スマホメーカー栄枯盛衰~山根博士の携帯大辞典

スマホに電子ペーパーを搭載した端末の未来 ONYX再登場に期待がかかる

文●山根康宏

2018年11月07日 12時00分

 しかしE43の販売は思わしくありませんでした。スマートフォンとしてのスペックが低く、ほかの用途には適していなかったからです。OSはAndroid 2.3で、当時はすでにAndroid 4.0が出回っている状況にもかかわらず古いバージョンのままでした。また通信回線は2Gのみ、3Gは非対応で高速通信は期待できません。さらにメモリ512MB、ストレージ512MBという設計。CPUはフリースケールのi.MX6でシングルコア1GHz。2012年に開発しすぐに出していればこのスペックでも通用したのでしょうが、2014年では遅すぎた感があります。

 なおAndroid OSを搭載したタブレットは2013年に「C65」を発売しています。8.7型1024x758ドットディスプレーを搭載しており、通信機能はWi-Fiのみ。E43はGSMとはいえ携帯電話モデムを搭載したことと、本体の小型化により開発に時間がかかってしまったのでしょう。

 2014年にはハイスペックなCPUに4.7型960x540ドットのE Inkを背面に搭載した「YotaPhone 2」が登場。電子ペーパースマートフォンとして注目を一気に集めます。その一方でONYXのE43は話題に上がることもなく、細々と販売が続けられました。ロシアなどでは「E45」として販売されたようです。

2in1、そして新たなスマホが登場か

 Wi-Fiのみのタブレットの開発と、常に通信を続ける小型デバイスのスマートフォン。ONYXにとって後者の開発は難しいものでした。E43以降は再びタブレットの開発に戻ってしまいます。他社からはiPhoneの裏面をE Inkでセカンドディスプレーにする製品や、裏面をE Inkにするスマートフォンの発売が相次ぎました。E Inkを使ったスマートフォンサイズのディスプレー需要が市場にあるからこそ、様々な製品が登場したのでしょう。

 とはいえいずれもメジャー製品にはなっていません。日本でもiPhone用のE Inkケースがソフトバンクの+Styleから発売になりましたが、話題にはなったものの実際に利用しているユーザーはあまり見かけません。アルカテルは自社スマートフォンのフリップカバーのフリップ部分にE Inkを搭載するなど意欲的なアクセサリを発表しましたものの、製品化はされなかったようです。

 とはいえタブレット市場の先行きを考えると、ONYXとしても「脱・タブレット」を目指す必要があります。2015年に台北で開催されたComputex 2015では同社のブースにスマートフォンを開発中の表示も見られました。YotaPhone同様、裏面がE Inkになった製品を開発していることをアピールしていたのです。

 2016年には世界初という13.3型の大型E Inkを搭載した「Max」を発売。2017年には2in1タイプでキーボードを脱着できる「Boox Writer」を発表し、スマートフォンではなく教育向けも狙ったキーボードタブレットの開発も進めていることがわかりました。その後は高感度なスタイラスペンを搭載したモデルを投入し、手書き入力も意識した製品を主力モデルにしています。

2in1のE Inkタブレットも開発。スマホの登場が望まれる

 一方、スマートフォン市場を見るとYota Devicesが中国企業に買収され、2画面スマートフォンの先行きは暗いようにも見えています。しかし中国家電大手のハイセンスは2017年から立て続けに2画面スマートフォンを発売。2018年10月に投入された「A6」は、5.61型で1440x720ドットという18:9のアスペクト比のE Inkを採用しています。2画面スマートフォンはまだ市場での可能性を秘めた製品といえるのかもしれません。

 ONYXも関係者の話によれば引き続き2画面スマートフォンを開発しているそうです。もし製品化するのであれば、同社の「BOOX Note」シリーズ同様に、スタイラスペンで操作できるE Inkを搭載した2画面スマートフォンを実現してほしいもの。たしかにメモを取るのであればカラーディスプレーである必要はなく、目にやさしい表示のE Inkなら長文手書き入力も苦にはなりません。

 2018年11月にはNubiaから両面カラーディスプレーの「Nubia X」も登場しました。表も裏も使えるスマートフォンの時代はこれからやってくるかもしれません。ONYXのスマートフォン登場に期待したいものです。

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