「ライブ配信メディア完全解剖 〜過去と今、そして未来へ〜」

ライブ配信アプリの人気はダウンロード数などで計ってはいけない

文●ノダタケオ(Twitter:@noda

2018年02月10日 17時00分

 では、一番の見極め方はどのようなものでしょうか。

 一つ目は“配信する人の賑わい”、つまり、そのプラットフォーム内における「現在配信している(その瞬間の)配信数の数」です。

 そして、二つ目はライブ配信プラットフォーム全体において、どの配信(コンテンツ)が最も人気なのかを見極めるには「同時視聴者数」の推移、それは“視聴する人の賑わい”を表します。

「人気」と言われている今だからこそ「数のからくり」に注意

 ただ、残念ながら、この「現在配信している配信数の数」と「同時視聴者数」はすべてのサービスにおいて共通して表示されるものではなく、サービスによって表示されるところもあれば、されないところもあるのが現状です。

 これら「現在配信している配信数の数」と「同時視聴者数」がどのサイトにも共通して表示されない以上、一般的には公表されるアプリのダウンロード数や、アクティブユーザーで比較をするしかないのですが、アプリのダウンロード数やアクティブユーザーは単純に「サイトへの出入りをする人たちの指数」でしかありません。

 その他にも、よく使われる指数として、「ライブ配信の総配信時間/総視聴時間」や「いいね!の総数」が用いられることがあります。これらは結果的に、サイト全体の「総数」という合算値はとても大きな数値となりがちなので、ものすごい賑わいがあるかのように見えてしまいます。これらの数字を使うのであれば、延べの(配信/視聴)ユーザー数で割り、1ユーザーあたりの配信時間や視聴時間、いいねの平均数ぐらいのレベルにならないとなかなかわかりにくいように感じます。

 少し前の話になりますが、「人気のテレビ番組が複数のプラットフォームを活用してライブ配信をした結果、プラットフォームによって視聴数の差が大きくつき、プラットフォーム毎の明暗が分かれた」ということで話題になりました。

 このことについては第6回記事でも紹介をしたように、この時の比較に用いられた数値は「視聴数」ですが、この視聴数でさえもプラットフォームによってカウントされる仕組みはさまざまですし、長時間配信されたコンテンツであれば、累計の値である「視聴数」は大きくなりがちで人気であるように見えてしまいます。

 やはり、ライブ配信サービスの人気度を見ていく上で「現在配信している配信数の数」「同時視聴者数」の推移を見ることしか、一番公平な形で比較することができないのだと思います。

 いま、ライブ配信が人気だと言われる時代ですが、数のからくりに注意しないと私たちは数に騙されてしまいがちです。これは、ライブ配信のサービスだけに限らず、世界中にある数多くのさまざまな種類のサービスの人気度を知る上でも同じようなことが言えるのかもしれません。

人気のリアルタイムの「参加型クイズゲーム」の狙い

 最近、いくつかのプラットフォームで人気なのは、公式の番組コンテンツとして展開するリアルタイムの「参加型クイズゲーム」。

 この「参加型クイズゲーム」は一日1~2回ほど決められた配信開始時間が設定され、その時間になるとユーザーが集まります。一回あたりのクイズの問題数はおおむね10問ちょっとで、ユーザーが複数の選択肢から答えを選び、出題されたクイズに全問正解すると、賞金を山分けできるというもの。答えを間違えてしまうと、残念ながらその先のクイズに答えられなくなってしまうのですが、条件をクリアすると最終問題前であれば「敗者復活」もできる仕組みもあります。

 クイズは時事問題などさまざまなジャンルから出題され、誰もが参加しやすいよう、工夫がなされています。そういった意味で「ユーザーから人気」でもあるのですが、いくつかのプラットフォームで人気、と表現したのは、「プラットフォーム自身が好んでこの参加型クイズゲーム企画を取り入れているほど人気」という意味も含んでいます。

 このリアルタイム参加型クイズゲームは2017年末に中華圏のライブ配信プラットフォームで爆発的に人気となり、結果、その仕組みが日本のライブ配信プラットフォームにも即座にそのまま取り入れられるようになったとされています。

 そして、プラットフォームがこぞって取り入れる理由は、おそらく先に挙げた「アクティブユーザーの向上」が狙いなのでしょう。おそらく、将来的にはこのリアルタイム参加型クイズゲームよって上がったアクティブユーザー数が公表されていくことになるはずです。

 そういった大人の事情的な狙いがあるのはわかりつつも、実際、クイズゲームに参加してみるとやはりこのコンテンツが人気であることはよくわかります。やはり、誰もが参加しやすい工夫はなされていますし、間違えたことによってその場からすぐ離脱されやすい特性をカバーする「敗者復活」の仕組みはとてもよく考えられたものです。

 こうしたお遊び的な要素が増えてくることも、新しい人たちをライブ配信へ引き込むためのきっかけになっていくのかもしれません。

「モノ」になるかをしっかりと見極める必要性

 アプリのダウンロード数とアクティブユーザーは、テレビの「視聴率」に似ています。テレビの「視聴率」はそれぞれの番組の人気度を計る指標として用いられることも多いのですが、その信頼性は揺らいでいるのも事実です。

 アプリのダウンロード数やアクティブユーザーも似たようなもので、サイトの人気度を計る指標として用いられることが多いのですが、これだけではライブ配信のプラットフォームそのものやプラットフォーム毎のコンテンツの人気度を表すのはとても難しいと思います。これらだけをもって、プラットフォームの人気度を単純に比較して優劣を決めないようにしなければなりません。

 とはいえ、「現在配信している配信数の数」「同時視聴者数」は完全にそのプラットフォームの人気度を可視化されてしまいます。だからこそ、プラットフォームによってはその数を公にすることは好みませんし、好まないのも仕方ないことです。

 ただ、私たちはその数が公の形で伺い知ることができずとも、なんとなく「視聴する人の賑わい」「配信する人の賑わい」がどのぐらいあるのかは推測することはできます。

 これまでと比べ、いまは圧倒的に「ライブ配信」という言葉そのものを知る人は多くなりました。そして、メディアで取り上げられるようになったり、さまざまなところで広告も見かけたりするようになりました。ライブ配信はいま「人気」であり、「これからもっと上がってくる」ものなのかもしれません。

 いま「人気」と言われているからこそ、そして、「これからもっと上がってくる」と言われているいまだからこそ、私たち個人が自由にリアルタイムに映像や音声を伝送できる「ライブ配信」が本当に「モノ」となっていくのかは、しっかりと見極めていかないといけないと思うのです。

ライブメディアクリエイター
ノダタケオ(Twitter:@noda

 ネット番組の企画制作・配信、ライブ配信メディアとソーシャルメディア関連の執筆などその活動は多岐にわたる。イベント等のマルチカメラ収録・配信や、自治体・企業におけるソーシャルメディアを活用した情報発信サポート業務などもこなす。タイ王国とカフェ好き。

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