スマホメーカー栄枯盛衰~山根博士の携帯大辞典

東芝の海外スマホ事業撤退は「Windows Mobile OS搭載」にこだわり続けたからか

文●山根康宏

2018年02月25日 12時00分

 G910/G920は閉じたときにも背面で電話の着信操作ができるボタンを備え、時計や着信相手を表示する小型ディスプレーも搭載。ノキアのCommunicatorシリーズライクな使い勝手も提供しました。本体のデザインもスタイリッシュであり、日本に投入されなかったのは残念でした。

 続けて登場した「Portege G810」はタッチパネルだけのモデル。ディスプレーは3型240x320ドット。東芝初のキーボード無しスマートフォンとなりましたが、これは2007年に登場したiPhoneを意識したのかもしれません。これで東芝は「縦スライド」「横スライド」「横開き」「縦キーボード」「タッチパネル」と5つの形状バリエーションまで製品ポートフォリオを広げていきます。あらゆるユーザーをカバーできる反面、どの形状が消費者に最も受けるのか、開発側も悩んでいたのかもしれません。

Portege G810は初のキーボードレス端末となった

Windows Mobileと共に海外事業も終焉へ

 2009年に投入した「TG01」は、日本でもドコモ、ソフトバンクから同系機が発売されました。このモデルからPortegeブランドははずされます。4.1型の大型ディスプレーを搭載したタッチパネル端末であり、iPhoneや他社のAndroid機に対抗できるWindows Mobile機ということから、モデル名も新しいものにしたのでしょう。

 2010年にはTG01にフロントカメラを搭載するなどスペックを強化した「TG02」を投入。またTG02にスライド式キーボードを搭載した「K01」も発売となります。このK01は日本でKDDIから「dynapocket IS02」として登場しています。TG01でフルタッチ端末に統一したものの、Windows MobileユーザーからはQWERTYキーボード復活の声が高かったのかもしれません。

大画面モデルを改良したTG02

 このころリークされたロードマップでは、さらにLシリーズと言う製品も予定されていたようです。しかし2つの製品が「TG」「L」と型番に統一性が無く、生まれ変わった東芝のスマートフォンを消費者にどこまでアピールできたかは疑問です。TGの「T」は東芝の頭文字でしょうが、ならばKシリーズも「TK」とすべきだったかも、と思えてしまうのです。

 2010年に入るとWindows MobileではAndroidには勝てないと判断したのか、スマートフォンの投入は終了してしまいました。そして初のAndroid OSを搭載したタブレット「Thrive」を発売しますが、ディスプレーサイズが10.1型であることを考えると、もはやモバイル端末とは言えない製品でした。

Android端末を出すもののスマートフォンではなくタブレットだった

 2011年には日本でWindows Phone「IS12T」を投入し、マイクロソフトの新しいOSに日本メーカーとしていち早く対応します。しかし当初からキャリア売りを考えた製品であり、海外で販売されることはありませんでした。東芝のWindows Mobileスマートフォンは海外と日本で同じモデルを投入し、グローバルで展開していましたが、せっかくのAndroid搭載機ですらもはや海外市場に出ていくだけの体力が東芝には残っていなかったのでしょう。

 その後富士通に携帯電話事業を売却し、市場から撤退したのは本連載の前回で書いた通り。スマートフォン投入初期は意欲的な製品を次々と出したものの、Windows Mobile OSの採用を続けたことが残念な結果を招いてしまったのかもしれません。海外でも東芝のノートPCはまだ強いブランド力を持っていますから、日本では見られない海外向けのスマートフォンをぜひまた出してほしいものです。

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