スマホメーカー栄枯盛衰~山根博士の携帯大辞典

自由に分解してパーツ交換できるスマホ「Fairphone」が生まれた理由

文●山根康宏

2018年11月19日 17時00分

 なおOSはAndroid 4.2.2で、その上にオープンソースを使い独自のラウンチャーを搭載するなど改変したUIの「Fairphone OS」が採用されています。

 このスペックは当時のミッドレンジ端末の代表ともいえる「Galaxy S4 mini」と類似しており価格も悪くありません。サプライヤーもすべて公開され「原材料やパーツにどの会社がかかわっているのか」も明白になっています。一方Fairphone 1はパーツの交換ができる設計にはなっておらず、まずは紛争鉱物を使わないことを大きな特徴としました。

 Fairphone 1はオンライン販売を中心に販路は限られていましたが、合計6万台が作られスタートアップの製品としてはまずまずの結果を残しています。

モジュール式で修理やアップグレードも容易な2世代目が登場

 2015年7月には2機種目となる「Fairphone 2」が発表されました。一般的なメーカーは1年おきに新製品をリリースしますが、Fairphoneは初代から2年後に後継機をリリースしたのです。製品を長い期間使ってもらうというコンセプトを守った格好になります。

 とはいえ初代モデルには複数の問題があり、Fairphone 2はそれを改善した製品として登場したのです。たとえば初代モデルのSoCはメディアテック製でしたが、同社はSoCのサポートを長い期間続けてはくれません。そこで2代目モデルはクアルコムに鞍替えし、Snapdragon 801を採用しました。ほかにも初代モデルはマイクロUSB端子が破損しやすい問題もありましたが、これも設計変更で修正されています。

モジュール式となったFairpholne 2

 そして初代モデルと大きく変わったのがモジュラー方式の本体設計です。Fairphone 2は本体のフレームからメインカメラやフロントカメラ、メイン基板モジュールが取り外し可能で、さらにアンテナやスピーカー、電源とボリュームボタンなども破損した場合は自分で交換できます。

 Project Araのようにブロック式にはなっておらず、本体のねじを開けて(ねじもパーツとして購入可能)それぞれの部品をピンセットなどで脱着する必要はあるものの、ほぼすべてのパーツがFairphoneのWEBページで別売されました。カメラは当初メイン800万画素+フロント200万画素でしたが、後からメイン1200万画素+フロント500万画素の交換モジュールが販売されています。この分解のしやすさから、iFixitはFairphone 2にスマートフォンとして初の10/10のスコアを与えたほどです。

 Fairphone 2のスペックは5型1920x1080ドットディスプレー、SoCにSnapdragon 801、メモリー2GB、ストレージ32GB、2420mAhバッテリー。カメラは前述したとおり。本体サイズは143x73x11mm、重量は168g。ベースOSバージョンはAndroid 5.1。2015年11月から出荷が開始され、価格は529ユーロでした。SoCは1年前とは言えハイエンド品を採用、モジュールでアップグレード可能ということでFairphone 2は大きな注目を集めます。

 その後Fairphone 2のOSはAndroid7.1.2までバージョンアップされ、いま現在でも2018年11月にFairphone OSも最新の18.09.2が提供されています。またほかのOSを移植する動きも見えています。Ubuntu OSやSailfish OSが開発者の手で移植され、海外のイベントなどで動作する実機が披露されています。販売から約2年経った2018年4月にフランスのキャリア、Orangeの店舗で引き続き販売されているなど、息の長い製品として細々ながらも販売が続いています。

ねじをはずして全パーツを分解・交換できる

 とはいえ、初代Fairphoneの登場時はスマートフォンの進化のペースも今よりゆるやかなものでした。しかし2015年も過ぎると1年前の製品が陳腐化してしまうほど、CPU、カメラ、ディスプレイ、バッテリーそして通信モデムの性能が上がっています。Fairphoneは「5年間使える」ことを考えられました。ですがさすがにその期間は長すぎる気がします。ちなみに2016年に登場した合体式モジュール採用のモトローラ「moto z」シリーズは、モジュールの互換性を3年間としています。3年でフルモデルチェンジする可能性があるということで、スマートフォンの寿命はそれくらいが限界でしょう。

 今のスマートフォンの流行を考えると、ディスプレーアスペクト比が18:9になった新しいFairphone 3がそろそろ出てきてもおかしくない時期です。また本体内部のモジュールもより容易に交換可能な、Project Araの目指したブロック式のような構造になって出てくることも期待したいもの。地球と人々に公平で優しいスマートフォンをこれからも作り続けてほしいものです。

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