確か、取材で初めて「HUAWEI」という綴りを目にしたときのこと。ITニュースサイトの記者としてあるまじきことに、初見で読めなかったのです。
中国のメーカーだということは、なんとなくわかったものの……。思い切り「ふ、ふあうぇい……?」と口に出した記憶があります。まあ、当たらずといえども遠からずなのですが。
幸い、すぐにカタカナで「ファーウェイ」であるということを知り、人前で恥をかくことはありませんでした。しかし、個人的には「ASCII編集部にいるのに、知らなかった……」とがっくりきた記憶があります。
そのせいか、未知のメーカーやブランド名を見ると、即座に読みを調べるクセがついてしまいました。悪いことではないと思いますが、ファーウェイ製品を目にするたびに思い出してしまう過去なのです。
さて、いよいよ今週末はクリスマス。本コラムでも便乗して、クリスマスの音楽を取り上げます。
今日の作業“中”BGM
Phil Spector「A Christmas Gift for You from Phil Spector」
Image from Amazon.co.jp |
クリスマス・ギフト・フォー・ユー・フロム・フィル・スペクター |
クリスマスアルバムの永遠の定番、最高の名盤の一つ。1960年代から70年代にかけて「ウォール・オブ・サウンド」と称される独特の音作りで、アメリカのポピュラー音楽に大きな足跡を残したフィル・スペクター。ビートルズの「レット・イット・ビー」のプロデュースを手掛けたことでも有名です。
複数のテイクを何度も繰り返し重ねることで生み出す重厚な音、ウォール・オブ・サウンド(音の壁)の最良の成果がこれでしょう。ザ・ロネッツ、ボブ・B・ソックス&ブルージーンズ、クリスタルズ、ダーレン・ラヴがボーカルとして参加しています。
細部が聴きとりにくくなるのも厭わず録音を重ねることで生まれた、とてつもなく分厚いオケ、深いエコー、キラキラした音で鳴り続けるベル。1963年発表のこのアルバムは、古き良きアメリカのポップスを今に伝えるタイムカプセルでもあります。
そしてこのアルバムほど、「クリスマス」の雰囲気にピッタリな音楽もないのでは。イントロのワクワク感、あまりにも豪華で華やかな楽曲。しかし、どの曲もあっという間に終わっていまい(3分を超えるトラックは1つしかありません)、祭りのあとの寂しさがぼんやり残る……。
考えてみればクリスマスというイベントは、気の早いことに12月が始まった頃から準備が始まり、こちらのほうがにぎやかだったりもする。そして肝心の当日は楽しいながらにあっという間に終わってしまい、急に静かになる……という感じがありませんか? これって、フィル・スペクターの音楽そのものではありませんか。
クリスマスという祝祭を、はからずも音楽で表現しきってしまったような1枚。どんなに録音技術が進歩しても、ここに込められた「時代」の音は色褪せるどころか、ますます魅力を増しているように思えます。
コジマ
1986年生まれ。担当分野は「なるべく広く」のオールドルーキー。ショートコラム「MCコジマのカルチャー編集後記」ASCII倶楽部で好評連載中!
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