スマホメーカー栄枯盛衰~山根博士の携帯大辞典

LGが繰り出すサブ液晶付きやモジュール対応スマホなどのアイデア製品たち

文●山根康宏 編集●ゆうこば

2016年12月18日 12時00分

Optimusブランドの廃止、ハイエンド端末を次々に投入

 2013年のLGは、前年に投入したコストパフォーマンスに優れたモデル「Optimus Lシリーズ」が好調だったこともあり、その後継モデル「Optimus LII」シリーズを上半期に多数投入します。

 2013年モデルには低価格で新興国もターゲットにしたエントリー製品「Optimus L1 II」も追加し、「同L3 II」「同L5 II」「同L7 II」「同L9 II」と、ラインナップは5モデルに増えました。

 その後、L IIシリーズには「同L2 II」「同L4 II」も加わり、合計7モデルとLGのスマートフォンの中で最大勢力を誇るまでに種類を増やしていきます。しかし、細かいバリエーションが増えすぎた感もありました。

 そこでLGは思い切った英断に踏み切ります。8月に発表した最新のフラグシップモデルの名前は「LG G2」となり、従来から使っていた「Optimus」の名前を撤廃したのです。

 元々Optimusという名称は、フィーチャーフォンとは異なるスマートフォン向けのブランドとして採用されたものでした。しかし、現実を省みると、発音がしにくいことなどからユーザーへの浸透は進んでいなかったのです。

 ほとんどの国で「Optimus G Pro」ではなく「LG G Pro」のように呼ばれるなど、Optimusの名前はむしろ製品名をわかりにくいものにしていたかもしれません。

ニューヨークで発表されたLG G2

 LG G2はLGとして初めてニューヨークでグローバル製品発表会を行なうなど、新しいスマートフォンを開拓していくというLGの姿勢も大きくアピールされました。

 ハイスペックな製品であることはもちろん、一般的なスマートフォンでは左右に配置していた電源ボタン、音量調整ボタンを背面のカメラボタンの下に配置、左右どちらの手からも利用しやすくするなど新しい操作性も取り入れました。その結果、本体デザインは左右にでっぱりの無い、美しいものとなっています。

 LGのプレミアムブランドは、その後ブランド名は無く、型番のみの表記とし、アスペクト比が4対3のディスプレーを採用したVuシリーズの最新モデルも「LG Vu3」として登場しました。

 一方、Lシリーズは従来通りOptimusブランドを引き続き利用しました。しかし、2014年にはLシリーズを含むほかの製品もすべてOptimusを廃止しています。

 さて、2013年のトピックと言えば、ハイエンド端末を複数展開したことでしょう。

 まずは、世界初をうたうハズだった曲面ディスプレーを採用した「LG G Flex」。6型HD解像度(720×1280ドット)のディスプレーは上下に湾曲しており、力を加えると若干たわむものの、ディスプレーは割れません。ズボンのポケットに入れたまま椅子に座ってしまっても、割れにくくなっているのです。

 この機構は世界初の試みでしたが、湾曲したディスプレーの採用は、サムスンが約20日ほど前に「Galaxy Round」を発表済み。こちらは左右方面にディスプレーが湾曲している代わりに、ディスプレーに力を加えても曲がりません。

 また、発売は韓国内のみに留まっています。恐らく「世界初」の称号を先に取りたいがために、G Flexに先駆けて慌てて投入した製品だったのでしょう。

 サムスンとLG、同じ韓国メーカー同士の「世界初」は2000年代前半の高画質カメラ競争や、腕時計型携帯電話の開発などでいつもしのぎを削りあっているのです。

LG G Flexは湾曲したディスプレーに力を加えるとたわむものの、割れない

 また、グーグルブランドのスマートフォン「Nexus 5」もこの年に発売されました。LGによるNexusブランドの製品は2012年冬の「Nexus 4」に続き2機種目。グーグルとの関係も強化しています。

 グーグルはNexus 4までは1モデルで展開し、Androidのリファレンスモデルとしての最上位機種をNexusブランドでリリースしていました。Nexus 5はG2からディスプレーサイズやカメラ画質をやや落としたものの、Snapdragon 800を搭載するなどスペックは高め。

 LGは上位モデルとしてG Flex、G2そしてNexus 5と、3機種をラインナップし、ブランドイメージの復権を図りました。

 2013年通年の販売台数は、携帯電話全体が約6902万台(前年約5802万台)、スマートフォンだけを見ると約4643万台(前年約2717万台)と大きく回復(ガートナー調査)。特にスマートフォンが大幅増になっています。なお、シェア順位はサムスン、アップル、ファーウェイに次ぐ4位となりました。

フラグシップを中心にバリエーションを広げる

 フラグシップモデルとなる「Gシリーズ」の存在を明確にしたことで、LGのスマートフォン展開はバリエーションを広げやすくなりました。

 2014年に入ると「G2 mini」「G Pro 2」を発売。いずれもG2の小型モデル、大型化モデルです。そして、このG2シリーズの下位にミドルレンジを中心とした「Lシリーズ」「Fシリーズ」を展開していきます。

 2014年5月には「LG G3」を発表。5.5型ディスプレーは、大手メーカーとして世界初のWQHD(1440×2560ドット)解像度。「紙を超える表現力」と大きな話題になりました。

 G3はスタイラスペンを内蔵した「G3 Stylus」、そしてLG自社開発のチップセット「Nuclun」を搭載した初めての製品「G3 Screen」など実験的な製品も展開。「LG、ちょっとおもしろそうだな」と思える製品が増えていきました。

 若年層を狙いニックネームを型番につけた「LG L Fino」「LG L Bello」のグローバル展開や、韓国ではフリップスタイルのいわゆる「ガラホ」である「LG Wine Smart」を投入するなど、他社にはない製品展開も開始。

 これも韓国で最初に発売された「AKA」は本体カラー4色に合わせ、スマートフォンのキャラクターも変わるという端末。そのキャラクターに合わせたフィギュアも付属し、カメラでそのフィギュアを撮影するとAR機能でキャラクターが動き、一緒に撮影ができるといった楽しい仕掛けも用意されていました。

4種類のキャラクターを持つ「AKA」

 2014年のスマートフォンのマーケットシェアは、残念ながらシャオミなどに抜かれ5位以下に転落してしまったものの、LGらしい製品が多数登場した1年だったと言えるでしょう。「顔の見えるメーカー」へと転身したLGは、翌年もさまざまな製品を展開していきます。

 2015年にはフラグシップ「LG G4」を投入。グーグルからは「Nexus 5X」も発売されるなど、フラグシップの2モデル体制は変わりません。

 また、上位モデルの秋の新製品として、新たに「V10」を投入。これはディスプレーの上部に小型のサブディスプレーを埋め込んだ製品で、通知やメモで書いたテキストを表示しておけるというアイディア製品です。

 本体のデザインも良いのですが、実はミルスペック「MIL-STD-810G」にも適合した高強度・防水端末。フロントにはデュアルカメラを搭載するなど、G4の上位モデルと言う位置づけになります。

 そして、2016年。フラグシップの「LG G5」は驚きの機能を搭載して登場しました。なんと本体の下部を取り外し、本体内からカートリッジのようにバッテリーを抜き出す構造としたのです。

 そして、本体下部のパーツは別のモジュールに付け替えることが可能。グリップとシャッターボタン、そして予備の1200mAhバッテリーを内蔵した「LG CAM Plus」、Hi-Fiサウンド再生を実現できる「LG Hi-Fi Plus with B&O PLAY」が登場しました。

バッテリーを外せたり、追加モジュールの付けられる「G5」

 LGはほかにも360度撮影カメラやVRグラスなどをG5と共に展開。これら周辺機器は「LG Friends」という愛称も付けられ、G5を中心にスマートフォンの世界を広げることが期待されました。

 しかし、スマートフォン本体とLG Friendsを買いそろえるとなると、金額はかなり高くなってしまいます。また、電源を落とさないとモジュールを交換できないという不便さもありました。

 普段スマートフォンを使っている時、急にカメラグリップを取り付けようと思っても電源を落とさなくてはならないのです。

 また、両モジュールはG5の実質専用機でした。LGは対応モデルを増やすために、本体デザインはそのままにスペックを落とした低価格版「LG G5 SE」も追加で投入しましたが、本体価格に対してモジュールの価格が割高という印象を与えてしまいました。

 結局、G5の先進的なギミックは利用者を広めることはできなかったようです。翌年モトローラから登場した合体モジュール「Moto Mods」がマグネット式で背面に被せるだけで脱着できる方式だったことを考えると、G5の合体構造はもうひと工夫が欲しかったところです。

 秋のフラグシップとなる「V20」は背面にデュアルカメラを搭載し、さらにパワーアップ。一方、ミドルレンジの製品群には「Xシリーズ」を新たに投入し、よりスタイリッシュに、そしてコストパフォーマンスを高めた製品を強化しています。

 他社製品をライバルに見据えるというよりも、独自の展開を図った製品を増やしていくLG。次のフラグシップモデルがどのような製品になるのか、楽しみです。

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