今年iPhone SEを用意しない理由とは
iPhone SEの全面液晶モデルは、スマートフォンとして魅力的な製品になる一方で、アップルがiPhone SEを維持している最大のメリットを失わせる可能性があるのです。
iPhone SEはユーザーにとってはコンパクトさ以上に、価格が重要です。米国では349ドル、日本では税抜3万9800円という低価格を実現しており、米国で再整備品などの中古品を探せば、150ドル程度で手に入ります。
そして、1〜2年型落ちのモデルではなく、新製品として廉価モデルが登場することは、iPhone SEを選ぶ顧客のインセンティブを駆り立てることができます。
安くなければiPhone SEではない。安くiPhone SEが作れなければ、アップルは新モデル登場へとコマを進めるべきではないのです。
iPhone SEの次世代モデルには、iPhone Xのような全画面液晶にTrueDepthカメラとガラスの背面を装備し、ワイヤレス充電にも対応すると見られています。いずれも、既存のiPhone SEからコストが上昇する要因になります。
これらのパーツの価格が下がり、iPhone SEの低価格を維持できるまでは、iPhone SEの新しいデザインを試せないはずです。
ましてや、まだiPhone Xの1機種にしかTrueDepthカメラが搭載されていない現状で、上位機種を押しのけて、iPhone SEがTrueDepthカメラを備えることは、あらゆる部分に整合性を追求するアップルらしからぬ行動とも考えられます。
前述の通り、小型で全画面のiPhoneへの期待は、筆者も大きいものです。しかしその夢のiPhoneの実現には、もう少し環境整備が必要だ、ということになるわけです。
筆者紹介――松村太郎
1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。またビジネス・ブレークスルー大学で教鞭を執る。米国カリフォルニア州バークレーに拠点を移し、モバイル・ソーシャルのテクノロジーとライフスタイルについて取材活動をする傍ら、キャスタリア株式会社で、「ソーシャルラーニング」のプラットフォーム開発を行なっている。
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