「ライブ配信メディア完全解剖 〜過去と今、そして未来へ〜」

「e-sports」「投げ銭」がライブ配信メディア2018年の主流になる

文●ノダタケオ(Twitter:@noda

2018年01月04日 19時00分

 特にTwitchはこれまで海外におけるゲーム実況に特化したプラットフォームとして絶対的な人気がありつつも、日本ではその人気はまだまだ低いものでしたが、第70回記事で紹介をした「Twitch Prime」によって配信者も視聴者もTwitchへ流れていくきっかけにもなり得るのかもしれません。

 一方の「OPENREC.tv」もTwitchが海外から日本への勢いを伸ばす前に、日本におけるゲーム実況に特化したライブ配信プラットフォームとして先行しており、その地位を確実なものにしつつあるように感じます。

 これまでのような「ニコニコ生放送」「YouTube Live」に多くの配信者が集まっていた賑わいの様子は、「OPENREC.tv」「Twitch」にも広がり、全体的な配信の賑わいの様子もこれから少しずつ代わっていくのかもしれません。

 ゲーム実況のコンテンツが集まるプラットフォームは「高画質」かつ「低遅延」でライブ配信ができることはもう必須であり、当たり前のこと。「高画質」「低遅延」といった「快適に利用(視聴および配信)できるプラットフォーム」としての競争はもう終わり、これからは「配信者誰もができる・わかりやすいマネタイズの仕組み」や「配信者が公の場で広く活躍できる(目標となる)場所があること」が求められてきています。

 「ニコニコ生放送」「YouTube Live」だけでなく、「OPENREC.tv」や「Twitch」も、今後、日本におけるゲーム実況に特化したライブ配信プラットフォームとしての知名度を伸ばしていくキーワードは、やはりゲーム実況配信の延長線上にある「e-sports」です。

 ただし、e-sports自体の認知度を上げる必要があるだけでなく、日本における様々な法令をクリアする必要があります。このハードルを越えることができれば、これまで以上にe-sports文化が国内で根付き、ライブ配信プラットフォームに「e-sportsという配信ジャンル」による活気をもたらすものになるでしょう。

「投げ銭」的な仕組みそのものの認知が広がっていくのか?

 もうひとつ注視していくべきは「マネタイズ」「投げ銭」の仕組みがさらに広がっていくのかということ。特に、海外(中華圏など)から生まれた「17 Live」や「Live.me」といったライブ配信プラットフォームが日本へ進出し、それに対抗する「SHOWROOM」との戦いです。

 これらのプラットフォームには「マネタイズ」、視聴者がギフトアイテムを購入して配信者へ投げることによって支援をすることができる「投げ銭」的な仕組みを備えています。また、芸能を職とする人だけでなく、これから芸能を職としたい人といったいわゆる「タレントやモデルの卵」が集まる場所でもありますし、ファッション誌やテレビ番組などとのタイアップやプラットフォーム自身の広告塔になれるような活躍の場を作ることによって、新しい配信者の発掘にもつながっていきます。

 ライブ配信をすることによって「叶えたい夢を叶える」プラットフォームはこれからも日本国内からだけでなく、「17 Live」や「Live.me」と同じように海外から日本へ進出してくるところは2018年ももうしばらく出てきそう。

 特に、日本へ進出してきたプラットフォームたちは、海外での勢いを力に、日本での知名度アップに躍起です。有名なタレントやモデルだけでなく、ソーシャルメディアの世界で若い人たちに人気があるインフルエンサーを取り込み、それによって、一般の人たちにもプラットフォームを知ってもらう施策をさまざまうってきています。その効果のほどは、もうしばらく様子を見てみないといけませんが、その分の費用も大きなものかもしれませんし、思ったほどの効果が出なければ即座に身を引くのも早い可能性も。

 ライブ配信メディア黎明期のときのような「Ustream」と「ニコニコ生放送」「ツイキャス」の三者のプラットフォームが競ったときのような3~4年ほどの長いスパンではなく、1~2年ぐらいの短いスパンでこの戦いの結果が見えてくるようにも感じます。

5つのプラットフォームに求めるモノ・必要なコトを備えるサービスが優位的に

 第71回記事では個人の配信者が「ライブ配信メディアのプラットフォームに求めるモノ・必要なコト」は5つであることに触れました。

(1)快適に利用(視聴および配信)できるプラットフォーム
(2)配信者誰もができる・わかりやすいマネタイズの仕組み
(3)配信者を育成する仕組み
(4)運営によって配信者が褒められる仕組み
(5)配信者が公の場で広く活躍できる(目標となる)場所があること

 この5つを備えるプラットフォームがおそらく現在のライブ配信メディアのプラットフォーム同士の戦いに最も優位であると感じています。そのプラットフォームはずばり「YouTube Live」です。

 YouTube Liveはもともと動画共有サービス「YouTube」としての知名度は日本だけでなく、世界的にもありますし、昔に比べて「快適に利用(視聴および配信)できるプラットフォーム」となり、「配信者を育成する仕組み」も「運営によって配信者が褒められる仕組み」も「配信者が公の場で広く活躍できる(目標となる)場所」もあります。そして、広告収入やSuper Chatといった投げ銭的なマネタイズの仕組みも持っています。わかりやすいマネタイズの仕組みかどうかは議論が分かれるところですが、いずれにせよ、他と比べると、最も「バランス」が良いライブ配信メディアプラットフォームであるといえそう。

 この「5つの求められるモノ、必要なコト」のバランスがうまくとれてくるプラットフォームは、2018年、日本において最も知名度を上げることができるのではと感じています。

ライブメディアクリエイター
ノダタケオ(Twitter:@noda

 ネット番組の企画制作・配信、ライブ配信メディアとソーシャルメディア関連の執筆などその活動は多岐にわたる。イベント等のマルチカメラ収録・配信や、自治体・企業におけるソーシャルメディアを活用した情報発信サポート業務などもこなす。タイ王国とカフェ好き。

mobileASCII.jp TOPページへ

mobile ASCII

Access Rankingアクセスランキング