スマホメーカー栄枯盛衰~山根博士の携帯大辞典

「iPhoneの劣化コピー」なんて言えなくなったOPPOの明確な製品戦略

文●山根康宏 編集●ゆうこば

2017年04月23日 12時00分

 R5のスペックはSnapdragon 615(1.5GHz、オクタコア)、5.2型フルHD解像度(1080×1920ドット)ディスプレー、メモリー2GB、ストレージ16GB、フロントカメラ1300万画素、リアカメラ500万画素。

 Rシリーズは2013年まで「R830」など数字は3桁型番でしたが、同年末の「R1」からFindやNシリーズと同じ数字1桁の型番と、すっきりしたモデル名となりました。

 2014年にはR5の前に「R3」も発売。このころのRシリーズはミッドレンジモデルという位置づけで、R5もスペックからわかるように、機能よりも薄さを売りにした製品だったのです。

5ミリを切った世界最薄端末のR5

 2014年は206度のカメラ回転型端末N1の後継機「N3」も登場。カメラ画質は1300万画素から1600万画素にアップ、ディスプレーサイズは5.5型フルHD解像度(1080×1920ドット)、Snapdragon 801搭載のハイスペックモデルでした。

 これでOPPOのラインアップは、WQHD解像度ディスプレー搭載でフラグシップの「Find 7」、回転式高画質カメラのハイエンド「N3」、ミドルレンジの「R1」「R3」、世界最薄「R5」と出そろいます。

 さらには、Ulikeシリーズで展開していた音楽強化モデルも「U3」と数字1桁型番モデルが登場し、強固なラインナップを構築します。

 それだけではなく、2013年末から「OPPO 1100」や「OPPO 3000」などの、アルファベットの型番の付かない、数字4桁モデルを突如発売しました。これらは1000元を切る思い切った低価格端末だったのです。

低価格モデルの投入は1年で終わった

 この4桁型番モデルは、2013年夏にシャオミが発売した超低価格モデル「RedMi」が大人気となり、ファーウェイが「Honor」シリーズで追従するなど、中国国内で1000元モデルのブームが一気に広がっていったことから、OPPOも対抗として急遽投入を決めたものです。

 しかし、1000元以下のモデルは数が出たとしてもユーザーロイヤリティーは低く、次も自社製品を買ってくれるとは限りません。

 また、カメラや薄さといった、大手メーカーにも対抗できる上位製品を持つまでに至ったOPPOのブランドイメージを、低価格品が下げてしまう可能性もあります。結局4桁モデルは1年程度で終わってしまいました。

モデル数の統合、高速充電とフロントカメラでリード

 2014年にOPPOが投入した製品数は10機種を越え、販売店にはさまざまな製品が並ぶようになりました。ユーザーの興味をひきつけるためにはモデル数が多いほうがいいでしょう。

 しかし、毎年のようにすべての製品を次々とモデルチェンジさせるほどの力があるのは大手メーカーだけにしかできません。4桁型番モデルを出した反省などから、2015年になるとOPPOは思い切った製品ラインナップの統廃合をします。

 それは世界最薄モデルとして一気に市場イメージを高めたR5の後継モデルをフラグシップに置き換えるというものでした。同社のハイエンド製品であるFind 7やN3は市場では大きな話題となりましたが、価格が高めなことが販売数増を狙えないひとつの理由でした。

 Find 7はディスプレーをフルHD解像度に落とした「Find 7a」を投入し、同じデザインで同価格のモデルを投入。N3も超ハイエンドモデルで600ドル相当と高価なモデルでした。

 2015年に登場した「R7」と「R7 Plus」は単純にスペックを高めるのではなく、ユーザーが求める機能を高め、あとはスマートフォンの基本スペックとして必要十分なものを搭載する、としたのです。そこで強化したのがカメラと高速充電でした。

新たなフラグシップとなったR7、R7 Plusはミドルハイレンジモデル

 2015年に登場した「R7」「R7 Plus」はそれぞれ背面1300万、正面800万画素とカメラ画質は変わりませんが、高速発光のLEDフラッシュや高速ピント合わせを強化し、カメラとしての使い勝手を大きく高めました。

 さらには、高速充電技術「VOOC」も「5分の充電で2時間通話」と大きくアピール。2000元台のこなれた価格で人気を高めます。

 ディスプレーはR7が5型、R7 Plusが型で、どちらもフルHD解像度。R7がメモリー3GB&ストレージ16GB、R7 Plusがメモリー3GB&ストレージ32GBまたはメモリー4GB&ストレージ64GBと、大容量モデルも用意されました。

 2015年末にはディスプレーを5.5型フルHD解像度にした「R7s」も投入され、R7シリーズは3サイズのモデル展開となります。買いやすい価格にユーザーが求める機能をしっかり搭載したR7シリーズは、中国国内で人気を急上昇させていくのです。

 大都市部ではまだまだiPhone人気が高いものの、地方都市では店舗展開を広げつつ実機のデモをすることで、OPPOユーザーが拡大していきます。

 一方、下位のモデルは価格重視ではなく、カメラ機能もある程度重視した「A」シリーズを新たに投入。これでOPPOのスマートフォンは「R」と「A」の2つのラインだけと、わかりやすいものとなりました。

 そして2016年、ついにOPPOが躍進を遂げます。Rシリーズの最新モデル「R9」と「R9 Plus」を3月に発表。R7シリーズよりスリムボディーとなり、正面カメラは1600万画素を搭載しセルフィー強化を大きくアピール。背面カメラも1600万画素とし、「カメラスマホ」としての性能が大幅に上がりました。

 価格も若干高くなったのですが、大手メーカーよりも美しく写真が撮影できるカメラ性能は、中国の消費者を納得させるレベルだったのです。

 また、この年からは東南アジア市場への展開もさらに強化し、海外向けに新しく「F」シリーズを投入します。FシリーズはRシリーズの低価格版という位置づけで「F1」が発売されましたが、その上位モデル「F1 Plus」ではR9シリーズ同様にリアに1600万画素カメラを搭載しています。

 さらに登場した「F1s」では、F1で採用していたフルHD解像度ディスプレーをHD解像度(720×1280ドット)に落としながらも、正面1600万、背面1300万画素のカメラは変えず、300ドルを切る低価格なセルフィー端末として注目を集めます。

 ガートナーの調査では、2015年以前にOPPOの名前を見かけることはありませんでした。しかし、2016年第1四半期(1〜3月)には販売台数約1611万台として、いきなりサムスン、アップル、ファーウェイに次ぐシェア4位に登場。5位のシャオミの約1505万台を上回る記録を残したのです。ちなみに、前年同期の販売数は807万台でシャオミの約半分でした。

 2016年11月にはマイナーチェンジモデル「R9s」「R9s Plus」を発表。CPUの若干のスペックアップのほか、カメラ画素数は変わらないもののソニーと共同開発したという新型センサーIMX398を採用し、カメラ性能をさらに引き上げています。

R9sはiPhoneよりひと足早くレッドバージョンも登場

 少ないモデル数にも関わらず、明確な製品展開をしたことで、OPPOの強さは一過性のものにはとどまりませんでした。

 2016年第2四半期には約1849万台、第3四半期は約2494万台、第4四半期は約2670万台と順調に販売数を伸ばしていきます。

 2016年を通してのスマートフォンの販売数とシェアは、1位のサムスンが約3億645万台(20.5%)、2位のアップルが約2億1606万台(1.4%)、3位のファーウェイが約1億3282万台(8.9%)、4位のOPPOが約8530万台(5.7%)と、通年での4位の座をキープ。ちなみに、5位はVivo(BBK)の約7241万台(4.8%)でした。

 ちなみに、R9sシリーズの本体デザインはiPhoneにかなり類似しています。しかし、iPhoneよりも美しいセルフィーが撮影でき、しかも高速に充電できる。そんなR9sシリーズを「iPhoneの劣化コピー」と思って購入する客はもはやいないのです。

 ハイスペックを捨てミッド・ハイレンジに方向転換しつつ、カメラと高速充電と買いやすい価格で急激にシェアを伸ばしてきたOPPO。

 今後はユーザーを飽きさせない端末デザインの採用や、カメラの高性能化をどの方向へ持っていくかが成長の鍵をにぎりそうです。2017年には新興国向けにフロントカメラをデュアル化した「F3」を投入するなど、まだまだ勢いは止まりそうにありません。

 今後、日本を含む先進国へ参入すればブランドイメージも高まり、グローバルメーカーの仲間入りも夢ではないかもしれません。ファーウェイの後をどこまでぴたりと追いかけることができるのか、OPPOの今後は日本のユーザーにとっても見逃せないはずです。

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