スマホメーカー栄枯盛衰~山根博士の携帯大辞典

音楽からセルフィー重視へ 中国メーカーVivoはスマホ業界の注目の的だ

文●山根康宏 編集●ゆうこば

2017年10月01日 12時00分

 また、海外市場向けに「V」シリーズを新規に投入。過去に中国では販売した「V1」「V2」とはまったく異なる系列で、「X」シリーズのカメラや音楽性能は高いままに、ディスプレー解像度を落とすなどスペックを若干落とすことで価格を引き下げたモデルとなります。

 このVシリーズは「V1」「V1Max」の2製品が投入され、さっそく新興国では人気製品となりました。中国では「X」「Xplay」「Y」の3ライン、海外では「V」「Y」の2ラインという体制がここに完成したのです。

 低価格モデルとしてVivoの販売数増を陰で支える役割だったYシリーズも、この年には「Y11」「Y31」「Y35」「Y37」「Y51」とラインナップを一新。

 特筆すべきはY35とY37の2製品で、低価格モデルながらも正面カメラは1300万画素と、セルフィー利用を意識して登場。これが大いにヒットし、Vivoのスマートフォンの今後の方向性を大きく変える製品となりました。

海外向けとして改めて登場した「V1」

 2015年末には「X6」「X6 Plus」を発表。大画面モデルはMaxではなくiPhoneと同じPlusの名が付けられました。また、X5の3モデル展開はやめて2モデルのみとしています。

 わかりやすいラインアップに、エントリーモデルからハイエンド製品までをそろえ、しかもフラグシップモデルはミドルハイレンジ並みのスペックとすることで、価格は大手メーカーの最上位モデルよりも3〜4割安い価格設定でした。

 Vivoの最上位モデルのSoCはSnapdragon 600系を搭載し、他社から見るとスペックは1ランク落ちます。しかし、もはや一般的な利用にはSnapdragon 800系を使わずとも必要十分なパフォーマンスが得られたのです。

 Vivoの製品販売数は急増し、2015年の中国国内シェアは8.1%となりシャオミ、ファーウェイ、アップルに次ぐ4位につけています(IDC調査)。

 2016年に入るとまたも「世界初」の端末を投入。「Xplay 5」は6GBメモリーを搭載する世界初のスマートフォンとなりました。このメモリーを活かす必要もあり、SoCはVivo初のSnapdragon 820と、上位のチップセットを採用。

 また、ディスプレーはサムスン製の有機ELで、左右が湾曲したエッジデザインのものを搭載しました。5.43型1440×2560ドット解像度と高精細であり、「Galaxy S7 edge」とよく似た形状となっています。価格は4288元と、Vivoの製品としては高価なモデルとなりました。

世界初の6GBメモリー&エッジディスプレー搭載となった「Xplay 5」

 そして翌月、2016年4月には「X6s」「X6s Plus」を相次いで投入。フラグシップのマイナーチェンジモデルを半年後に発表し、「s」の末版を付けるという戦略はOPPOをマネたものでした。

 しかし、6月にすぐさま「X7」「X7 Plus」を発表します。X7シリーズは正面カメラを1600万画素とし、X6シリーズの800万画素から一気に倍増させたモデルでした。

 ちなみに、背面カメラはそれぞれ1300万画素なので、X7シリーズは正面カメラが背面カメラよりも高い製品ということになります。

 わずか2ヵ月で新製品を投入した背景は、3月にOPPOが発表した「R9」が前後100万画素カメラを搭載したこと、また自社前年発売のY35/Y37のフロントカメラが好評だったことを受けてのものでしょう。

 消費者がスマートフォンに求めるもの、それはもはや「いい音」ではなく「いいセルフィー」に変わっていたのです。そして、このX7シリーズ以降、Vivoの製品アピールもHi-Fiサウンドから正面カメラへと一気に変わっていきます。

中国で2位、世界で5位、止まらないVivoの勢い

 Vivoのコーポレートカラーはブルー。OPPOはグリーン。中国国内各都市はもちろんのこと、アジアやインドの各都市ではそれぞれの色を背景に、芸能人がセルフィーをするという広告が2016年からだんだんと目立つようになります。そして、この2社の名前と存在が世界的に認知されていきました。

 2016年第3四半期(7〜9月)には中国国内のスマートフォン出荷台数の歴史が大きく塗り替えられました。Counterpointの調査によると、同期のシェア1位はOPPOで16.6%、そして2位がVivoで僅差の16.2%でした。

 ついにこの2社がサムスン、アップル、ファーウェイ、シャオミと言った大手メーカーを抜き去ったのです。OPPOは前年同期比82%増でしたが、Vivoはそれをさらに上回る114%増。中国でもっとも勢いを持つメーカーとなったのでした。

 なお、3位のファーウェイは15%で、この3社だけでほぼ中国市場の過半数を占めたことになります。ちなみに、4位はシャオミの10.6%、5位がアップルの8.4%でした。アップルは「iPhone 7」の発売前だったとはいえ、Vivoはそのアップルの約倍の数を出荷したのです。

 2016年11月の新製品発表会では「X9」と「Xplay6」を発表。そしてキャッチコピーとして「Camera&Music」も発表し、ついにカメラ機能も製品の特長としてアピールすることになりました。そしてこの意味は、同じくカメラを強化するOPPOに真っ向から対抗する姿勢を見せるものとなりました。

 このうちX9は正面にデュアルカメラを搭載した世界初の製品となります。OPPOの正面デュアルカメラ製品は翌年、2017年1月発表の「F3」が最初となるので、カメラ性能でVivoがOPPOを初めて抜いた記念すべきモデルとも言えるでしょう。

正面デュアルカメラでOPPOを出し抜いたX9

 X9はSnapdragon 625(2GHz、オクタコア)、メモリー4GB、ストレージ64GBまたは128GB、5.5型フルHD解像度ディスプレー、背面1600万画素、正面2000万画素+800万画素カメラと言う構成。

 価格は64GB版が2798元、128GB版が2998元で、iPhoneが5000元以上することを考えるとかなり割安です。中国の都市部ではまだまだアップルのブランド力は強いものの、地方都市を中心にVivo、そしてほぼ同価格・同スペックのOPPOを選ぶ層が次々に増えていきます。

 そして、その動きは新興国でも同じであり、もはや若者がVivoやOPPOを選ぶことは珍しくなくなっていきました。IDCの調査では2016年通年のスマートフォン出荷台数でVivoは世界5位となり、市場関係者の間で誰もが知るメーカーにまで登り詰めたのでした。

 2016年12月には、エントリークラスのYシリーズにも正面1600万画素カメラを搭載した上位モデル「Y67」を発表。また、海外向けの「Y66」も正面カメラを同じ画質として投入、Vivoの顔となる機能は音楽からカメラへと完全にシフトしたのです。

 2017年に入ると、X9のグローバルモデルとして、ほぼ同スペックの「V5 Plus」を投入。 夏にはマイナーチェンジとなる「X9s」「X9s Plus」を相次いで発表しました。

 そして、次のメジャーバージョンアップが期待される中、「X20」「X20 Plus」を中国で、グローバルでは「V7+」を発表します。

 いずれのモデルもディスプレーは18対9のアスペクト比を持つワイドサイズ。X20とX20 PlusがSnapdragon 660、V7+はSnapdragon 450を採用。メモリー4GBとストレージ64GBは3モデル共通です。

 ディスプレーはX20とX20 Plusが有機ELでそれぞれ6.01型、6.43型1080×2160ドット。V7+はIPS液晶で5.99型720×1440ドットです。カメラはX20/X20 Plusが背面1200万+500万画素、正面1200万画素。V7+は背面1600万画素、正面2400万画素。

 カメラはかなり強力ですが、チップセット周りはミドルハイレンジ。コストパフォーマンスは高く、V7+はインドで2万480ルピー(約3万5400円)で販売されます。

18対9のワイドディスプレーを早くも搭載した「X20」

 Vivoは音楽機能やセルフィーなど、若い世代を狙った製品をタイムリーに送り続けています。2017年にはこれから流行となるであろう、ワイドサイズディスプレーの搭載も始めました。

 トレンドを後追いするのではなく、素早い動きで流行の中心に位置できる製品を次々と送り続けるVivo。同社が次にどんな製品を出してくるのか、いまや業界全体が注目しています。

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