MCコジマのカルチャー編集後記

中国のスマホ勢力図、今なお激変が続く

文●コジマ/ASCII

2017年02月10日 08時00分

 中国では1年ちょっとでスマートフォンを買い替えるそうで、山谷剛史さんによれば、世界で最もスマートフォンの買い替えサイクルが早い国と言われているとのこと。

 一方で、富裕層が「どうだ」と見せびらかすアイテムとしてのiPhone人気、安かろう悪かろうなコスパ重視な端末の人気はやや落ち着きを見せており、買い替えにあたっては機能面が重視されるようです。

 さて、アップルによる曲面ディスプレー関連の特許が申請されたり、新iPhone(?)の製造に関するウワサが飛び交っていることもあり、これから曲面ガラスを採用した機種が続々とリリースされると報じる中国メディアは多いようです(関連記事)。

 どのメーカーであれ、比較的安価なモデルに曲面ディスプレーを搭載すれば、中国のユーザーにアピールする付加価値になる可能性があります。2016年は「R9」のヒットでOPPOがシェアを伸ばしましたが、2017年、他メーカーが手をこまねいているとは考えにくいですし。

 もちろん、シャオミの動向も気になります。頼みの綱の一つであるグローバル展開も、10億ドルを売り上げたというインド以外では苦戦しているとのこと。末岡洋子さんの記事にもありますが、たとえば、ブラジルでは2016年にこれ以上の製品発表をしないことになり、同社のブラジルチームは中国に戻っているという報道もあるそう。モバイルバッテリーや活動量計リストバンド、大型TV、ドローンなども手がける同社とはいえ、やはりスマホは大量に売りたいはず。

 順調に成長を続けていたものの、2014年にはメイズとの争いで苦杯をなめ、2015年後半からは中国市場で伸び悩んでいるシャオミだけに(このあたりの顛末は山根博士の連載がとても詳しいです)、新機種「Mi MIX」、そして2017年の新製品で一気に復権を図りたいところでしょう。

 2017年も苛烈さを増しそうな中国のスマホ競争。注意深く見守っていく必要がありそうです。

今日の作業“中”BGM
Japan「Tin Drum」

Image from Amazon.co.jp
錻力の太鼓

 ジャパンといえばデヴィッド・シルヴィアンを始めとしたメンバーのビジュアル面がとかく注目され、日本ではアイドル的な存在として脚光を浴びました。しかし、活動当初はバンド経験があまりなかったというメンバーですが、多忙な活動の中で、初期のグラム・ロックに影響を受けた音から急速に進化を遂げていきます。

 1981年発表の本作(バンドとしては最終作)では、シンセサイザー史にその名を残す「プロフェット 5」の音を活かし、ミック・カーンのフレットレス・ベース(うねうね、ボワボワした独特な音)、スティーヴ・ジャンセンの正確なビート、そしてリチャード・バルビエリの幻想的なキーボードも特徴的な、ダークでエキゾチックなニューウェーブへと生まれ変わっていました。もちろん、シルヴィアンの粘性的なヴォーカルもすばらしい。

 特にプロフェット 5のくすんだ音色が、オリエンタルなムードをかもし出すのに一役買っています。同機には「ポリ・モジュレーター」という機能があり、2つのオシレーター(音色の元となる波形を作る回路)の片方をモジュレーター(変調動作を行なう回路)として使い、ピッチの揺れを他方のオシレーターのフィルターに変換し、複雑な倍音を作ることができました。この機能により、ガムランのような鈍い金属音に似た音色を作り出せたのです。シンセサイザーとしてはおそらくオーバーハイム社の「OB-X」もかなり使われているようですが、やはり全編を通して聴けば、プロフェット 5のインパクトが絶大。

 それにしてもこの東洋と西洋が混ざりあったムードは、ここにしかないものです。ジャケットはおそらく中国の民家を模したものだと思いますが、毛沢東の肖像が掲げられ、シルヴィアンは丼に箸をつっこんでいます。よく見ると右側にせいろ(蒸籠)がありますが、そこから中華麺がはみ出ているのはご愛嬌でしょうか。さらには「Canton」「Visions Of China」「Cantonese Boy」なる楽曲さえあります。

 中国をテーマにしたコンセプトが根底にあることは間違いないでしょうが、中国のことをそのまま歌うわけではなく、未知のオリエンタルな世界に対するイマジネーションで作られたアルバムとしてとらえるべきでしょう。歌詞も、都会と田舎、老人と若者のギャップなどを文学的に書いたもので、単なるイデオロギーではなく、普遍的な問題として受け止められる内容になっている。

 そもそも「ジャパン」というバンド名には深い意味はなかったそうですが、この名前を冠したバンドが最後にもっとも東洋に接近したアルバムを作ったのはなかなかに運命的かもしれません。もっとも、デヴィッド・シルヴィアンはデビュー・アルバムで「Communist China」という曲を書いていますし、東洋(日本)から現れたイエロー・マジック・オーケストラの影響もあったでしょう(実際、シルヴィアンと坂本龍一の交友は長く続きます)。ある意味では必然的なゴールだったのかも。

 ちなみに当時の中国は、大躍進政策と文化大革命で疲弊した経済を立て直すため、現実派の鄧小平が「四つの近代化」を掲げ、市場経済体制への移行を試みていた時期でした。国有企業を守りつつも個人経営を認め、広東省深センなどに経済特区を作って積極的に外資導入を図るなど、海外からも同国の動向が注目されていたわけです。ただ、ジャケットにある毛沢東時代からの路線からは大きく転換することになっていたのですが……。


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