VRが先か、ARが先か
Oculusを買収したFacebook、DaydreamでデバイスとアプリのVR環境を整えるGoogle、そしてゲームに特化して製品を販売するソニー。これらの企業が民生用のVRの主要なプラットフォーマーと言えます。
しかしモバイルデバイスの重要なプレイヤーであるAppleは、拡張現実、ARへの注目を明らかにしてきました。VRよりもARの方が、我々の生活に対する関与や変化が大きいという考えです。
今回FacebookはVRプラットホームを公開しましたが、ARについてもその取り組みを披露しています。ただ、それは限定的な入口、つまり「カメラ」を用いたARプラットホームでした。
Facebookアプリのカメラでは、写真、ビデオ、ライブ放送を行なうことができます。それぞれに対して、背景やフレームを加えたり、人の顔に動物のマスクなどの装飾ができます。ライブ放送でも同様のエフェクトがかけられるのです。
そうしたエフェクトのデザインを、開発者に開放した点がポイントです。Frame Studioというウェブ上のツールで簡単にフレームをデザインできるのです。また、Mac用アプリ「AR Studio」で、人の顔を認識してエフェクトをデザインしたり、ゲームの中で、あるいは店舗などでのARの表現を作ることができるのです。
ARといわれても、一般の人にとっては、どこから手をつけて良いのかわからなかった、というのが実際のところだったのではないでしょうか。そこでFacebookは、カメラというツールを通じて、ARへの理解と、非エンジニアによるARコンテンツの開発への道筋をつけたというのが、今回のF8におけるARの位置づけです。
Facebookは、ARの活用について、「情報表示」「デジタルオブジェクト」「修飾・装飾」の3つがあると説明します。
特に情報表示やデジタルオブジェクトでは、GPSやセンサーのような絶対的な位置情報やローカルな相対的位置情報(位置関係)が重要となります。
位置関係で言えば、テーブルの上にコーヒーカップを置くと、それを防衛するタワーディフェンスゲームが現れるといったゲームの例を挙げていたように、多くの人が自宅を含む様々な場所で実現することができる、より身近なAR体験になるでしょう。
VRではゴーグルを通して別の世界を見るという体験ですが、ARはスマホを通してデジタルが付加された世界を見る体験です。デバイスの違いから考えても、後者の方が先に訪れる未来であることは明らかですね。
筆者紹介――松村太郎
1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。またビジネス・ブレークスルー大学で教鞭を執る。米国カリフォルニア州バークレーに拠点を移し、モバイル・ソーシャルのテクノロジーとライフスタイルについて取材活動をする傍ら、キャスタリア株式会社で、「ソーシャルラーニング」のプラットフォーム開発を行なっている。
公式ブログ TAROSITE.NET
Twitterアカウント @taromatsumura