スマホメーカー栄枯盛衰~山根博士の携帯大辞典

世界中にスマホを普及させた立役者 ドイツ「O2」の知られざる歴史

文●山根康宏

2018年03月04日 12時00分

 2003年後半にはアンテナレスとなった「XDA II」(HTC「Himalaya」)が登場。メモリが64MB→128MBに、ディスプレーの発色が4096色から65000色となり、VGA画質ながらもカメラを搭載。実用性が高まりました。この年にはストレートタイプで10キーを搭載した「O2 Xphone」も発売しています。

 2004年にはXDAを3モデル投入。「XDA IIs」は縦にスライドするとQWERTYキーボードが現れる、O2初のフルキーボード端末となりました。「XDA IIi」はXDA IIのカメラを1300万画素とし、Wi-Fiも初搭載。そしてXDA IIのディスプレーを2.8型とし、女性でも片手で持てる小型モデルとして「XDA mini」が発売されました。キーボード、カメラ、小型と3つのバリエーションを増やしたことで、XDAシリーズは販売数を伸ばしていきます。

 2005年にはXDAシリーズ人気を決定づける、「XDA Exec」が登場します。HTCの開発オードはUniversalで、このモデルはVodafoneなど他のキャリアも製品を導入しました。3.6型640x480ドットディスプレー採用、3Gに対応、2つのヒンジの回転でフルタッチスタイルにもキーボードを横向きにした小型ノートPCスタイルにもどちらにもなる優れたギミックを搭載。ノートPC代わりにも十分使える製品でした。

フルキーボードに回転ヒンジを備えたXDA Exec

 他にはXDA miniに横スライド式QWERTYキーボードを備えた「XDA mini S」や、ストレートの10キータイプながらタッチパネル対応でフルWindows Mobileの動く「XDA Phone」など、この年も積極的に新製品を投入していきました。

多品種展開で攻めるも、ライバル登場で市場から撤退

 2006年は一気に7モデルを投入。3G対応の2機種目となる横スライド式QWERTYキーボード内蔵の「XDA Trion」や、2.4型ディスプレーでコンパクトサイズながらもスライド式の10キーを備えた「XDA Stealth」、「XDA Neo」「XDA Orbit」「XDA Zinc」「XDA Atom Exec」と製品を増やしていきます。これはSymbian OSで勢いづくノキアに対抗し、ビジネス向けからコンシューマー向けまでラインナップを拡充する狙いがあったのでしょう。

 さらにはライバルはブラックベリーも視野に入れます。縦型QWERTYキーボード搭載の「O2 Cosmo」も投入。思えばiPhoneの登場する前年のこの年が、XDAシリーズが最も輝いていた時代だったと言えるでしょう。ノキア、ブラックベリー、マイクロソフトOS陣営がスマートフォンの覇権争いをしており、O2以外からも多数のWindows Mobileスマートフォンが登場していました。

縦型QWERTYキーボード搭載でブラックベリーを目指したO2 Cosmo

 2007年には「XDA Atom Life」「XDA Flame」「XDA Stellar」「XDA Nova」「XDA Comet」「XDA Orbit II」「XDA Star」「XDA Argon」「XDA Terra」と製品の数を増やしますが、国ごとに投入されるモデルは異なっていました。Flameはデュアルプロセッサを搭載、Atom LifeはHSDPA対応で高速通信可能など、技術的に優れた製品も出てきたのですが、iPhoneそして後から登場するAndroidにスマートフォン市場のポジションを奪われていったのです。

 2008年にはASUS P565ベースの「XDA Zest」、HTC Touch Proベースの「XDA Serra」が11月に発表され、この2機種でXDAシリーズは終焉を迎えます。このころは元々ODM先であったHTCがすでに毎月のようにWindows Mobileスマートフォンを市場に投入しており、O2ブランドで類似の製品を出すメリットも無くなっていました。

最後のO2スマートフォン、XDA Serra。HTC自らが同系機を出していた

 通信キャリアがハードウェアビジネスに乗り出し、回線とは別に端末だけを販売するというビジネスは独創的なものでした。多国でキャリアビジネスを展開するO2のブランド力を世界中に広げる効果もありました。しかし参入初期とは異なり、ライバルメーカーが増えた状況ではビジネス継続は難しかったのでしょう。とはいえO2が世界のスマートフォンの普及拡大に果たした役割は大きかったのです。

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