松村太郎の「西海岸から見る"it"トレンド」

スマホが圏外のスノルのトレイルで、位置情報について考える (2/2)

文●松村太郎(@taromatsumura) 編集● ASCII編集部

2017年05月31日 12時00分

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点の情報と線の情報

 スマホの写真とワークアウトのログの違いは、点の情報か、線の情報か、ということになります。

 位置情報のことを考えてみると、今このタイミングでどこにいるのかという情報を活用することから始まっています。地図を見る、周辺のお店を探す、自分の居場所を知らせるなどは、いずれも点の位置情報を活用すれば成立します。

 少し補足すると、地図や周囲のお店の情報の表示であれば、点ですらある必要がなく、大まかに「この辺」という「面の位置情報」の方が便利だったりします。実際、地図は面で表示しますし、お店の情報も、徒歩圏内の周囲で見つけてくれた方がヒット件数が増えますしね。

 話が脱線しましたが、線の位置情報は、時間に伴って移動する自分の軌跡を示します。ワークアウトのログは、まさに、過去の線となっている位置情報というわけです。

 我々が普段使っているナビは、意外と高度かもしれません。線の位置情報ですが、我々がこれから向かう未来の位置情報を示しているからです。

線上の未来で、何が起きるか

 未来の位置情報が活用されている最も身近なサービスは、天気予報でしょう。低気圧や高気圧、前線、台風などが3時間後、6時間後、24時間後にどの位置にあるかを把握し、その下で起きうる気象現象を伝えてくれていることになります。

 しかし、どんなに精度が高い観測と数値予報を持ってしても、完璧な天気予報は存在していません。様々な変数を細く仕切れていないからであって、サイエンスの世界でも、未来の予測にはまだ、不確実性が残ります。

 それに比べれば、人の未来は天気よりも簡単なのかもしれません。たとえばUberは米国では「Uber Pool」という相乗りサービスを展開しています。今までの話からすれば、該当するクルマの未来の位置情報たる予想ルートと、車に乗りたいという人のリクエスト地点のマッチングして実現しています。

 雨雲と違って、人は移動したいという意志があってUber Poolをアプリから呼んでいますから、未来のルート上でその人を拾う確実性は、天気予報よりもよっぽど高い確率で実現します。

 どんな世界でもそうかもしれませんが、その人、あるいは集団などの「意志を持つ未来」をつかむことは、重要なことといえるでしょう。おそらく人工知能はそれをすでに見出すところまで、データを蓄積しているのではないでしょうか。


筆者紹介――松村太郎

 1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。またビジネス・ブレークスルー大学で教鞭を執る。米国カリフォルニア州バークレーに拠点を移し、モバイル・ソーシャルのテクノロジーとライフスタイルについて取材活動をする傍ら、キャスタリア株式会社で、「ソーシャルラーニング」のプラットフォーム開発を行なっている。

公式ブログ TAROSITE.NET
Twitterアカウント @taromatsumura

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