スマホメーカー栄枯盛衰~山根博士の携帯大辞典

高級志向のNubiaブランドの活躍がZTE製2画面スマホ「M」を生んだ

文●山根康宏 編集●ゆうこば

2017年10月22日 12時00分

 また、ZTEに対するブランドも若い世代には弱く、価格以外での差別化を取り組むべき新しいブランドとして立ち上げました。それがNubiaです。

 Nubiaのコンセプトは「Be Yourself」。スマートフォンを活用して日々楽しむユーザーのために、高品質・ファッショナブルな製品展開を目指したのです。つまりZTEの製品が一般向けならば、Nubiaはより上のモデル、高級・高性能を目指した製品でした。

 製品デザイナーはイタリアのStefano Giovannon氏を採用し、機能性とデザインを融合した美しくかつ躍動的なスマートフォンが誕生したわけです。

 12月26日に発表された「Z5」は5型フルHD解像度(1080×1920ドット)ディスプレーを採用しながらも、本体はベゼル幅を2.6mmに抑え、幅が68.8mm、厚さは当時最薄クラスと言える7.6mmというスリムな大きさ。

 ZTEというイメージを大きく払しょくする美しいデザインでした。ディスプレー下のホームボタンはソフトキーで、タッチすると赤く点灯する丸いキーはNubiaのコーポレートカラーの赤と同じです。

Nubia初の製品である「Z5」

 カメラは1300万画素、F2.2と明るく、Dolby Digital Plusに対応するなど音にもこだわっています。価格は3456元とシャオミのハイスペック端末の1999元より1.5倍以上も高く設定されました。それでも業界に新風を巻き起こしたNubia人気は高まり、Z5は一定の売り上げを記録したといいます。

 2013年には早くもロシアでの販売が決まり、中国以外へも販路を広げます。その後は台湾やヨーロッパへもZTEブランドとは別の製品として展開をしていきました。

 Z5を小型化した「Z5 mini」もこの年登場。ボディーカラーをパステル化し、4.7型HD解像度(720x1280ドット)ディスプレーを搭載し価格を引き下げ、ユーザー層拡大を目指しました。そして、Z5の登場から1年後には「Z5S」と「Z5S mini」も投入されます。

 2014年に入ると、Z5シリーズのデザインスピリットを継承しつつ、ディスプレーサイズを6.4型フルHD解像度と大型化させた「X6」を発売しました。

 カメラは背面・正面ともに1300万画素で、大きい画面に自分の顔をキレイに表示できるセルフィー利用もターゲットにした製品です。メモリー2GB版が2999元、3GB版は3999元と価格は引き続き高価でしたが、同類の製品が他社にはないこともあり、大きな話題となります。

 そして、同年夏にはZ5シリーズの後継モデルとして「Z7」「Z7 max」「Z7 mini」の3モデルを発表。そもそもZ5の名称は同年に出てきたiPhone 5を意識したものだったと考えられます。

 しかし、間に6の型番のX6を出したことからか、Z5のつぎはZ7と数字を2つ飛ばしてきました。もしかするとX系列は偶数、Zは奇数、というナンバリングを考えていたのかもしれません。

 Z7はディスプレーが5.5型と大型化され、解像度もQHD(1440×2560ドット)と高められました。チップセットはSnapdragon 801で、堂々たるハイスペック端末と言えます。

 また、カメラは1300万画素ですが、最大20分の長時間露光にも対応し、星空撮影ができることも大きな売りとしていました。他社に先駆けて超高解像度なディスプレーを採用したのは、星の軌跡の写真をそのまま見ることも考えたのでしょう。価格は3456元でした。

ディスプレーを大型化した「Z7」

 このZ7のディスプレーをフルHD解像度にしたモデルが「Z7 Max」で価格は1999元。そして、5型フルHD解像度の「Z5 mini」は1499元。超ハイエンドモデルで市場の話題をさらいつつ、普及価格モデルも投入するあたりはうまい戦略と言えるでしょう。

 この2つのモデルもチップセットはSnapdragon 801を搭載。決して廉価版ではなく、あくまでもハイエンドモデルを展開するNubiaの下位に位置する製品なのです。

 ところで、この年には実験的な製品が登場する予定でした。「W5」はWindows Phone 8.1搭載のスマートフォンで、X6と同様に両面1300万画素のカメラを搭載するモデルとして、NubiaのSNSアカウントで写真が公開されました。

 しかし、結局実機が登場することはありませんでした。Nubiaワールドを拡大する戦略的なモデルだったのでしょうが、Windows Phoneは普及しないと早めに見切りをつけたのでしょう。なによりもAndroid市場の競争がし烈だったことから、他OSまで手を回す余裕もなかったと考えられます。

シリーズ展開を増やし、ZTEの2本目の柱に

 2015年に入ると、スタイルと使い勝手を両立した美しいスマートフォン「Z9」を発表しました。5.2型フルHD解像度ディスプレーを採用したZ9の特徴はベゼルレス。ディスプレーの左右は本体の横幅いっぱいまでに広がっています。

 そして、側面にまで達したディスプレーは、指先でのスワイプやタッチ操作に対応する新しいUIを搭載。Z9をにぎって側面をタップ、側面をスワイプといった操作でアプリを起動できました。本体を横にして両手でにぎり、側面4ヵ所に指先が触れるとカメラが起動するなど、操作体形も自然にできるものを搭載しました。

 Z9の本体サイズは147.4×68.3×8.9mmと、普通のスマートフォンよりもやや縦長になっています。最近(2017年)流行し始めた18対9のワイドディスプレー採用端末にも類似した形状です。

 2017年秋に発表した「AXON M」(日本は「M Z-01K」)は左右横開き型の折りたたみ端末ですが、Z9のように左右のベゼルがないディスプレーを2枚組み合わせれば、より完璧な2画面端末ができあがりそうです。そもそもZ9のようなベゼルレス端末を早い時期から開発してきた結果が、AXON Mを生み出したとも言えるでしょう。

左右ベゼルレスで美しいZ9

 2015年には「Z11」を発表します。ここまで中国メーカーを含め、製品のモデル名はひと桁の数字のものばかり。これはiPhoneを意識した製品名を付けているからでしょうね。しかし、Nubiaは早々と2桁に数を乗せ、独自の展開を見せます。

 Z11はZ9のディスプレーを5.5型にサイズアップ。Snapdragon 820を搭載。Z9では指紋認証センサーの有無で2つのモデルがありましたが、Z11はセンサーを標準搭載としました。

 シリーズ展開は5型ディスプレーの「Z11 mini」、6型ディスプレーの「Z11 Max」の2モデルに加え、時期をずらして5.2型の「Z11 mini S」も登場するなど、豊富なバリエーション展開を誇ります。

 この年はグローバル展開を再強化するための戦略的モデル「Nubia My Prague」も投入されました。芸術の街であるプラハの名前を冠したこのモデルは、Nubiaのスタイリッシュかつストレスなく利用できる高い性能をアピールする製品です。

 NubiaはZ7以降、海外展開を縮小して中国展開を強化していましたが、このNubia My Pragueから再び海外市場へ本格的な進出を始めたのです。

 翌2016年は特定市場を狙ったモデルが登場します。MediaTek製のチップセットを搭載する「N1」が発表。

 5000mAhバッテリーに、前後1300万画素カメラを搭載。東南アジアなどでセルフィー人気が高まる中、バッテリー駆動時間も伸ばした製品です。価格も1699元と低め。SNS時代に最適の製品として新興国での拡販を目指したモデルでした。

 そして、2017年。1300万画素のデュアルカメラを搭載した新たなシリーズ「M2」を発表。正面カメラも1600万画素とし、パーフェクトなカメラ端末を目指します。

 また、セルフィー端末N1の後継機「N2」はフロント1600万画素カメラと、さらに自撮り機能を強化しています。ミドルハイクラスに2つのカメラ強化モデルを投入することで、Nubiaの製品イメージも変わっていきます。

デュアルカメラモデルとなったM2。カメラを強化していく

 フラグシップモデルの最新製品は6月に「Z17」を発表。Z11から数字は大きく飛び、17となりました。5.5型ディスプレー、Snapdragon 835、メモリーは最高モデルで8GB、1200万画素デュアルカメラ、正面1600万画素カメラとすべての性能でスキのないモデルとなりました。8GBで3999元の価格はスペックを考えると、むしろコストパフォーマンスが高いかもしれません。

 このようにNubiaはハイスペックの「Z」、カメラ特化の「M」、セルフィー端末の「N」の3つを柱に製品展開を広げています。2017年10月にはZ11の派生モデルとして「Z11s」も発表。後継モデルではなくS=Slimで、18対9のアスペクト比のディスプレーを搭載します。

 ZTE本体のフラグシップモデル「AXON」シリーズがいまひとつグローバルでメジャーになり切れない中、ハイエンドに特化したNubiaは着々とモデル展開を拡大し、ブランド認知度も広げています。

 NubiaはZTEと別会社のために海外の量販店などでは別扱いとされています。しかし、ここまで優れた製品が多い今、ZTEの最上位モデルと言う販売戦略をとるべきなのかもしれません。Nubiaの今後の展開が気になります。

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