スマホメーカー栄枯盛衰~山根博士の携帯大辞典

高いスマホでも選ばれる ポルシェデザインによる見た目と機能性

文●山根康宏

2018年04月08日 13時00分

 とはいえノキアからスピンアウトしたVERTU(ヴァーチュ)が一定の成功を収めていたように、高級モデル、デザインモデルを求めるユーザーは確実に存在しました。またファッション製品はデザインや質感などを重視すれば売れたでしょうが、IT製品はそれに加え最新の機能を搭載しなければユーザーは振り向いてくれません。フィーチャーフォンは時代の動きを読み違えた製品だったために注目度は低かったものの、製品そのものの仕上がりは最高の出来上がりだったのです。

ポルシェデザイン初のスマートフォン、P'9981

 そこでポルシェデザインは2011年に改めて携帯端末をリリース、それが「BlackBerry Porsche Design P'9981」です。P'9981はスマートフォンとなり、ブラックベリーとして登場しました。基本的なスペックは「BlackBerry Bold 9900」に準じます。2011年はまだブラックベリーOSは第三勢力としてOSのシェアも15%程度ある、メジャー製品でした。メッセージを多用するユーザーはまだまだブラックベリーを選んでいた時代です。

 ブラックベリーは片手でも握れてキーボードも操作できる、エルゴノミクスデザインを採用しています。一方P'9981はところどころスクエア・直線のデザインでまとめられており、オリジナルのブラックベリーのイメージからは大きく離れています。本体やキーボードはメタル仕上げでポルシェデザインらしさも十二分に表現された製品です。

 ブラックベリーとしては新たなユーザー層獲得と、ブランドイメージの拡大のためにポルシェデザインと手を組んだのでしょう。なによりもブラックベリーのターゲットユーザー層とポルシェデザインのユーザーは重なります。価格は2000ドル、20万円強ですがその価値を十分に堪能できる製品でした。映画でも小道具として登場し、007などでチラ見程度ですが効果的に採用されました。

 しかしその後、ブラックベリーそのものが急激に市場から存在感を失っていきます。打開策として2013年にフルタッチディスプレーの「BlackBerry Z10」をリリースしますが、それをベースにポルシェデザイン向けにも同年末に「BlackBerry Porsche Design P’9982」が登場しました。世の中はすでにフルタッチディスプレー一色の時代だけに、P’9982も時代に乗った製品だったといえます。OSは過去から大きく進化したBlackBerry 10を搭載します。

フルタッチディスプレーのP’9982

 翌2014年にはP’9981を置き換えるモデルとして「BlackBerry Porsche Design P’9983」が登場。QERTYキーボード搭載の最新モデルです。しかしもはやブラックベリーOSのシェアが激減しており、P’9981程の話題も人気も得ることはできませんでした。ブラックベリーの衰退とともに、ポルシェデザインのスマートフォンも市場からは消えていってしまったのです。

Android版はファーウェイから登場、ハイスペック端末に磨きがかかる

 2016年4月にファーウェイはライカと提携したスマートフォン「P9」を発表。中国で一番勢いのある同社が、老舗のカメラメーカーと協業したことに大きな驚きの声が聞かれました。同年9月には大画面モデル「Mate 9」を発表。その派生モデルとしてポルシェデザインとコラボした「Huawei Mate 9 Porsche Design」も登場します。つまりこの年、ファーウェイはライカとポルシェデザインという、グローバルブランドとの提携を相次いで成功させたのです。これはもはやファーウェイのスマートフォンが大手メーカー品と呼ぶにふさわしい、一級品の仲間入りを果たしたことを意味しました。

 Mate 9 Porsche Designはディスプレーに側面をカーブさせたエッジ・ディスプレーを採用しました。これは同時発表の「Mate 9 Pro」と同じですが、Mate 9 Porsche Designのボディーカラーはブラック。暗闇から水が流れ出るようなデザインはスポーツカーの躍動感を味わえるものです。本体ストレージ容量もMate 9 Proの128GBより多い256GB。カメラはもちろんライカを搭載し、ファーウェイ全モデルの中で最上位に位置する製品でもありました。価格はヨーロッパで1395ユーロ(当時のレートで約16万円)でした。

ファーウェイから登場したMate 9 Porsche Design

 ファーウェイは春に「P」、秋に「Mate」という2つの製品投入サイクルを2015年から始めています。このうちMateは秋のiPhone新製品をライバルとすることもあり、Pよりもスペックを高めた上位モデルとしてリリースしています。そのMateシリーズにポルシェデザインモデルを組み合わせる展開はなかなかうまいものと言えます。

 2017年10月には「Mate 10」をリリース。Mate 10は16:9、「Mate 10 Pro」は18:9と、異なるディスプレーアスペクト比のモデルを投入しました。そして同時に発表された「Huawei Mate 10 Porsche Design」はそのMate 10 Proをベースとします。前年モデルと同様に、ポルシェデザインモデルは256GBの大容量のストレージを搭載します。

 なお2017年はWindows 10搭載のノートPC「Porsche Design BOOK ONE」(製造はODMメーカー大手のクアンタ・コンピュータ)や、スマートウォッチの「PORSCHE DESIGN HUAWEI SMARTWATCH」も登場。ポルシェデザインのIT製品が急増した年でもありました。

 このようにファーウェイ製のスマートフォンを2年続けて出してきたポルシェデザインですが、次のモデルは市場の予想よりも早く、2018年3月に発表されました。それが「Huawei Mate RS Porsche Design」です。同時発表の「P20」「P20 Pro」がアスペクト比19:9のディスプレーを採用したのに対し、Mate RS Porsche Designは18:9と異なります。一方カメラはP20 Proと同じトリプルカメラ。ストレージは業界初の512GBを搭載するモンスター級のスペックを誇ります。さらにはファーウェイ初のディスプレー埋め込み型指紋認証センサーを搭載しました。他にも高速なワイヤレス充電にも対応します。

半年たたずに新製品として登場したMate RS Porsche Design

 過去のポルシェデザインのMateモデルはデザインとスペックの若干アップという位置づけでした。しかしMate RS Porsche Designはそれに加え最先端の技術を搭載しています。つまりデザイン、機能に加え、先進性を備えたモデルに生まれ変わったのです。秋のMateまで待てなかったのは、いち早くその最新技術を披露したかったからでしょう。

 ポルシェデザインのスマートフォンは、ただのブランド品ではありません。いつの時代もポルシェの機能美あふれるデザインを製品に融合させるとともに、最新体験を手にできる最上級の端末なのです。そしてその価格に納得できるユーザーだけが手にできる、ユーザーを選ぶ製品でもあります。スペックだけでは判断できない満足度を与えてくれるスマートフォンとして、これからのモデルにも大きく注目したいものです。

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