先日1月11日、iPhone XのAnimoji(Face Tracking with ARKit)で表情認識し、YouTube、Periscope、Mirrativなどのプラットフォームでライブ配信が可能なバーチャルライブアプリ「にじさんじ」というアプリが話題になりました。
この「にじさんじ」というアプリで実現されているのがまさに「バーチャルYouTuber」の延長線上にある、擬似的・仮想的なキャラクター(アバター)が代わりに前面へ出てくれるライブ配信の形。パソコンを必要とせず、スマートフォン一台で手軽に実現できる「バーチャルライバー」の時代は、実はそう遠くない未来にやってくるのかもしれません。そしてこれをきっかけに「バーチャルYouTuber」的な仕組みがさまざまなライブ配信プラットフォームのアプリにも広がっていきそうな予感がするのです。
プレスリリースによれば、このバーチャルライブアプリ「にじさんじ」はLive2D(ライブツーディー)と呼ばれる「イラスト・マンガ・アニメなどの2D画像を、 2D独特の形状や画風を保ったまま、立体的に動かすことのできる独自の表現手法」と、iOS 11から利用可能になったFace Tracking with ARKitによって、iPhone XのTrueDepthカメラで顔を認識して、表情や仕草をリアルタイムでキャラクターの動きへ反映することができる仕組みを組み合わせた形で実現されているようです。
私が最も気になるのは、YouTubeやPeriscopeなどのプラットフォームでライブ配信が可能というところ。現在、サービスは限定的な公開で、近日中に配信者用公式リリースを予定としています。
バーチャルYouTuber」のライブ配信は、編集されたアーカイブ動画よりも楽しい
2017年12月頃からは「バーチャルYouTuber」が大きな話題となりました。実在する人間ではなく、キャラクターが画面の向こうの演者として登場し、人間の声が当てられた動画がYouTube上で公開されています。いま最も人気があるのは「キズナアイ」というキャラクターで、世界初のバーチャルYouTuberと言われています。
この「キズナアイ」さんはいつもは編集されたアーカイブ動画をYouTubeで公開しているバーチャルYouTuberなのですが、既にYouTube Liveで何回かライブ配信をしています。
ただ、YouTubeへアップロードされるアーカイブ動画は、予めストーリーが決まっていたり、編集がされているものなので、私個人的には正直、親近感をあまり感じることができなかったのです。
しかし、ライブ配信になると、ライブ配信ならではのコメント機能によって寄せられる視聴者からのメッセージに返事をするところや、コメントに対するリアクションで腕を上げたり手を振ったりする仕草を見ていると、なんだか「キズナアイ」のキャラクター性に惹かれてしまいそう。
アーカイブ動画より、ライブ配信のほうが「作られた」感がなく、なんだか、本当に画面の向こうで人がしゃべっているかのようなバーチャル性がすごいあるような印象を受けます。そして、予測不可能な展開によるリアクションも楽しいですし、見てて意外に面白いのです。
ライブ配信の世界では、SHOWROOMのように視聴者がアバターとなって参加する仕組みが既に存在しています。しかし、視聴者ではなく画面の向こうの配信者(演者)がキャラクターとして現れるのもライブ配信の楽しみとしてアリ、なように感じます。
パソコンを必要とせずスマホ一台で実現できることはものすごく大きい
自分撮りのライブ配信ではなく、擬似的・仮想的なキャラクター(アバター)が代わりに前面へ出てくれるようなライブ配信は、バーチャルライブアプリ「にじさんじ」のように、スマートフォン一台で簡単にできることによって、これからさまざまなライブ配信プラットフォームへも広がっていくように感じます。
なにより、スマートフォン一台で簡単にでき、パソコンを必要とせずとも実現できることはものすごく大きいのではないでしょうか。
また、口が動いたり、ウインクができるだけでなく、腕や手の動きも反映できるようになると、より親近感も湧いてくるような気がします。ただ、擬似的・仮想的なキャラクターが前に出る分、より一層、ライブ配信における「話術のテクニックが求められる」のかもしれません。
そういった意味では、最初のうちは、バーチャルライバーは顔出しをしたくない人のためのライブ配信の形というより、ライブ配信に慣れた人のための新しいライブ配信での遊び方として広がっていくのかもしれません。それがさらに広がっていけば、今度は顔出しをしたくない一般の人も使うようになるのかもしれません。
バーチャルライバーが多く生まれてくると、女性のキャラクターだけでなく、イケメンの男性や、渋いオジサン的なキャラクターなど、キャラクターのバリエーションの充実も必要になってきます。
もしかすると、SHOWROOMでは相手の配信者に合わせてアバターを買う視聴者がいるように、配信者が自分自身のオリジナルを求めて、有料でキャラクターを買えるような仕組みがビジネスモデルとして生まれ、結果的に、制作側のマネタイズ手段にもなる可能性もありそうです。もしくは、配信者が自由に自分のアバターを簡単に作れて、ライブ配信の映像上に乗せるような仕組みがあっても良いのかもしれません。
「バーチャルYouTuber」のように、擬似的・仮想的なキャラクター(アバター)が代わりに前面へ出てくれるようなライブ配信の形はまだまだこれからです。個人的にも面白そうな印象を感じています。
ただし、今はまだ目新しいから注目が集まっていますが、誰でもできるようになると飽きられるのが早い可能性も。いかに長く遊んでいける仕組みが生まれるかもカギになりそうです。
ライブメディアクリエイター
ノダタケオ(Twitter:@noda)
ネット番組の企画制作・配信、ライブ配信メディアとソーシャルメディア関連の執筆などその活動は多岐にわたる。イベント等のマルチカメラ収録・配信や、自治体・企業におけるソーシャルメディアを活用した情報発信サポート業務などもこなす。タイ王国とカフェ好き。