スマホメーカー栄枯盛衰~山根博士の携帯大辞典

国内スマホ携帯電話市場から姿を消した東芝 再参入はあるのか?

文●山根康宏

2018年02月18日 17時00分

 X01Tは海外では「G900」として発売されたモデルで、当時のソフトバンクは海外メーカーの製品も取り入れるなど「脱・ガラケー」を目指しスマートフォン「X」シリーズを多数展開していました。しかし翌年2008年7月にiPhone 3Gの取り扱いを開始すると、スマートフォンの販売はiPhoneが中心となり、Xシリーズは個人ユーザーより法人向けへの展開が中心となっていきます。

東芝初のスマートフォンはX01T

 2009年からはスマートフォンを「dynapocket」ブランドで展開開始。ノートPCの「dynabook」のポケット版、という意味から付けられた名称です。6月にドコモ向けの「T01A」とソフトバンク向けの「X02T」の2モデルを発売しましたが、ベースは同じ製品でした。OSはWindows Mobile 6.1 Professional、4.1型と大型のディスプレーを搭載していました。なおソフトバンク向けの製品はこれが最後となります。

 この年は特徴ある製品も投入しています。ウィルコム向けとなる「WS026T(WILLCOM NS)」は通話機能をもたないW-SIM対応のPHS機で、11mmと薄い製品でした。付属のアタッチメントを取り付けると6穴システム手帳に収納することができ、アナログの手帳をデジタル化できる製品でもあったのです。Windows CE 5.0を搭載し、その上に統合アプリ「jiglets」が動作しました。

システム手帳に挟むという斬新なアイディアのWS026T

 2010年にはKDDI向けにも製品展開を開始、6月に「dynapocket IS02」を発売します。KDDIとしては最初のスマートフォンとなり、ドコモ向けには同じベースの「dynapocket T-01B」も発売となりました。この製品も海外向けの「K01」の日本向けモデルで、東芝のスマートフォンは日本と海外で共通モデルを展開していたのです。

 このように東芝のスマートフォンは、日本独自のハードウェア(ワンセグなど)を搭載しないことでグローバル同一モデル展開をするという理想的な開発をしていましたが、そのことは逆に日本ではコンシューマー層からやや敬遠される存在になってしまいました。また携帯電話事業も、iPhoneブームに乗るスマートフォンの普及が広がるにつれ苦しい展開を強いられていくことになります。

富士通と合併するも、REGZA Phoneは短命に終わる

 2010年10月1日には富士通と携帯電話事業を合併し、富士通東芝モバイルコミュニケーションズ株式会社が発足します。しかし翌2011年には富士通が同社を完全支配下に置き、富士通モバイルコミュニケーションズとなります。東芝ブランドの製品は引き続き「T」の型番で発売されますが、富士通ブランドの製品と共通モデルも登場するなど、東芝の独自性は薄くなっていきます。

 2010年10月発売のドコモ向け「REGZA Phone T-01C」は東芝として初のAndroid OSを搭載。日本メーカーのスマートフォンとして初の防水対応機でもありました。CPUはクアルコムのSnapdragon S1、4型ディスプレーを搭載。おサイフケータイにも対応し、日本の消費者が不自由なく使える製品でした。なお東芝製品ながらもドコモからは製品管理上、富士通製品として扱われました。

Android OS搭載でREGZA Phoneとブランドの変わったT-01C

 ドコモにはその後、2011年11月に「T-01D」、2012年7月に「T-02D」が投入されるものの、どちらも開発は富士通であり、富士通製のREGZA Phoneでした。そしてこの2機種でドコモ向けスマートフォンは終了となります。

 KDDI向けには「REGZA Phone IS04」を2011年2月に発売。前年10月のドコモ向けT-01Cと同系機でした。また同年秋モデルとして発売された「REGZA Phone IS11T」は横スライド式のQWERTYキーボードを搭載、東芝のスマートフォンを振り返ると日本メーカーにしてはめずらしくキーボード搭載機が目立ちます。

 2011年8月に発売された「Windows Phone IS12T」は日本のキャリアとして初となる、Windows Phone 7.5を採用したモデルでした。本体はオーソドックスなブラックに加え、カラフルなマゼンダとシトラスの3色展開。これはWindows Phoneを海外展開していたノキアのカラー展開を意識したものだったかもしれません。

日本初のWindows PhoneとなったIS12T

 IS12TはディスプレーにREGZAエンジンを搭載していなかったことから「REGZA」の名前は付けられていません。スマートフォンブランドとして同名をつけて展開していたにもかかわらず名前をはずしたのは、Windows Phoneの本格的な普及拡大を考えていたからでしょう。しかしWindows Phoneはアプリの少なさや独自の操作性が敬遠され、またブラウザ周りの出来が今ひとつということもあり普及せずに市場から消え去っていきました。

 日本でのWindows Phoneはその後4年間発売されず、この間に他のメーカーからでもWindows Phoneが出ていれば状況も変わったかもしれません。しかし結果としてWindows Phoneそのものが事実上消滅してしまった今(2018年)、後継機が出ていても結果は変わらなかったのでしょう。

 Windows Mobileから始まり、QWERTYキーボード機を多く輩出し、Windows Phoneにも挑戦していった東芝のスマートフォン。同社はいま、ノートPC市場で奮闘していますが、スマートフォン市場への再参入はあるのでしょうか?Windows OSを搭載した小型端末など、東芝らしさを感じさせる製品をぜひいつか開発してほしいものです。

mobileASCII.jp TOPページへ

mobile ASCII

Access Rankingアクセスランキング