SIMカードがなくなる未来へ
iPhoneのSIMトレイを観察すると、防水機能を実現するため非常に小さいゴムが仕込まれていることが分かります。
頻繁に開閉される可能性があるSIMトレイの防水には気を使いますし、入れ替える側も、水が浸入する可能性が最も高い場所だと心配になってきます。
しかしアップルがeSIM内蔵のデュアルSIMに対応したことで、将来的にSIMカードスロットをiPhoneから排除することができるようになる、そんな可能性が開けてきます。もちろんアップルの都合だけで廃止できるヘッドフォンジャックやホームボタンとは違いますから、そうすぐに、というわけではないでしょうが。
アップルによると、eSIMへの書き込みは、
(1)キャリアから提供されるQRコードを読み取る
(2)キャリアアプリから書き込む
(3)手動で情報を入力する
という3種類の方法があるといいます。2つ目のアプリからの書き込みはすでにiPhoneがアクティベートされている前提ということになりますから、サブ回線をeSIMに書き込む場合の方法となりそうですね。
ただ、iPhoneのアクティベート前にモバイル回線を書き込めるなら、キャリアからSIMの発行を受ける必要がなくなるかもしれません。現在米国ではスーパーやコンビニでSIMカードが棚に陳列されて販売されていますが、これもそのうちQRコードに置き換えられるのかもしれません。
現在、携帯電話ショップで多くのiPhoneが販売されていますが、モバイル回線の契約とデバイス購入の優遇は長年セットとなってきました。モバイル回線とiPhoneがeSIMによって分離されるようなことがあれば、ビジネスモデルや携帯電話の買い方も変わる可能性があります。
ただ、現在のアップルにとってそれが得策かどうかは分かりません。なんらかの形でiPhoneの購入代金が割り引かれなければ、ユーザーはなかなかiPhoneの価格に手が出なくなっていくからです。
筆者紹介――松村太郎
1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。またビジネス・ブレークスルー大学で教鞭を執る。米国カリフォルニア州バークレーに拠点を移し、モバイル・ソーシャルのテクノロジーとライフスタイルについて取材活動をする傍ら、キャスタリア株式会社で、「ソーシャルラーニング」のプラットフォーム開発を行なっている。
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