自動車の偏りをいかに修正するか
こういう乗り捨て可能なクルマや自転車のサービスは、クルマの偏りをいかに是正するのかという問題があります。
駅前から離れたショッピングやレストランが集まるエリアには、どうしてもクルマが貯まってしまいます。特に夜。行きはUberより安いので自分でGigを運転していき、お酒が入った帰りはUberで、という人が多いと、夜中にはショッピング街周辺に集中してしまうことになります。
これもサンフランシスコ市内でもよく見かける光景ですが、レンタルの自転車の場合、集まった自転車をトラックに積み込んで分散させるというオペレーションをしなければなりません。
しかしクルマの場合は、カートレーラーを使うのも難しいので、人がなんらかの形で分散させる必要があります。この点が、駐車スポットが決まっていた既存のカーシェアとは違う苦労する点になるのではないかと思います。
たとえば、クルマが大量に集まっているエリアから別の場所に移動するときに料金を割り引いたり、ポイントを付ける、といった施策をするなどしながら、クルマをいかに分散させておくかが重要になってくるのではないでしょうか。
街作りに役立つ面白いデータも蓄積されるはず
このサービスは前述のとおりに、バークレーとオークランドのHomeZoneの都市にとっても、面白いデータがもたらされるかもしれません。
クルマの移動や偏りを見ていくことで、どのエリアに対して移動したいというニーズが高まっているのかを知ることができます。こうしたデータは、街造りや公共交通を設計する上で、非常に有用なリアルタイムデータになり得るからです。
Uberは「Uber Movement」と呼ばれるサイトで、これまで蓄積してきた都市と交通に関するオープンデータを公開しています(現在は限定公開、後に一般公開予定)。さまざまな種類の意図の「移動意向」のデータが集まることで、都市設計を多面的に考えていくことができるようになります。
米国の都市を見ていると、シムシティ感覚が強いです。街になんらかの施設ができると、その施設に応じて街の治安や地価の高騰、教育レベルの上昇が発生します。
特にここ数年のバークレーやサンフランシスコでは、治安の改善と文化施設やテクノロジー企業誘致に相関が出ているように感じます。変化しやすい街のなかで、多くのデータがもたらされることによって、街の機能の最適化が起きてくることが期待できます。
ただ、“最適化”というのは、個人的にはさほど信奉していない概念でもあります。最適化が進んでしまうと、大きな変数が与えられたときに、対処しにくいという脆弱性も持つことになるからです。
筆者紹介――松村太郎
1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。またビジネス・ブレークスルー大学で教鞭を執る。米国カリフォルニア州バークレーに拠点を移し、モバイル・ソーシャルのテクノロジーとライフスタイルについて取材活動をする傍ら、キャスタリア株式会社で、「ソーシャルラーニング」のプラットフォーム開発を行なっている。
公式ブログ TAROSITE.NET
Twitterアカウント @taromatsumura