「パフォーマンス・コントローラ」
というのは、基調講演でフィル・シラー氏がA10 Fusionの説明をしているとき、Appleが設計したという「パフォーマンス・コントローラ」について言及したからだ。詳細は不明だが、彼の発言の文脈から推測すると、A10 Fusionには「big.LITTLE MP」相当の機能(あるいはOSと連携してそれをスムースに実行する機能)が搭載されているらしい。
Apple製品の場合、OSコアたるカーネル(xnu)は基本的に共通であり、「big.LITTLE MP」のサポートをiPhone以外のプロダクトで実現することは比較的容易と考えられる。クアッドコアまで到達していないApple Watch 2の「S2」はともかく、今後登場するiPadやApple TVにも採用されることだろう。
もうひとつ、このパフォーマンス・コントローラをサポートしてほしいデバイスといえば……そう、Macだ。ここ10年はIntel製CPUの採用が続いているが、そもそもOS X/macOSはマルチアーキテクチャ指向のOSであり、実際PowerPCからIntelへの移行がスムーズに進行したことは記憶に新しい。A10 Fusionほどのパフォーマンスともなれば、Mac(の効率重視モデル)に採用されても不思議はなく、省電力により得られるメリットは計り知れない。
Apple自らの手によるワイヤレスチップ「W1」
一方では、通信系のチップまでApple自らが設計していたことが明らかになった。iPhone 7とともに発表されたワイヤレスイヤホン「AirPods」に搭載の「W1」が、その最初のプロダクトとなる。
W1の詳細は、まったくといっていいほど語られなかったが、ワイヤレス通信を担うことと音声再生機能を担うことは明らか。基調講演では音声伝送方式に関してまったく言及がなかったため推量するしかないが、信頼できる筋からの情報によると(早い話がイベント参加者からの口コミ情報)、音声データの伝送はBluetooth/A2DPだという。
ここからは完全に推測だが、AirPodsの紹介文にある「同じiCloudアカウントにサインインしているすべてのデバイスで、AirPodsが瞬時に設定されます」という文言からすると、なんらかのセキュリティ機構が搭載されていることは確実だろう。充電ケースから取り出した直後にペアリングが完了することからしても、Bluetooth以外の近距離無線信技術/プロトコルが使われているのは間違いない。
これまでのApple製品は、BluetoothとWi-FiがBroadcom、LTEモデムはQualcommなどと通信系チップに関してはサプライヤーの使い分けが行なわれていたが、今後はどうなるのか。W1だけで終わりそうもないことは確かだ。