スマホメーカー栄枯盛衰~山根博士の携帯大辞典

すべてタフネスなのが当たり前な「キャタピラー」印のスマホの魅力

文●山根康宏 編集●ゆうこば

2017年10月31日 15時00分

 防水防塵性能はIP67相当に対応、米軍納品規格のMIL-STD-810Gにも対応、マイナス20度でも利用が可能とのこと。ディスプレーはもちろんゴリラガラスに覆われており、濡れた指先でも操作できます。

CATブランドを身にまとった「CAT B15」

 ディスプレーサイズは4型、解像度は480×800ドットですが、本体サイズは125×69.5×14.95mmとかなり大柄。重量も170gと重くなっています。本体をアルミ合金で仕上げ強度を増したおり、あえてゴツイ製品に仕上げているわけです。

 電源、音量上下ボタンは黄色いパーツで仕上げ、各種端子はゴムキャップでおおうなど、アウトドア向けと言うよりも建設現場向け、そう思えるほど仕上げはしっかりしています。

 おもな基本スペックはチップセットがMT6577(1GHz、デュアルコア)、メモリー4GB、ストレージ512MB。バッテリーは当時としては大型な2000mAh。カメラは背面500万画素、正面が30万画素。価格は約330ユーロとスペックに対して高価でしたが、どんな環境でも使える製品と考えれば相応と言えました。

 当時はすでに中小の複数社からタフボディーのスマートフォンが販売されていました。しかし、中には防水性能が弱いなど、本来の目的である防水防塵機能に難のある製品もあったのです。

 また、見た目だけはタフで、実際は落とすとすぐに壊れてしまう、なんて製品も無名メーカーの中にはありました。CATの製品はその名前を見るだけで本格的なタフ仕様であることがわかりますし、ユーザーが安心して使えるブランド力を持っています。ニッチなユーザー向けでしたが、CAT B15は世界中の多くのメディアに取り上げられるほど話題になりました。

 ちなみに、CAT B15のあとには「iPhone 5S」「iPhone 4」「iPad Air」、そしてサムスン「GALAXY S4」用のタフ仕様ケースも出しています。自社ブランドスマートフォンだけではなく、メジャー端末向けのケースを出すことでCATブランドの拡大を目論んだのでしょう。これらのケースにももちろんしっかりとCATのロゴが入っています。

 翌2014年には「CAT B15 Q」を発表します。チップセットがMT6528M(1.3GHz、クアッドコア)、ストレージが1GBに強化されたモデルで、製品名の「Q」はQuadcoreから取ったものでしょう。

 本体デザインは変わらず中身だけをスペックアップしたのは、基本設計がしっかりしていたからだと思われます。またいたずらに見た目を変えないほうが、CATスマートフォンのイメージを消費者に浸透させる効果も高かったはずです。

スペックアップを図ったCAT S50.ディスプレーも大型化

 さて、CATブランドの端末はほかにもフィーチャーフォンが存在しました。2014年下半期からは、フィーチャーフォンの型番を「B」とし、スマートフォンは「S」と区分化することを決定。その最初の製品となる「CAT S50」が登場します。

 CAT S50はB15 Qから大きくスペックアップしたハイエンド端末。ディスプレーは4.7型HD解像度(720x1280ドット)、チップセットはSnapdragon 400、メモリー2GB、ストレージ8GB、カメラは背面800万画素、正面30万画素。2630mAhのバッテリーを搭載します。

 B15シリーズでは物足りなかったユーザーのみならず、業務用に採用する企業にとっても複数のアプリを入れて活用できる実用性のある製品になったのです。また、B15シリーズは3Gのみ対応でしたが、S50はLTE通信が可能に。価格は499ドルでした。

ラインナップを拡大、赤外線カメラ搭載の本格モデルも

 2015年にはS50の下位モデルとして、「CAT S40」「CAT S30」が登場します。どちらもチップセットはSnapdragon 210、メモリーは1GB。ストレージはS40が16GBで、S30が8GB。ディスプレーもS40はS50と同じ4.7型ながらも解像度は540×960ドットに下げています。

 S30は4.5型840×854ドット。そして、カメラはリアが800万画素、フロントが200万画素と、登場時期が2015年になったことでS50よりも性能アップしました。

 タフボディーの製品は、スマートフォン市場では特定ユーザー向けのものです。しかし、スペックを変えて3モデル体制としたのは、ターゲットユーザー層のさらなる拡大を目指したものだったのです。

 一般消費者がタウンユースにも使う、そんなシーンもおかしくないはず。スーツのポケットからCATのスマートフォンを取り出せば、訪問先ではそれだけでも話題になります。

 そして、日常的に使いながら地面に落としてしまっても内部は破損しにくいため、安心してスマートフォンを使うこともできます。このころからCATのスマートフォンが家電量販店に展示されるケースも増えていきました。

 2016年には、究極のアウトドア向け製品として「CAT S60」が登場します。スマートフォンの基本スペックはSnapdragon 617(1.2GHz、オクタコア)、メモリー3GB、ストレージ32GB、4.7型HD解像度ディスプレー、背面1300万画素、正面500万画素、3800mAhバッテリーを搭載。他社のミッドハイレンジ相当のスペックとなり、メイン端末として使っても十分おかしくないだけの性能を誇ります。

赤外線サーモカメラ搭載のCAT S60はプロユースもターゲット

 しかし、CAT S60はそれだけの製品ではありませんでした。本体にFLIRのサーマルイメージングカメラを搭載しているのです。つまり、スマートフォンを使って簡単に熱分布の測定が可能になります。

 さすがに、業務用の専用カメラには性能が劣りますが、建物を撮影して温度分布を手軽に確認する、なんて用途にも使うことができるのです。S30/S40/S50はコンシューマー向け製品のバリエーション展開モデルであり、S60はそれとは別のプロ向け製品というわけです。

 このように最大4機種ものラインナップを誇るまでに成長したCATスマートフォン。これに加えてフィーチャーフォンも出していますから、CATの製品の中からだけでも自分好みの製品を選べます。

 あとは、製品の定期的なマイナーチェンジやアップグレードを続けていけば、固定ファンをつかむこともできるでしょう。

 2017年には2モデルのバージョンアップと新たなカテゴリーの製品を発表します。スマートフォンはS30とS40の後継機となる「CAT S31」「CAT S41」をリリース。

 S41はHelio P20(2GHz、オクタコア)、メモリー3GB、ストレージ32GB、5型フルHD解像度(1080×1920ドット)ディスプレー、背面1300万画素カメラ、正面800万画素カメラ。

 S31はSnapdragon 210(1.3GHz、クアッドコア)、メモリー2GB、ストレージ16GB、4.7型HD解像度ディスプレー、背面800万画素カメラ、正面200万画素カメラとなります。

CAT S41(左)とCAT S31(右)は同時期にリリース、スペックがさらに高まった

 これらの新製品はミドルハイレンジ、エントリーモデルとして幅広いユーザー層をカバーできるでしょう。また、S41にはOTGケーブルを使い、ほかのスマートフォンを充電する機能が搭載されましたが、自分のバッテリーレベルをゼロにしないよう、出力のリミットをかけることもできます。

 また、新しいカテゴリーの製品として登場した「CAT T20」はWindows 10搭載のタブレットです。もしかするといずれは、CATブランドのノートPCも出てくるかもしれません。タフ仕様のPCは、パナソニックが定期的に製品をリリースするなど一定の需要があります。

 新製品の投入ペースは1年に1~2機種と少ないものの、CATの製品はデザインの良さと絶対的な安心感をユーザーに提供してくれます。

 今後はS60のように特殊なセンサーを搭載したモデルもぜひ定期的に投入してほしいもの。そして日本でもS60の販売が決まりましたが、ほかのモデルもぜひ日本への正規販売をお願いしたいものです。

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