スマホメーカー栄枯盛衰~山根博士の携帯大辞典

価格だけでは消費者はスマホを買わない フランスArchosが使ったブランド力向上方法

文●山根康宏

2018年01月14日 12時00分

 上位機種の「Oxygen」、中堅ラインの「Platinum」そして価格を抑えた「Titanium」の3つのライン。各モデル名にはディスプレーサイズを表す数字が付与され、複数のモデルが展開されました。たとえばTitaniumは「Archos 40 Titanium」「Archos 45 Titanium」「Archos 50 Titanium」「Archos 53 Titanium」の4モデルを投入。それぞれディスプレーは4型、4.5型、5型、5.3型です。

最初の参入モデルの一つ、Archos 50 Titanium

 このように同一シリーズ・複数画面展開は過去にタブレットやポータブルオーディオプレーヤでも同じ製品展開をしました。多くのユーザーニーズに応えるためには、本体サイズも複数用意するというラインナップ攻勢で後発ながらもこの年は8機種を一気に投入します。

 2014年にはいるとラインナップをさらに増やしていきます。まずは高スペックかつカラフルなボディーの「Diamond」を投入。「Archos 50 Diamond」メインカメラは1600万画素にしつつ、Snapdragon 615の採用で価格を抑え、5型フルHDディスプレー搭載のバランスの良いミッドハイレンジ製品です。また「Helium」シリーズとして「Archos 50 Helium」も投入。こちらもSoCはクアルコム製で、Snapdragon 400に5型HDディスプレーを採用しました。

 この年の変わり種機種として登場したのが「Archos 40 Cesium」です。2014年というとWindows Phone 8.1スマートフォンがノキア以外からも数多く登場ましたが、Archosもこの市場に果敢に参入。4型480x800ドットディスプレー、Snapdragon200、メモリ512GB、ストレージ4GB、500万画素カメラの低価格機で市場受けを狙いました。しかしWindows Phone全体の販売数は伸び悩み、Archosも同OS採用機はこの1機種で終わっています。

Windows機のArchos 40 Cesiumも投入したが、結果として失敗に終わった

製品ラインナップを見直し、新たな戦略で総合スマホメーカーに

 2014年には前年モデルのマイナーチェンジモデルも投入。「Archos 50b Platinum」「Archos 50c Oxygen」のように、数値の後にbやcの文字を付与し、後継機であることを表しました。しかしこの型番は消費者にはわかりにくいものだったと思われます。なおLTE対応モデルの本格的な導入も開始。この年は合計で11機種を発売しました。

 2015年は前年モデルの繰り越しもあり、3機種に留まりました。夏に「Archos 50d Helium 4G」を出すものの、アルファベットでの区分化では製品特徴もわかりにくくなってしまいます。そこで下半期からは、性能に特徴あるモデルは「ディスプレーサイズ+アルファベット」のモデル名を廃止しました。

 9月に投入された製品はDiamondシリーズ「Archos Diamond Plus」と「Archos Diamond S」の2機種。どちらも1600万画素カメラを搭載したカメラ強化モデルと言う位置づけで、前者は5.5型フルHDディスプレー、後者は5型HDディスプレーを搭載。SoCはどちらもMT6753を採用するなど、基本スペックは揃えています。カメラ需要が高まるトレンドをいち早く取り入れるあたりは、中堅メーカーの動きの速さの表れと言えるでしょう。

カメラ機能を大きな売りとしたDiamond Plus

 2016年はカメラを2000万画素にアップした「Archos Diamond 2 Plus」を発売。一方では新しい低価格モデルとして「Cobalt」シリーズを加え、5型の「Archos Cobalt 50」と5.5型の「Archos Cobalt 50 Plus」を発売しました。後者は本来なら「Cobalt 55」とするべきでしょうが、同じラインの製品であることをアピールする製品名となっています。

 この年も3モデルに留まっていますが、新規参入した2013年から立て続けに多くのモデルを投入し、製品の差別化が難しくなってしまったことの反省を受け、「カメラ」「コスパ」という2つに製品ポートフォリオを絞り、それ以外は旧モデルで引き続きカバーする、というマーケティング戦略を取ったと考えられます。

 2017年は製品戦略を大きく変え、ハイエンドモデルを含む大量の製品を投入します。カメラスマートフォンDiamondシリーズからは「Archos Diamond Alpha」が登場しますが、これはNubia(ZTE)の「Z17 mini」がベース。また「Archos Diamond Gamma」は同じく「Nubia M2 Play」の派生モデルとなります。このうちDiamond Alphaはデュアルカメラを搭載。ベースモデルのZ17 mini同様、最高のカメラ端末に仕上がっています。

 またニッチなユーザー向けとなりますが、IP68の防水防塵に対応し衝撃性に優れたラバー系樹脂で側面を覆った「Archos 50 Saphir」も投入。このSaphirシリーズはタブレットも登場し、ビジネス市場への売り込みも図っています。

 そして11月に発売された「Archos Diamond Omega」はSnapdragon 835採用のフラッグシップモデルとなります。カメラはリア、フロントどちらもデュアルと4つを搭載。それぞれ2300万+1200万、500万+500万という組み合わせ。ディスプレーはアスペクト比が18:9のワイドサイズで、5.7型1080x2040ドット、左右ベゼルレスの美しい仕上げになっています。このハイエンドモデルもベースはNubia。Nubiaのフラッグシップ「Z17s」がベースになっています。

他社のフラッグシップモデルと並ぶ性能のDiamond Omega

 Archosはミッドレンジを中心に手ごろな価格のモデルを多く出していきました。しかし価格だけではもはや消費者はそのメーカーを選びませんし、ブランド力も高まりません。そこで上位モデルはNubiaとコラボすることで、Archosシリーズ全体の魅力を引き上げる戦略を開始したのです。2018年も引き続きNubia系とコスパに優れた製品をバランス力展開していくことで、Archosは本格的に拡販を目指していきます。

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