IoTとウェアラブルデバイス
2015年もIoT、モノのインターネットには注目が高まっています。人が感知しないところで、インターネット上に情報を発するデバイスが増え続ける世界的なトレンドは、確かにフロンティアであるようにも思います。
ただ、Coinは、できればIoTであって欲しくない代物です。
もしCoinにWi-Fiが入っていてインターネットにつながれば、紛失したときに大まかな場所を発見できるかも知れません。その一方で、束ねたカード情報が常にネット上にアクセスできる状態で置かれていると思うと、前述のスキミング的な初期設定体験以上にゾッとします。
IoT全盛の時代になればなるほど、インターネットにつながらない方が良いこともたくさんあるのです。モノそのものがネットにつながるより、スマートフォンをハブにした方が、安全で軽い仕組みが構築できる用途もあるでしょう。
ここでも、プラットホーム化が進むのか?
AppleもGoogleも、IoTデバイス向けに自社の開発環境を活用できるよう、対応を進めています。AppleはWWDCでSwiftをオープンソース化し、Linuxデバイスで動作するようにしました。Googleはより踏み込んで、共通の開発言語とプロトコル、OSのセットをGoogle I/Oで発表しています。
IoTに関しては、インターネット的な文脈にモノが乗ってくるという考え方ですが、おそらく「インターネットにつながらないが通信できるモノ」というより身近なデバイス群が相互にネットワークをその場で作り合うためのプラットホーム化も、進んでいくのではないかと期待しています。
Bluetoothには、小規模ネットワークを組むプロファイルも用意されています。同じデバイスあるいは異なるデバイスがネットワークを組んでいて、その1つにスマホが接続されたときに、ローカルネットワーク全体の情報を取得できてもおもしろそうです。
またスポーツ計測では、自転車の回転数と心拍計など、複数のデバイスを1つのアプリから利用するパターンも既に実用化されています。そして、iBeaconの活用で、狭いエリアに入るかどうかを判定した実装が試されている真っ最中です。
ネット接続が不要なアプリは、たとえば2Gが主流ながら人口が非常に多い途上国などでも活用の見込みがあり、また人伝いに情報を目的の人まで運ぶようなアイディアも面白いかもしれません。
「IoTは人が感知しない」と書きました。しかしそれでは、我々が便利さやおもしろさを実感しにくいという面もあります。できれば、目の前のモノが手元のスマホに情報を挙げてきて、新しい機能を獲得してくれる、「文房具的ネットワーク」の世界にも期待しています。
筆者紹介――松村太郎
1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。またビジネス・ブレークスルー大学で教鞭を執る。米国カリフォルニア州バークレーに拠点を移し、モバイル・ソーシャルのテクノロジーとライフスタイルについて取材活動をする傍ら、キャスタリア株式会社で、「ソーシャルラーニング」のプラットフォーム開発を行なっている。
公式ブログ TAROSITE.NET
Twitterアカウント @taromatsumura