AndroidによるJava APIの利用はフェアユースが認められず
今回のOracle逆転勝訴を受け、Googleは次のステップを検討中としている。
覆ったこと自体に驚きの声もあるが、フェアユースとは何かを考えるとまったくの驚きとは言えない部分もある。今回、フェアユースではないという判断について、判事は以下の4項目を焦点にしている。
1. GoogleがJava APIを使用した目的と性質が純粋に商用目的である
2. OracleによるJavaでの作業の性質は創造的である
3. Googleは、Java言語ベースのプログラムで書くのに必要なコードより多い、1万1330行を複製した
4. GoogleがAndroidへのアクセスを無料で提供したことから、Oracleの顧客はJava SEのライセンスを取得することなく、Androidに移行した
中でも1番目と4番目が、”フェアユースではない”というOracleの主張を支持する判決につながっているようだ。
たとえば4番目では当時、BlackBerry、Danger(Rubin氏がAndroidの前に手がけたのち離脱)、Nokiaなどの企業が、Java SEのライセンスを取得していたという。
Amazonに至っては、KindleにおいてJava SEのライセンスを取得したものの、Androidリリース後のライセンスの再交渉時にAndroidが無料であるという点をディスカウントの材料に使ったとか。
Androidを無料で提供した効果もあってか、Androidのシェアは2010年には16.3%だったのが、現在85%程度。Googleの戦略は見事に成功した。
この訴訟が何を意味するのかは、ソフトウェア開発者にとってはさまざまな意見があるだろう。ただ、Androidの現在の繁栄の背後にこんな話があるということだけでも興味深く感じる。なお、GoogleはAndroidのほかに「Chrome OS」を持ち、ここ数年は「Fuchsia」という新しいOSの開発も進めている。
最後に。Oracleが求めている88億ドルの損害賠償額だが、これはSunの買収金額である74億ドルを軽く上回っている。積極的なM&A戦略で知られる同社だが、Sunの買収は技術・製品面では成功とは言われてこなかった。だが、今後の賠償額次第では、少なくとも財務面では成功となるかもしれない。
筆者紹介──末岡洋子
フリーランスライター。アットマーク・アイティの記者を経てフリーに。欧州のICT事情に明るく、モバイルのほかオープンソースやデジタル規制動向などもウォッチしている