして、まず思い付くのが「hulu」だ。Netflixはhuluについて「まだ動画配信サービスが十分に根付いていない状況で日本市場へ参入したことについて、勇気ある決断と思っており、リスペクトしている」(Netflix ビジネスデベロップメント 下井昌人氏)と話す。今でこそ利用者が100万人を超えているなど、多くの利用者を集めている同サービスも、2011年の8月に来日して以降、月額料金を当初の1480円から980円に引き下げたり、ゲームハードでの視聴に対応させたりといった戦略を経た。2014年の2月に日本テレビ放送網による運営になった同サービスだが、長い道のりの末に今の支持を集めたサービスと言えるだろう。

 Netflixは利用ユーザーを集められるだろうか? 詳細なサービス開始時期や国内での利用料金は明かされていないものの、「ユーザーインターフェースのローカライズもおおむね終わっている」(国内担当者)といい、徐々に国内での仕様も明らかになってきた。今月半ばにはじめて明かされた情報も交えて、Netflixというサービスの概要を今一度確認してみたい。

Netflixの特徴その1「画質がいい」

 4Kビデオや、HDRビデオなど、画質を重視したビデオの配信が多数ある点がNetflixの大きな特徴だ。米国でもHD、SD画質の配信に加えて、4Kビデオの配信を実施している。同社いわく米国よりも日本の方がネットインフラが平均的に整っているそう。4Kなど解像度の高いビデオをリビングの大型TVで視聴するスタイルが根付くのではないだろうか。

Netflixの特徴その2「ダウンロードはできない」

 映像配信サービスの中にはストリーミングだけでなく、ローカルにビデオをダウンロードして、オフライン環境でも楽しめるようにしているサービスが多数あるが、Netflixは基本的にストリーミングオンリー。ただし、可変ストリーミング(帯域幅に応じてサーバーからの転送量を調節する方式)のため、ビデオの「詰まり」が発生しにくいのが特徴。映像の視聴にありがちな、「ちょっと待つ」「微妙に止まる」などのストレスを軽減する工夫が組み込まれている。

Netflixの特徴その3「UIが使いやすい」

 Netflixは、大きめのタイルが並ぶシンプルなインターフェースを採用している。さらに、プロファイルを5つまで設定可能。好みのジャンルなどを元にパーソナライズされた番組表を利用して視聴できる。家族で利用する場合などに便利だ。また、視聴履歴などから自動的にユーザーの好みに合う便組をピックアップしてくれるため、「勝手に好みに合う番組がタイル状に表示される」のがポイント。「頑張って探さなくても、勝手に面白い番組に出会える」のも人気を集める理由のひとつかもしれない。

Netflixの特徴その4「多言語対応」

 Blu-rayのポップアップメニューのように、映像をとめることなく字幕や音声の切り替えができる。対応言語が一覧表示され、選択するだけで変更可能。米国では字幕を切り替えて語学学習などに利用するユーザーもいるそうだ。

Netflixの特徴その5「マルチデバイス対応」

 日本国内では東芝、シャープ、ソニー、パナソニックの4メーカーのテレビ、ソニーのBlu-ray Discプレーヤーに加えて、PS4などのゲームハードなどからの視聴に対応する。さらに、ローンチと同時にiOS向け/Android向けアプリを国内で提供開始することもつい最近明かされた。東芝、シャープ、ソニー、パナソニックのテレビ新製品は、リモコンに「Netflixボタン」があることも特徴で、CSなど有料放送を見る感覚で視聴できるようにしてある。

Netflixの特徴その6「コンテンツのオリジナリティー」

 huluも「仮面ライダー」シリーズや「ウルトラマン」シリーズの配信をはじめてから利用ユーザーが増加したというが、Netflixの場合は、地域に根付いたローカルコンテンツの配信や、独占配信のコンテンツが多いのも特徴。6月にはフジテレビジョンがオリジナルコンテンツをNetflixを通して配信することを明かしたが、今後も似たようなかたちで独占配信の作品が増加していくことが予想される。

Netflixの特徴その7「(おそらく)値ごろで見放題」

 国内での利用料金はまだ検討中としているが、米国では、同時視聴可能台数や、画質の上限に応じて7.99ドル、8.99ドル、11.99ドルの3種類のプランで展開している。競合となるhuluは月額980円で見放題となっているため、おそらく最安プランは980円前後になるのではないだろうか。


日本という市場で勝ち抜くための戦略は?

 「お金を払ってテレビを見るという文化が根付いている(Netflix 代表取締役社長 グレッグ・ピーターズ氏/フジテレビとの合同記者会見にて)」点がアメリカでの成功を呼んでおり、日本ではどうか? という見方もできるが、グレッグ・ピーターズ氏は「アメリカでもローンチ以降の試行錯誤の末現在の状況になっている。日本でも試行錯誤して、徐々に浸透させていくつもり」と話す。

 グレッグ氏は日本という市場について、こうも語る。「日本には動画配信サービスが多数あって、さすが技術力のある国と感じさせる。しかし、(動画配信サービスの)面白さはまだ十分に浸透していないと思う。日本には、とにかく質のいいコンテンツを楽しみたいと思っている人が多い。まずは良質なコンテンツを届けていくこと。そのあとは、日本のクリエイターと組んで、Netflixオリジナルのコンテンツをどんどん増やしていきたい。ローンチはあくまでスタートに過ぎないが、日本では、非常にいい地点からスタートが切れると思う」。

 新サービスの登場時は何かと話題になりやすいが、Netflixの場合は、一般家庭用のTVに専用のボタンがついた状態でスタートを切る。地上波デジタル放送が始まる前に、まだ使えない「地上波デジタルボタン」が付いていたことを思い出した。やはりスタートしてみるまでは何とも言えないが、Netflixが、これまでの動画配信サービスよりも明らかに有利な状態で、日本という市場に参入してくることは確かだ。

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