スマホメーカー栄枯盛衰~山根博士の携帯大辞典

中国のスマホ事情 セルフィー女性向け路線が主流か Doovを追う

文●山根康宏

2018年02月04日 13時00分

 メインカメラ800万画素、フロントカメラは500万画素、そしてフロントカメラ側にいわゆる美顔モードを備えたのです。Doovは数機種前から美顔モードを備えてはいましたが、このiSuper S1からは新たなブランドをつけ、「美顔セルフィースマホ」として大きなアピールをしたのです。

女性のためのセルフィースマホとして生まれた「iSuper S1」

 iSuperは美顔のみならず、4つの「Super」機能を備えました。1つ目が美顔の「Super B」。2つ目の「Super V」は、指先をVの字にしてカメラに向けるとシャッターが切れるジェスチャー撮影機能。セルフィーに便利ですね。そして3つ目が「Super F」で、集合写真時に各自の瞳を認識して全員が目を開けている時にシャッターが切れる機能。最後は「Super N」で、夜間撮影にも綺麗な明るいメインカメラの搭載。この4つを備えるモデルに「iSuper」のブランド名が付けられるということなのです。

 本体のカラーはホワイト、ピンク味のかかったフライングレッド、パステル色をまぜたスタイルブルーの3色展開と、見た目もかわいらしさと上品さを揃えた製品でした。

 このiSuper S1は中国の女性たちの間で「セルフィーが綺麗」と評判になり、Doovは立て続けにモデルチェンジします。2013年には「iSuper 2」「iSuper 2X」「iSuper 2L」と後継機を出し続けます。iSuper S2はメインカメラ、フロントカメラどちらもが800万画素の高画質となりました。よく使うカメラの主従がメインからフロントに切り替わったと言えるわけです。

 その後2014年にはLTEに対応した「iSuper S3」を投入、さらにはスペックをより高めた「L1」、低価格の「T20」と、シリーズ展開を広げていきます。おもえばこのころ、2013年から2014年がDoovが一番中国でも元気のある時代だったかもしれません。

前後高画質カメラは他社よりも先の展開だった「iSuper S3」

ギミック戦略は失敗、改めてセルフィーで復活をかける

 2014年末にDoovは思い切ったギミックを搭載した製品を発表します。メインカメラを引き上げるとそのまま回転してフロントカメラとして利用できる「V1」です。Doovの製品はメインカメラを1300万画素まで引き上げていたものの、フロントカメラは800万画素止まり。フロント側の画質を高めようにも、当時のカメラモジュールは大型で前面に収まりません。

 OPPOはカメラそのものを前後に回転させるギミックの「N1」を2013年秋に投入していますが、Doovはカメラを手動で引き上げるという機構を作り上げたのです。これによりV1のカメラ画質はメイン側でもフロント側でも1300万画素となり、より美しいセルフィーを撮ることが可能になりました。

 しかしV1のギミックは男性には受けそうなものの、女性にとっては気軽に使えるものではなかったようです。フロントカメラを廃止したことで上にも広がったベゼルレスの大胆なデザインを採用しましたが、従来のDoovの製品とは異なるデザインもあり売れ行きは思わしくないものでした。

カメラを引き出すギミックが魅力の「V1」も、女子受けはしなかった

 このV1以降、iSuperブランドは廃止され「L」「S」「A」とアルファベット一文字のシリーズを展開していきます。しかし各モデルの差別化がわかりにくく、新製品乱発で一時的に話題を取りにいくような状況になってしまいました。そしてこのころからOPPOがカメラ性能をアピールした製品を出してきます。元々若者に強いブランドのOPPOが、少数精鋭でコストパフォーマンスも高くデザイン性にも優れた製品を出してくると、Doovの多品種展開では太刀打ちできなくなっていきました。

 初代モデルはギミック端末として登場したVシリーズも、その後の「V3」「V6」などは1000元を切る格安端末のラインになってしまいました。一方Aシリーズはデュアルカメラを搭載するなどカメラフォンとしての再生を図りましたが、混在するラインナップの中では消費者にアピールする力が不足してしまいました。

 2017年にはフロント1300万画素+200万画素のデュアルカメラ端末「L525」を投入。猫ミミ型のケースをはめると、そのミミの部分がLEDライトになるという楽しい製品です。久しぶりにDoovらしい、女性を強く意識した製品だと言えます。またフロント1600万画素カメラの「L520」も投入するなど、改めてフロントカメラの性能をアピールします。

猫ミミライトで女性へのアピールする「L525」

 とはいえ美顔モードも含めたフロントカメラ性能では、OPPOや同じくセルフィー専業のMeituなどがより高い性能を持っており、Doovは後を追いかける立場になっています。最新モデル「L925」は18:9ディスプレーに金属ボディーを採用。カメラはL525相当でこちらもセルフィーを推しています。女性が求めるスマートフォンは何か、を基本に戻って考えれば、Doovの今のセルフィー強化戦略は正しい選択と言えるでしょう。そして中国以外に市場展開をして販売数を伸ばすことも、Doovには求められているはずです。

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