スマホメーカー栄枯盛衰~山根博士の携帯大辞典

バッテリー容量1万6000mAhのスマホを作った電池メーカー「エナジャイザー」

文●山根康宏

2018年05月13日 17時00分

 スマートフォンも当然ながらハード使用を前提とした設計で「Energy 400」「Energy 500」の2モデルを投入。どちらも通信方式は3Gのみですが、それぞれIP68の防水対応、Energy 100同様のタフ仕様なボディーとしています。なおこれらのモデルはのちに「Hardcase」という製品名に区分されています。

エナジャイザー初のスマホ、Energy E400

 Energy 400はCPUがMT6572、メモリ512MB、ストレージ4GB、4型480x800ドットディスプレー、800万画素カメラ(フロント130万画素カメラ)と、当時としてもスペックはやや低いものでした。これは後発ということもあり、低スペックながらも低価格を実現し、一方ではタフ仕上げな本体デザインで売り込もうという考えがあったのでしょう。

 上位モデルのEnergy 500はそれぞれのスペックがMT6582、1GB、8GB、5型1280x720ドット、1300万画素(500万画素)と高まりますが、ミッドレンジの下位クラスという位置づけで、やはり価格重視の製品でした。

 エナジャイザーはすでに世界各国に幅広い流通網を持っており、家電店以外にもスーパーなどの電池売り場に販売場所を確保しています。乾電池を買いに来た客が、同じブランドのスマートフォンを見て買ってくれることも十分期待できるわけです。そしてそのような客をターゲットにするには、価格は低めに抑える必要があったのでしょう。

 全くの異業種からの参入ではなく、日用品として認知度を持ち販路も確保しているメーカーだったからこそ、参入初年度にスマートフォン2機種、フィーチャーフォン3機種と多くの製品を投入しました。また製品ラインナップを広げることで、どのあたりの製品が消費者に受け入れられるのかを確認することも考えたのでしょう。

 2016年は前年モデルの本格的な拡販に努め、新製品は投入されませんでした。そして翌2017年にはE400、E500を置き換えるように「Energy E400 LTE」「Energy E520 LTE」も投入。LTEへの対応をようやく本格化させます。

LTEに対応したEnergy E520 LTE

低価格機を拡充、上位モデルはクアッドカメラ&1万6000mAhバッテリー搭載

 2017年には新たに「S」シリーズも投入されました。外見はごくごく一般的な仕上げで、スペックもベーシックながら価格をぐっと引き下げました。新興国などでのフィーチャーフォンからの乗り換え需要も考えた製品なわけです。「S550E」のスペックが5型854x480ドットディスプレー、CPUがMT6850、メモリ1GB、ストレージ8GB、500万画素カメラ(フロント200万画素カメラ)というあたりからも、Sシリーズのターゲットが見えてきます。

 秋にはスタイリッシュかつ高容量電池の「Power Max」、タフ仕上げの新シリーズ「Hardcase」をラインナップに追加。「Power Max P600s」はまだLG以外のメーカーが製品を発表していない18:9のアスペクト比を持つ5.9型ディスプレーを積極的に採用。そして「Hardcase H550S」はIP68の防水対応としています。

18:9のディスプレーを搭載したPower Max P600s

 また「Power Max P550s」は高容量電池モデルの名に恥じない5500mAhのバッテリーを搭載。すでに「Asus Zenfone 4 Max Pro」なども5000mAhのバッテリーを搭載しており、その対抗としても電池の大容量化は避けられなかったのでしょう。

 積極的な新製品投入の結果、2017年は気が付けば年間7機種ものスマートフォンを販売しました。またフィーチャーフォンも新製品を投入しています。ただしすべてのモデルが同時に発売されたのではなく、販売国ごとに投入されるモデルは異なりました。

5000mAhバッテリー搭載のPower Max P550s

 そして2018年には最強製品と呼べるスマートフォンを発表します。「Power Max P16K Pro」はエナジャイザーのスマートフォンの短い歴史の中で、群を抜いた最強スペックを誇る製品となりました。バルセロナで開催されたMWC2018でも、大手メーカーの新製品に負けじと存在感を放っていたのです。

 Power Max P16K ProのスペックはCPUはHelio P23、メモリ6GB、ストレージ128GB。これだけでも十分有り余るほどのパワーを持っています。ディスプレーは5.99型でアスペクト比は18:9。カメラはリアが1600万画素+1300万画素、フロントが1300万画素+500万画素。つまり4つのカメラを搭載します。業界でもまだ4カメラは少ない中、エナジャイザーは積極的にカメラの強化に動いているのです。

 さらに驚異的なのはバッテリー容量。製品名の16Kの通り、1万6000mAhもの大容量なのです。詳細なスペックはまだ発表されておらず、製品の発売時期も未定です。しかしこのスペックなら先進国でも十分通用できるでしょう。

 低価格機だけでも一定の販売数を確保できるでしょうが、価格だけの勝負では市場で生き残れないことはすでに歴史が証明しています。エナジャイザーの挑戦が市場でどのような反応を受けるのか、非常に興味深いところです。今後も同社らしい製品開発を続け、中堅どころのメーカーとして生き残り続けてほしいものです。

mobileASCII.jp TOPページへ