スマホメーカー栄枯盛衰~山根博士の携帯大辞典

Xperiaが生まれるまで奇抜なモデルもあったソニー・エリクソンの変態端末

文●山根康宏 編集●ゆうこば

2017年03月12日 12時00分

 ただし、日本向けはPDCの通信方式やiモードに対応させることもあって、グローバルとは切り離された製品が投入されていきます。

 2002年には初のスマートフォン「P800」を発売。OSはSymbianですがノキアが採用した「Symbian S60」ではなく、「Symbian UIQ」プラットフォームを搭載。タッチパネルに対応し、スタイラスペンでの操作が可能なUIでした。

 さかのぼれば、エリクソン時代に唯一販売された同社のスマートフォン「R380」はスタイリッシュなデザインにした製品でもあり、縦型ディスプレーで取り外し可能なフリップカラーに10キーを搭載。

 スタイラスペンは本体側面に貼り付けるように収納でき、トランスルーセントのブルーのカラーにするなどデザイン面でも優れた製品だったのです。

 ノキアへの対抗の意味もあり、ソニー・エリクソンのスマートフォンは、その後もUIQを中心として展開していきます。2003年には「P900」、2004年には「P910」と、毎年製品を展開していきました。

 本体デザインはメタリック色とし、ジョグホイールを搭載するなど、ビジネスユーザーの取り込みや、音楽再生時の操作性を高めるなど、プライベートでも仕事でもつかえる手書き対応スマートフォンとして、これらPシリーズは当時のスマートフォン市場で一定の人気を得るようになりました。

 ちなみに、日本国内にこれら海外のスマートフォンが導入されることはありませんでした。日本はiモードによる「ケータイインターネット」が全盛に。優れたビジネスモデルが展開されており、海外機が参入する余地は無かったのです。

スタイル路線で成功を目指すが、iPhoneショックで環境が激変

 Pシリーズは一定の知名度を上げたものの、市場ではノキアの勢力が拡大、また携帯電話でのコミュニケーションがSMSからメールへと移行するに従いBlackBerryが台頭していきます。

 さらには、ビジネス向けにはWindows Mobile端末もPCメーカーを中心に製品を増やしていきました。そのような状況の中で、ソニー・エリクソンはシェアを伸ばすことができませんでした。

 そこでソニー・エリクソンは携帯電話の方向性を「カメラ」「音楽」「デザイン」と3つの方向性に絞りだします。サイバーショットケータイ、ウォークマンケータイと、ソニーグループのヒット製品の名前と機能を冠した携帯電話を次々と出しました。

 端末デザインもストレート型でスッキリとさせた、持っているだけでカッコよく思える、そんな製品を増やしていったのです。

 その流れの中から、2005年末にはUIQ最強端末と言える「P990」が登場。10キー内蔵のフリップカバーを開けるとQWERTYキーボードが現われる、というギミックは「携帯電話」「QWERTYキーボード端末」そして「フルタッチスマートフォン」として使い分けできるという優れたアイデアでした。

 もちろん、当時としては高画質な200万画素カメラを搭載するなど、カメラ機能も強化。マルチメディア対応端末としても秀でた性能を有していたのです。

 翌2006年には胸ポケットにもすっきり入る、薄さを強調した2製品を発表。「W950」はウォークマンロゴと名前を付けた初のスマートフォンで、10キーは物理的なキーも無くし、表面をフラットな仕上げとしました。

 加えて、「M600」は数字キーそれぞれにアルファベット2文字ずつを割り当てるという、BlackBerryの「Pearl」ライクなデザイン。どちらも若い世代を狙ったデザインと言えるでしょう。

 しかし、両モデルとも大胆にもカメラを非搭載としたために、市場での反応はあまりいいものではなかったようです。

ウォークマンブランドを背負った「W950」。カメラは非搭載

 そして、2007年1月にアップルからiPhoneが発表になると、市場を取り巻く環境が大きく変わります。アメリカではiPhoneが爆発的な人気となり、世界中から注目を集めます。

 このiPhoneに合わせるように「P1」を発表しますが、W950、M600と同じプラットフォームの製品であり、2.6型320×240ドット解像度ディスプレー、315万画素カメラでは目立つことはできませんでした。もはやスタライスペンを使うスマートフォンは古臭い、そんな時代となったのです。

 2008年には「G700」「G900」を投入します。一見するとストレート型の携帯電話ですが、OSは引き続きSymbian UIQ、ディスプレーは2.5型320×240ドット解像度のタッチパネルを搭載します。指先操作をメインにした小型のスマートフォンとして登場したのです。

 ですが、UIQスマートフォンを使う多くのユーザーはペンによる手書きに慣れていたことや、2.4型の狭いディスプレーでは指先でできる操作も限られてしまいます。この2機種はその特徴をアピールすることすらできず、スマートフォンというよりも携帯電話の中の一製品として目立つことなく消えていきました。

Gシリーズは過渡期的な製品。スマートフォンらしからぬ外観も市場で受けなかった

 iPhoneはアプリストアも開設し、グローバル展開を本格化させ、世界中で人気を高めていきます。また、Androidスマートフォンも「G1」が2008年秋に登場しました。

 ソニー・エリクソンがSymbian UIQだけを使い続けるのもそろそろ限界が見え始めてきたようです。そこで、翌2009年からは、スマートフォンのOS戦略を大きく転換させていくのです。

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