本連載「Apple Geeks」は、Apple製ハードウェア/ソフトウェア、またこれらの中核をなすOS X/iOSに関する解説を、余すことなくお贈りする連載です(連載目次はこちら)。
UNIX使い向けを始め、Apple関連テクノロジー情報を知りつくしたいユーザーに役立つ情報を提供します。
ツボを押さえて進化した「メモ」
残念ながら、OS XはMountain Lionのあたりから進化の速度が緩やかになったと言わざるをえない。事実上無償化されたこと、更新が年1回という速いペースに落ち着いたことと引き換えになっているため、デメリットばかりではないのだが、OSメジャーアップデートという言葉にかつての高揚感が伴わないことは確かだ。
とはいえ、着実に機能強化は進められている。/bin
や/sbin
、/usr/bin
といったコマンドが置かれるディレクトリへの書き込みを基本的に禁止するなど、万能ユーザーのrootですらアクセス制限の対象とした「System Integrity Protection」(rootlessモード)は、常駐/監視型ツールに頼らずマルウェアを排除しようとするAppleのセキュリティ戦略を思えば理に適うものだ。UNIX系OS全体を見渡しても、先進的な取り組みといえるだろう。
iOSとの融合も進む。「マップ」や「写真」といったiOSから持ち込まれた形のアプリもiOS版にあわせて進化し、2つのアプリケーションをフルスクリーン状態で並べて表示できる「Split View」もiOS 9と歩調をあわせる形で導入された。
それら新機能の中でこれぞというものをひとつだけ挙げよと言われたら……筆者は「メモ」を選ぶ。手書きスケッチ機能がないというiOS版との決定的な違いはあるものの、画像などの添付ファイルだけをブラウズする機能、箇条書きにクリックで「〆」印をオン/オフできるチェックリスト作成機能は共通だ。一方ではCocoaベースならではのEmacsライクなキーバインドも健在と、しっかり「ツボ」を押さえている。
しかも、OS X/iOSの共有機能に対応しているので、他のアプリから迅速に情報を書き出すことができる。テキストエディタとして使うもよし、Webブラウジング中気になったサイトをメモ代わりに書き出すもよし、その応用範囲は広い。より高度な活用術を次項にいくつかピックアップしたので、参考にしてほしい。