スマホメーカー栄枯盛衰~山根博士の携帯大辞典

ソニーモバイル「Xperia XZ」へとつながるZシリーズ誕生の裏側

文●山根康宏 編集●ゆうこば

2016年10月16日 12時00分

 Xperia ZはSnapdragon S4 Pro(1.5GHz、クアッドコア)、メモリー2GB、ストレージ16GB、1300万画素背面カメラを搭載したフルスペックモデル。スペックだけ見れば、他社のフラッグシップモデルとの差はあまりありません。

 ですが、「Omni Balance Design」と呼ばれる無駄を省いた対称性のある美しいデザインと背面のガラス仕上げは、プラスチックボディーの他社品にはない圧倒的な高級感がありました。

 さらにはブラック、ホワイトに加え、日本をイメージさせるパープルのボディーカラーも他社には無いものでした。iPhoneと質感・デザインの両方で互角に張り合うことのできる初めてのAndroidスマートフォンだったと言えるでしょう。もちろん日本でも発売されました。

Xperia、そして、ソニーのスマートフォンのイメージを一新させた「Xperia Z」

 そして、7月には「Xperia Z Ultra」を発表。6.4型ディスプレーを搭載したファブレットながらも、厚さはわずか6.5ミリ。Xperia Z譲りのガラス両面仕上げの美しいボディーが目を惹きつけます。

 当時はサムスンの「Galaxy Noteシリーズ」がヒットを飛ばし、ファブレットブームが起きていました。それを意識してか、Xperia Z Ultraは鉛筆を使った手書き機能などをアピールしていました。

 しかし、Xperia Z Ultraはタブレットのようにも使えながらも、薄くて持ち運びしやすく、しかも高級感あふれるボディーと言うことでGalaxy Noteには飽き足らないユーザー層の開拓に成功します。

 2016年になって6型サイズ後半のスマートフォンがいくつか出てきていますが、Xperia Z Ultraほど完成度の高い製品は出てきていないといっても過言ではありません。

 日本ではWi-Fiモデルも登場し、小型タブレットとしても販売されました。その後は「ズルトラ」のニックネームで呼ばれるなど、根強いファンを増やしていきます。

 また、グローバルではミドルレンジ以下の製品も型番を整理。低価格のエントリーモデルの「Xperia E」。ミドルレンジの「Xperia M」。そして、5型の大画面ディスプレーを搭載しながら解像度を下げ、チップセットもMediaTek製にするなど価格を抑えた「Xperia C」と、特徴を持った3製品を投入します。

 このうちXperia CはXiaomiなど各社から次々と低価格かつ高スペックなスマートフォンが登場する中国向けの製品でもあり、型番の「C」はチャイナの頭文字であったと思われます。

 2012年は多数のモデルを出したものの、それぞれの特徴がわかりにくく、さらには複雑なモデル名で消費者がどの製品を選んでよいのかわからない、という状況でした。

 ですが、2013年はXperia Zを頂点とした明快なラインアップ展開をし、派生モデルとして「Xperia ZL」「Xperia ZR」「Xperia SP」「Xperia L」などを投入。販売台数は前年を約620万台上回る3760万台、シェア2.1%で順位も9位と盛り返しました。

発売から数年たっても「名機」の呼び名の高い「Xperia Z Ultra」

 このまま順調にいけば2014年も販売台数を伸ばせたことでしょう。2013年9月にソニーは「Xperia Z1」を発表します。これは大きな話題を集めたXperia Zの発表から8ヵ月後、そして大画面で人気を博したXperia Z Ultraの発表から2ヵ月半後でした。

 Xperia Z1の発表は日本のキャリアの新製品展開スケジュールからすると、春モデルのXperia Zに続く秋冬モデルと言うことで妥当なところだったのでしょう。また、同じ9月発表のiPhone 5sの対抗製品として、Xperia Zをブラッシュアップさせた製品を投入する必要があったのかもしれません。

 しかし、ソニーのスマートフォンのイメージを大きく変えたXperia Zを、1年もたたないうちに新たなフラグシップモデルに置き換えるという製品展開戦略は、海外市場の消費者に混乱を招くものになってしまったかもしれません。

 日本のキャリア中心の販売モデルと、グローバルの端末販売モデルは大きく異なります。消費者にとってはわずか数ヵ月前に買った新製品が、あっという間に旧モデルになってしまいますし、販売店も売れ行きのいい製品を取り下げて、新しいモデルを改めてイチから販売しなくてはなりません。

 iPhoneのモデルチェンジは1年に1回、フルモデルチェンジは2年に1回。サムスンもGalaxy Sシリーズ、Galaxy Noteシリーズをそれぞれ春と秋に毎年モデルチェンジしており、それぞれ1年間を通して販売されます。

 それに対し、半年おきにフラグシップモデルを入れ替えるソニーの戦略は、翌年に結果を残すことができたのでしょうか?

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