「ライブ配信メディア完全解剖 〜過去と今、そして未来へ〜」

LINE LIVEが予想以上に苦戦している その理由

文●ノダタケオ(Twitter:@noda

2018年02月01日 19時00分

https://linecorp.com/ja/pr/news/ja/2017/2005 より

 昨年12月、LINEはサービス開始から2周年を迎え、利用動向などをまとめた「数字で見るLINE LIVEの2017年」と題したプレスリリースを公開しました。このプレスリリースにある「一般ユーザーの視聴/配信時間」というグラフに注目をしてみます。

 このグラフは緑が「視聴数」、青が「配信数」とした、一般ユーザーの視聴および配信の時間帯推移を表したもの。残念ながら、このグラフには縦軸に数値が書いていないので、実際どのぐらいの視聴数と配信数があるのかが具体的にはわかりませんが、少なくともサービスの「賑わい」度はここからわかります。

 まず、緑の「視聴数」を見ると、夜の時間帯に大きくグラフが持ち上がっています。LINE LIVEでの公式チャンネルや企業チャンネルによるライブ配信は19~21時台に集まっていることから、芸能人などの著名の人が登場する人気のコンテンツに、多くの人が集まったことによって、視聴数の数値が上がっている、と推測できます。「視聴する人の賑わい」はおそらく他のライブ配信メディアのプラットフォームに比べるとLINE LIVEは大きいのかもしれません。

 一方、青の「配信数」。通常、ライブ配信メディアのプラットフォームは、配信数も視聴数と同じように、跳ね上がる大きさの大小はあれど、おおむね21~23時台を中心に上がるはずです。しかし、このグラフを見る限りでは、LINE LIVEにおける配信数の最小値と最大値の差は(視聴数の最小値と最大値の差と同じようには)大きく変化をしていません。

 LINE LIVEでは具体的な視聴数や配信数を公式のデータからは読み取ることはできませんが、これらのプレスリリースとは別に、外部のサイトでいまその時点にライブ配信をしているチャンネルのランキングを知ることができ、それぞれのプラットフォームで、おおむね、いまどのぐらいの人がライブ配信をしているのかを読み取ることができます。

 もちろん、それぞれ「公式に公開されているデータではないので、実際の数値とは異なる」ことを念頭においた上で見てみると、昨日1月31日の22時30分頃にいくつかのプラットフォームにおける現在ライブ配信中の数を調べてみると以下のようになりました。

1月31日22時30分ごろのプラットフォームごとのライブ配信数

・ツイキャス 5700ほど
・ニコ生 3800ほど
・LINE LIVE 360ほど
・ふわっち 350ほど
・OPENREC.tv 250ほど
・Live.me 130ほど
・ドキドキLIVE 130ほど
・Stager Live 70ほど

 普段から「配信する人の賑わい」が感じられるツイキャスやニコ生はやはりその数は圧倒的で、ツイキャスのほうが少し分があるように読み取れます。一方、LINE LIVEはツイキャスやニコ生に比べるとひと桁少ないことがわかります。LINE LIVEの「思ったよりLINE LIVEがきていない(人気がない)」という、なんとなくの感覚は、あながち間違いではないのかもしれません。

見ているだけの若い世代の人たちにも「ライブ配信することの楽しさ」を伝える必要

 LINE LIVEはツイキャスやニコ生に比べ、「配信をする人の賑わい」が感じられない理由のひとつには「LINE LIVEのアプリはコミュニケーションアプリLINEのアプリとは別だから」というのもあるでしょう。

 これは、LINE自身も認識をしていて、先の事業戦略発表会「LINE CONFERENCE 2017」でLINEアプリ内でLINE LIVEに配信される動画の視聴やコメント投稿が可能な「LINE LIVEプレーヤー」を搭載することを発表しています。将来的に、LINE LIVEアプリはLINEアプリへ統合されるような流れになっていくと予想されます。

 理由のもうひとつは「世代のパイが小さい」ことも考えられます。先にも挙げたように、LINE LIVEは「年齢層は19歳までの配信者の割合が69.3%と若年層に支持」されたサービスです。逆に言えば、それより上の年齢層の配信者は他のプラットフォームを利用していることも意味します。

 それはそれで、LINE LIVEは「若い配信者たちが集まるプラットフォーム」としての立ち位置としてアリなのですが、ただ、実際ライブ配信をしてみても、どうやったらいいのか、なにを話してみればいいのか、見ている人とどのように接したらよいのか、よくわからない若い人たちがいることも確かです。

 如何に「ライブ配信することの楽しさ」を伝えることができるかが、これからのLINE LIVEにおける個人のライブ配信をする人たちを増やしていくためのポイントとなるように感じています。本連載第71回記事でも触れたような「配信者を育成する仕組み」がなんらかのカタチで必要だと思うのです。

LINE LIVEで始まっている動画広告にどのぐらい受け入れてくれるのか

 「配信する人の賑わい」はまだまだ少ないLINE LIVEですが、「視聴する人の賑わい」は他のプラットフォームに比べると優位性があります。ただ、最近、感じているのは、「視聴する人の賑わい」の低下のおそれです。その理由は「動画広告」にあります。

 昨年12月頃よりLINE LIVEではアプリでライブ配信を視聴しようとしたとき、冒頭に「動画広告」を目にすることが多くなりました。

 こうした動画広告はYouTubeでも目にすることが多いのですが、編集してアップロードされた動画を視聴する場合と、LINE LIVEのようにライブ配信を視聴する場合では、冒頭に動画広告が流れる仕組みはどちらも同じでも、意味合いがかなり異なります。

 YouTubeの動画を視聴する場合は、いくら動画広告を長い時間見たとしても、見たい内容はすべてみることができるのですが、ライブ配信の場合の動画広告は「いますぐ見たいのに見せてくれない」ことになります。この広告が流れている間にも「見たい(配信の)内容が進行してしまっている」のです。これによって、ライブ配信の視聴者はストレスを感じる人も少なくありません。

 これは、日本におけるライブ配信メディアのプラットフォームで人気だった「Ustream」がライブ配信視聴時の冒頭に動画広告をするようにした仕組みを取り入れた時代と似ています。この当時、動画広告が表示されるようになったUstreamから視聴者が大きく離れていってしまったのです。それと同じことが、LINE LIVEでライブ配信を視聴しようとしたときに再生される動画広告によって起きる可能性を感じています。

 ただ、UstreamとLINE LIVEの動画広告の違いがひとつあります。

 それは、動画広告が再生されたことによって、LINE LIVEでは「広告ポイント」として配信者へ「LINEポイントとして還元される仕組みがある」ことです。Ustreamでは視聴者に動画広告を見せることによっての収益は配信者への還元がありませんでしたから、それと比べればまだ良いのかもしれませんが、LINE LIVEも動画広告を始めたことによって、「視聴する人の賑わい」を失ったUstreamの二の舞いになりかねません。

 なんらかの広告収入を得ることはライブ配信のプラットフォームが運営を維持するために必要な手段のひとつです。

 よって、動画広告を取り入れること自体に否定をするつもりはありませんが、ただ、視聴したいライブ配信を選んだ直後に動画広告が流れてくるのはとても辛いのです。その負担を視聴する人たちが受け入れてくれるのか、そうでないのかは今後の「視聴する人の賑わい」の変化に注視していく必要があるのではないかと感じています。

 もともと、LINEはコミュニケーションツールとして知名度を上げてきました。その延長線上にあるLINE LIVEはツイキャスやニコ生のような不特定多数に向けて発信するのではなく「どちらかというと特定少数に向けている」ライブ配信メディアのプラットフォームという立ち位置でもあるのかもしれません。

 ツイキャスやニコ生のような「配信する人の賑わい」ほど目指す必要はないのかもしれませんが、ある程度の賑わいがないと、LINE LIVEは「視聴する人の賑わい」も「配信する人の賑わい」も少しずつ失ってしまいます。

 「年齢層は19歳までの配信者の割合が69.3%と若年層に支持」という圧倒的な強みをもつLINE LIVE。これと基に、「視聴する人の賑わい」だけでなく、さらなる「配信する人の賑わい」が広がっていくことに期待をしたいのです。

ライブメディアクリエイター
ノダタケオ(Twitter:@noda

 ネット番組の企画制作・配信、ライブ配信メディアとソーシャルメディア関連の執筆などその活動は多岐にわたる。イベント等のマルチカメラ収録・配信や、自治体・企業におけるソーシャルメディアを活用した情報発信サポート業務などもこなす。タイ王国とカフェ好き。

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